この記事のサマリー
・「後ろ髪を引かれる」は、心残りがあってなかなか思い切れない気持ちを表す慣用句です。
・恋愛だけでなく、故郷や職場を離れる場面など、未練や名残惜しさが残る時に使えます。
・「未練」「心残り」「名残惜しい」は、近い気持ちを表す言い換え表現です。
恋愛ドラマや小説などで、「後ろ髪を引かれる」という表現を見聞きしたことはありませんか? 何となくニュアンスはわかるものの、具体的にどのような状態なのか説明できない人も多いかもしれません。
そこで本記事では、「後ろ髪を引かれる」の意味や使い方、類語などを解説します。
「後ろ髪を引かれる」とは?
そもそも、「後ろ髪」とは何なのでしょうか? まずは意味を確認していきましょう。
意味
そもそも、「後ろ髪」とは「後頭部の髪の毛」のことです。「後ろ髪を引かれる」は、「心残りがしてなかなか思い切れないこと」を表します。
恋愛の別れに限らず、故郷を離れるとき、慣れ親しんだ環境を去るとき、大切なものを手放すときなど、気がかりや未練が残って気持ちを断ち切れない場面で使います。
辞書では次のように説明されていますよ。
うしろ‐がみ【後ろ髪】
1 後頭部の髪の毛。
2 (「後ろ髪を引かれる」の形で)心残りがしてなかなか思い切れないこと。「―を引かれる思いで家を出た」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)

使い方を例文でチェック!
恋愛や文学作品で見聞きすることのある「後ろ髪を引かれる」ですが、実際には、別れ、転居、退職、異動など、未練や心残りを抱えたまま離れなければならない場面で幅広く使うことができます。
実際に使われるシーンを想像しながら見ていきましょう。
後ろ髪を引かれる思いで、その場を立ち去った。
この慣用句は、「後ろ髪を引かれる思いで」という形で使われることがよくあります。その場や相手に未練や心残りがあるものの、事情があって離れなければならない、そんな場面に適した表現です。
「後悔」そのものよりも、「まだ気持ちが残っていて思い切れない」というニュアンスが強い点も押さえておきたいところです。
彼女との交際を反対され別れることにしたが、まだ後ろ髪を引かれている。
「後ろ髪を引かれる」は、恋人との別れの場面でも使います。例えば、「家族から反対された」「仕事の都合で海外へ行くことになった」など、やむを得ない事情で別れを選ばざるを得ないときには、未練が残ることもあるでしょう。
本心ではまだ気持ちが残っていて、きっぱりと思い切れない様子が伝わる表現です。
青年は、後ろ髪を引かれる思いで故郷を後にした。
この表現は、故郷を離れる場面でもよくなじみます。家族や友人、慣れ親しんだ土地に心を残しながらも、新しい環境へ進まなければならないとき、「後ろ髪を引かれる思いで故郷を後にした」と言えば、未練や名残惜しさを自然に表すことができます。

類語や言い換え表現はある?
「後ろ髪を引かれる」は独特な表現なので、まったく同じ意味を持つ言葉は見つけるのが難しいでしょう。しかし、「後悔している」「未練がある」というニュアンスを持っている言葉はいくつかあります。さっそく見ていきましょう。
断腸の思い
「断腸の思い」は、はらわたがちぎれるほど悲しくつらい気持ちを表す言葉です。「後ろ髪を引かれる」が未練や心残りによって思い切れない気持ちを表すのに対し、こちらは悲しみや苦しさの強さに重きがあるといえます。
(例文)
・両足の怪我が原因で、インターハイへの欠場を断腸の思いで受け入れることにした。
・この度、父の代から続いてきた酒造りを断腸の思いで廃業することにしました。
出る船の纜(ともづな)を引く
「出る船の纜を引く」は、未練がましい振る舞いをたとえた表現です。「後ろ髪を引かれる」が自分の中に残る未練や心残りを表すのに対し、こちらは未練から相手を引き止めようとするような、外に表れた振る舞いに焦点があります。
(例文)
・別れた夫を追いかけるなんて、出る船の纜を引くようでみっともない。
・出る船の纜を引くという言葉があるが、なるだけ未練は残さない方がいいよ。

後悔先に立たず
「後悔先に立たず」は、してしまったことは後で悔やんでも取り返しがつかない、という教訓を表すことわざです。「後ろ髪を引かれる」が、まだ未練や心残りがあって思い切れない気持ちを表すのに対し、「後悔先に立たず」は行動のあとに生じる反省や悔いを述べる表現です。
(例文)
・結局母には最期まで迷惑をかけてばかりだった。後悔先に立たずだ。
・些細なことがきっかけで友達と大喧嘩してしまった。後悔先に立たずだな。
「後ろ髪を引かれる」により近い言い換えとしては、「未練がある」「心残りがある」「名残惜しい」などが挙げられます。特に「未練」は、執心が残って思い切れないことを表す語で、「後ろ髪を引かれる」と重なる部分が大きい表現です。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
英語表現は?
「後ろ髪を引かれる」は、日本語特有の慣用句なので、そのまま一語で対応する定型の英語表現はありません。文脈に応じて、「その場を離れがたい」「未練が残る」「思い切れない」といった意味を英語で言い換えるのが自然です。
例えば、よく使われる「後ろ髪を引かれる思いでその場を立ち去った」は、”I left the scene with painful reluctance.” や “It was hard to tear myself away from the scene.” のように表すことができます。
いずれも、未練やためらいを抱えながら、その場を離れるニュアンスを伝える言い方です。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)
「後ろ髪を引かれる」に関するFAQ
ここでは、「後ろ髪を引かれる」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「後ろ髪を引かれる」とはどういう意味ですか?
A. 心残りがあって、なかなか思い切れない気持ちを表します。
Q2. 「後ろ髪を引かれる」は恋愛以外にも使えますか?
A. はい、使えます。恋人との別れだけでなく、故郷を離れる時、退職や異動の時、慣れ親しんだ環境を去る時など、未練や名残惜しさが残る場面で広く使えます。
Q3. 「後ろ髪を引かれる」の言い換え表現はありますか?
A. 近い表現としては、「未練がある」「心残りがある」「名残惜しい」などがあります。
最後に
「後ろ髪を引かれる」とは、決意したもののまだ未練が残っている状態のこと。愛する人との別れや、慣れ親しんできた環境から離れるのは勇気がいるため、なかなか吹っ切れないということもあるでしょう。「その時ベストだと思える決断をした」と納得できれば、自然と心残りが消えていくかもしれませんね。
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