四字熟語は、知的で洗練された印象を与える言葉の一つ。「鼓腹撃壌(こふくげきじょう)」もその一つですが、聞き慣れない人も多いかもしれません。そもそもどんな意味を持つのでしょうか?
そこで本記事では、「鼓腹撃壌」の意味や由来を紐解き、現代における活用法を紹介します。言葉の背景を知ることで、さらに洗練された表現力を身につけましょう。
「鼓腹撃壌」とは? 意味と由来を確認
「鼓腹撃壌」は、どのような場面で使われ、どのような背景のもと生まれたのかを知ることで、その本質により近づくことができます。

「鼓腹撃壌」の読み方と意味を確認
「鼓腹撃壌」は、「こふくげきじょう」と読みます。意味を辞書で確認しましょう。
こふく‐げきじょう〔‐ゲキジヤウ〕【鼓腹撃壌】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[名](スル)《中国の尭(ぎょう)の時代に、一老人が腹鼓(はらつづみ)を打ち、大地を踏み鳴らし、太平の世への満足の気持ちを歌ったという「十八史略」などにみえる故事から》世の中の太平を楽しむこと。
「鼓腹撃壌」とは、政治が行き届き、人々が太平の世を楽しむさまを指します。
「鼓腹撃壌」の由来
「鼓腹撃壌」は、中国の堯帝(ぎょうてい)の時代に由来する故事成語です。
この故事は、『帝王世紀』などの古典に記されています。それによると、堯の治世において、天下は安定し、人々は豊かで幸福に暮らしていました。ある日、一人の老人が腹鼓(はらつづみ)を打ち、足元の大地をたたきながら歌い、堯の徳をたたえたといいます。
「鼓腹」とは腹鼓を打つことの他に十分に食べられることを指します。「撃壌」は大地を踏んで拍子をとり、歌をうたうことのほかに太平の世を楽しむ様子を指しますよ。
こうしたことから、堯帝の時代がいかに太平の世であったかが伝わってきますね。

「鼓腹撃壌」をどう使う? 具体的な例文を紹介
「鼓腹撃壌」は、平和な社会や安定した職場環境など、さまざまな場面で使われる言葉です。以下に、「鼓腹撃壌」を活用した具体的な例文とその解説を紹介します。
政治が安定し、経済も発展したこの国では、多くの人々が鼓腹撃壌の生活を享受している。
国の政治が安定し、経済も順調に成長しているため、国民は安心して生活できている状況を表しています。「鼓腹撃壌」は、戦乱や混乱がない社会において、人々が平和で満ち足りた暮らしを送っていることを象徴する表現として適していますよ。
かつての村は豊かな自然に恵まれ、人々が日々の暮らしに満足している、まさに鼓腹撃壌の光景が広がっていた。
この文では、自然の恵みを受け、穏やかな生活を送る人々の様子を「鼓腹撃壌」に重ねています。都市化が進む前の豊かで平和な村の風景を描写する際に、この四字熟語を用いることで、長閑(のどか)で安定した暮らしぶりを強調していますね。
企業が従業員の働きやすい環境を整え、経営が順調に進んでいることで、職場全体がまるで鼓腹撃壌の雰囲気に包まれている。
「鼓腹撃壌」は、国家や社会全体だけでなく、職場などの小さなコミュニティにも応用できます。この例文では、企業が従業員の待遇や職場環境を整えた結果、社員が安心して働けるようになり、会社全体が安定し、満足度の高い状態になっていることを表していますね。平和で働きやすい職場を表現する際にも活用できる四字熟語です。

最後に
「鼓腹撃壌」は、古代の記録に残された表現ですが、その背景を知ることで、社会や組織の在り方について考える手がかりになるかもしれません。歴史の中でどのように語られ、どのように受け継がれてきたのかを振り返ることで、異なる視点からの理解が深まることもあります。
この言葉が示す安定した社会のあり方は、現代においてもさまざまな分野で考察されています。社会の仕組みや組織運営において、持続的な安定がどのように形成されるのかを見直す際に、この言葉の持つ意義を参考にすることもできるかもしれませんね。
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