「代物」という言葉は、昔から使われてきた表現ですが、意外と意味の把握は曖昧なままの人も多いのではないでしょうか? そこで、この記事では、「代物」という言葉の意味や使い方、法律用語としての一面まで、さまざまな視点から紐解いていきます。
「代物」とは?
まずは、「代物」の読み方と意味から確認していきましょう。

「代物」の読み方と意味
「代物」と書いて「しろもの」と読むのが一般的ですが、「だいぶつ」や「だいもつ」と読むこともあります。それぞれの読み方によって意味が異なります。辞書で確認しましょう。
しろ‐もの【代物】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
1 売買する品物。商品。
2 人や物を、価値を認めたり、あるいは卑しめたり皮肉ったりするなど、評価をまじえていう語。「めったにない―」「とんだ―をつかまされた」「あれで懲りないなんて、大した―だ」
3 《売り物になる意から》遊女。また、年ごろの美しい娘。
「ときに、ここにゃあ―はなしかの」〈滑・膝栗毛・二〉
4 売り買いしたときの代金。転じて、金銭。だいもつ。
「なに―のことか。面目ないが、懐中にはびた一銭おりない」〈黄・見徳一炊夢〉
だい‐ぶつ【代物】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
代わりの品物。代品。
だい‐もつ【代物】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
1 かわりの品物。
2 品物の代金。代価。転じて、金銭。
「道具の―はいただきましたが」〈滑・膝栗毛・七〉
「しろもの」と読む場合は、商品や売買の対象となる品物を指します。ただし日常的には、人物や物事に対して皮肉や驚きを込めて使われることもあります。「とんだ代物だ」「なかなかの代物ね」といった使い方がその例です。かつては、若い女性や遊女を意味することもあったようですよ。
「だいぶつ」は、何かの代わりに差し出す品物、つまり代品のことを指します。「だいもつ」は、品物の代金や金銭を意味しますよ。
読み方によって意味が変わるので、文脈に注意して理解しておくことが大切ですね。
「代物(しろもの)」の使い方を具体的な例文とともに紹介
「代物」という言葉は、日常会話で驚きや皮肉を含んだニュアンスを込めて使われることが多く、相手との距離感をうまく保つ表現としても便利です。ここでは、よく使われる2つの例を紹介します。

「なかなかの代物だ」
この言い回しは、想像していたよりも印象に残るものに出会ったときに使われます。肯定的な評価として使われることもありますが、皮肉や驚きを込めて使われる場面も少なくありません。褒めているのか、あきれているのか、聞き手によって受け取り方が変わるところも、この表現の面白さといえるかもしれませんね。
「厄介な代物だな」
こちらは、問題を起こしやすい人物や事柄に向けられることが多い言葉です。強い言い回しを避けつつも、不満や困惑を伝える手段として使われます。感情を露骨に出さずにすむため、やんわりとした批判として機能するでしょう。相手や場の空気に配慮した表現ともいえるかもしれません。
「代物弁済」とは?
「代物弁済(だいぶつべんさい)」とは、本来支払うべき金銭の代わりに、別のものを引き渡すことで債務を解消する方法のことです。民法第482条で定められており、債権者の同意が前提となります。
例えば、100万円の返済義務がある場合、その代わりに家や土地など、特定の不動産を提供することで返済に代えることができますよ。

代物弁済の予約とは
「代物弁済の予約」は、一定の条件が満たされた場合に代物弁済を行うという約束を事前に交わしておく形式です。
例えば、1,000万円を貸し付け、その返済が期日までに行われなかったときには、あらかじめ指定した家屋の所有権を譲渡する、といった契約がこれに当たります。
参考:『日本大百科全書』(小学館)
「代物(しろもの)」の言い換え表現は?
「代物」という言葉は、品物そのものを指すこともあれば、人や物を評価する表現でもあります。ここでは、状況に応じて使える言い換え表現をいくつか紹介しましょう。
商品
「代物」は、場面によって「商品」という言葉に言い換えられます。「商品」という言い方のほうが一般的でわかりやすいかもしれませんね。
難物(なんぶつ)
「扱いにくい人」や「一筋縄ではいかない物事」を指すときには、「難物」という表現に言い換えられるでしょう。
逸品(いっぴん)
褒め言葉として「代物」を使う場合は、「逸品」という言葉に置き換えられます。特別感や価値の高さも伝わるでしょう。「絶品」や「一品」と言い換えるのもいいですね。
最後に
「代物」という言葉には、使う人の感情や距離感がさりげなくにじみ出ます。表現に込められた空気感や間の取り方を意識することで、言葉に深みが生まれますね。何気ない一言が、聞く人の印象を変えることもあるかもしれませんよ。
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