「嬰児」という言葉を目にしたことはありますか? 一般的にはあまり使われない言葉かもしれませんが、古典文学や時にはニュースの中でも登場することがあります。この記事では、「嬰児」の意味や使われ方を見ていきましょう。
「嬰児」とは? その読み方と意味を解説
「嬰児」という言葉は、赤ちゃんを指す意味を持つ表現ですが、使われる場面によって意味合いが微妙に異なることもあります。まずは読み方や基本的な意味について確認してみましょう。

嬰児の読み方と意味
「嬰児」は「えいじ」と読みます。辞書での定義を見ていきましょう。
えい‐じ【×嬰児】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
生まれたばかりの赤ん坊。ちのみご。乳児。
「嬰児」とは、生まれたばかりの赤ちゃんを意味します。現在使われている言葉に言い換えると、「赤ちゃん」や「乳児」に該当するでしょう。
「嬰児」と書いて、「みどりご」とも読みます。「みどりご」の意味も辞書で確認しましょう。
みどり‐ご【緑▽児/嬰=児】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《古くは「みどりこ」》生まれたばかりの赤ん坊。また、3歳くらいまでの幼児。
「みどりご」と読む場合には、3歳くらいまでの幼児を指します。
「嬰児(えいじ)」と他の言葉の違い
「嬰児」は他の言葉と混同されやすいこともあります。特に「乳児」「胎児」「幼児」との違いを理解しておくことは重要です。
嬰児と乳児の違い
「嬰児」は生まれたばかりの赤ちゃんを指す言葉です。対して「乳児」は乳を飲んでいる生後1年ぐらいまでの子供を指すことが一般的です。
嬰児と胎児の違い
「胎児」は母体の中で発育中の子供を指す言葉です。対して「嬰児」は出産後の赤ちゃんを意味します。つまり、「胎児」はまだ生まれていない状態を示すのに対し、「嬰児」は誕生後の存在を表現する言葉です。
嬰児と幼児の違い
「幼児」は、児童福祉法において満1歳から小学校に就学するまでの子供を指す言葉です。「嬰児」はそれ以前の新生児を指すため、年齢の違いを区別する際に使い分けられます。成長の段階によって言葉が変わることを知っておきたいですね。

嬰児に関する事件や歴史的背景
「嬰児」という言葉は、ニュースや歴史的な出来事に関連して取り上げられることがあります。ここでは、具体的な事例と刑法上の扱いについて説明します。
嬰児殺(えいじさつ)とは?
嬰児殺とは、誕生直後に赤ん坊を殺害することで、通常は親または親と密接に関わる人によって行われることを指します。嬰児殺は、時代や文化を問わず存在しています。
人類学的に有名な例としては、エスキモーの女児殺しやインドのトダ人による女児殺しなどが知られています。どちらも社会の生態系や婚姻システムと密接に関連していると考えられていますよ。双生児に対する殺害は、通常は一人ずつ生まれるという前提を乱す存在として認識されることが原因とされることもあります。
文明社会においては、嬰児殺は親子心中や虐待、死体遺棄などの形で取り上げられ、犯罪として処罰の対象とされています。さらに、近代化によって未開社会でも嬰児殺が罪とみなされる傾向が強まっていますよ。
嬰児殺と刑法
法律上は「嬰児殺(えいじさつ)」と呼ばれ、分娩中または分娩直後の新生児を殺害することを指します。過去には、無抵抗の嬰児を殺す行為として重罪とされることもありましたが、現代ではむしろ軽減される傾向にあるようです。
その理由としては、出産時の母親の精神状態や、社会的名誉を守るための行為と見なされるなどが挙げられています。
日本の刑法では、嬰児殺と通常の殺人を区別せず、出生前なら堕胎罪(刑法212条以下)、出生後なら殺人罪(刑法199条)が適用されます。「出生」の定義には複数の説がありますが、日本では「一部露出説」が一般的です。
つまり、母体外に一部でも出ていれば殺人罪にあたるとされます。嬰児殺に対して同情すべき事情がある場合、裁判では情状を考慮して刑が決定されることもあります。
参考:『日本大百科全書』(小学館)
嬰児に関することわざ
「嬰児」という言葉は、ことわざにもなっています。ここでは2つ紹介しましょう。
嬰児の貝を以て巨海(きょかい)を測る
幼い子どもが貝殻を使って大海の水量を測ろうとする様子を指します。これは、あまりにも大きなことに挑む無謀さや、到底達成できないことを意味するたとえです。

嬰児の常に病むは飽(ほう)に傷むなり
赤ん坊が病気にかかりやすいのは、乳を飲み過ぎてしまうことが原因であるという意味です。転じて、主君の愛情が過剰であると家来が奢り、高慢になって問題を引き起こすことを表現しています。
嬰児の英語表現
「嬰児」にあたる英語表現としては、いくつかの表現が用いられます。意味を正しく伝えるために適切な言葉を選びましょう。
a baby
“baby”は最も一般的に使われる「赤ちゃん」の意味を持つ言葉です。特に日常会話で使われることが多く、広く認知されている表現です。
a newborn child
“a newborn child”は生まれたばかりの子供を指します。
最後に
「嬰児」という言葉は、日常ではあまり使われないかもしれませんが、文学や歴史、社会問題などさまざまな分野で登場する言葉です。意味を正しく理解することで、言葉の背景にある文化や歴史を知る手がかりにもなるでしょう。
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