「天鵞絨」という漢字を見かけたことはありますか？ 読み方や意味はすぐに思い浮かばないかもしれませんが、実は身近なものを指す言葉です。特にファッションやインテリアに関心がある人は、知っておくと役立つかもしれません。
この記事では、「天鵞絨」の読み方や意味、特徴について詳しく解説していきます。
「天鵞絨」とは？ 読み方と意味を確認
まずは、「天鵞絨」の基本的なことから整理していきましょう。
「天鵞絨」の読み方と意味
「天鵞絨」は、「てんがじゅう」、「ビロード」と読みます。辞書を引くと、以下のように説明されています。
ビロード【ポルトガルveludo】
引用：『デジタル大辞泉』（小学館）
パイル織物の一。綿・絹・毛などで織り、表面に毛羽（けば）や輪奈（わな）を出した、滑らかで光沢のある織物。輪奈天・金華山織・コール天・別珍などがある。ベルベット。
［補説］「天鵝絨」とも書く。
「天鵞絨」は光沢があり、手触りのよさと光沢が特徴の織物で、高級感のある生地として知られています。
「天鵞絨」の由来
ポルトガル語またはスペイン語の「ビロード」に「天鵞絨」という漢字が当てられたといわれています。「てんがじゅう」という読み方は、ビロードに当てた漢字を音読みしたものです。
「天鵞」の表記は「白鳥」を意味します。これは、白ビロードの光沢が白鳥の翼に似ていたからつけられたそうです。
参考：『日本国語大辞典』（小学館）
天鵞絨とベルベットの違いは？
ベルベット（velvet）は、天鵞絨の異称です。したがって、同じものを指します。日本では、ベルベットという場合、主に絹製のものを指すことが多いですよ。
参考：『デジタル大辞泉』（小学館）
日本における「天鵞絨」の歴史とは？
日本に「天鵞絨（ビロード）」が伝わったのは近世初期とされています。その後、どのように発展し、人々の暮らしの中でどのように位置づけられてきたのかを見ていきましょう。
天鵞絨の歴史
天鵞絨が日本に伝わったのは、16世紀の南蛮貿易によるものとされています。当時の大名や武将たちの間で珍重されました。
江戸時代に入ると、京都・西陣での製織が始まり、国内生産が可能になりました。これにより、男羽織の袖覆輪（そでふくりん）や袴の裾縁、女帯、調度品の覆いなど、さまざまな用途で使われるようになったそうです。
天鵞絨の色とは？
また、天鵞絨は織物としてだけでなく、色名としても使われるようになりました。江戸時代後期の資料には「藍天鵞絨」という染色技法が登場し、その後も「緑がかった黒色」の表現として使われることがあったとされています。
このように、天鵞絨は日本の織物文化と結びつきながら、時代ごとに形を変えて受け継がれてきたといえるでしょう。
「伊達の素足も無いから起こる有れば天鵞絨の足袋も履く」とは？
「伊達の素足も無いから起こる有れば天鵞絨の足袋も履く」という言葉は、粋を装う姿勢の裏にある現実を皮肉った表現といえます。「伊達の素足」とは、おしゃれのために素足でいることを指しますが、実際には「足袋を買う余裕がないから素足でいるだけ」という状況を示唆しています。
この表現は、見栄や虚勢を張ることへの皮肉として使われることが多いようです。粋に見せようとする態度が、実は経済的な事情から生じていることを揶揄しているともいえるでしょう。
「天鵞絨」が登場する文化や作品
「天鵞絨」という言葉は、アニメや音楽にも使われています。ここでは2つを紹介していきましょう。
アニメ『A3!』に登場する「天鵞絨町」
「天鵞絨町」は、アニメ『A3!』に登場する架空の地名です。この町には「ビロードウェイ」と呼ばれる通りがあり、多くの劇団が拠点を構え、劇団員たちの聖地となっていますよ。
「天鵞絨アラベスク」という表現
「天鵞絨アラベスク」は、初音ミクが歌う楽曲のタイトルです。作詞・作曲は畑亜貴さんが手掛け、SEGAのゲーム『初音ミク -Project DIVA-』シリーズに収録されています。
最後に
インテリアやファッションの中で「天鵞絨」を見かけたときに、その背景にある意味を知っていると、より深く楽しむことができるかもしれませんね。
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