「氷魚」は魚の名前として使われる一方で、俳優の宮沢氷魚さんの名前としても知られていますね。実は読み方によって、指す魚が変わるって知っていましたか? そこで本記事では、「氷魚」が持つ多様な読み方と意味について詳しく紹介します。
「氷魚」とは? 読み方・意味・語源を解説
まずは「氷魚」の読み方と意味を整理しながら、その語源について見ていきましょう。

「氷魚」の読み方と意味
「氷魚」には複数の読み方があります。それぞれの読み方には、異なる意味がありますよ。
・こまい(もしくは、こまいうお)
・ひうお(もしくは、ひお)
「こまい」と「ひうお」の定義を辞書で確認しましょう。
こまい【氷=魚/氷=下=魚】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
タラ科の海水魚。全長約30センチ。体色は灰褐色で、暗色の不規則な斑点がある。食用。北海道以北の日本海・太平洋沿岸にすむ。根室地方では冬、海面の氷に穴をあけて釣る。《季 冬》「沓軋(きし)り現れしアイヌと―釣る/三鬼」
ひ‐うお〔‐うを〕【氷魚】アユの稚魚。2、3センチ程度で体はほとんど半透明。秋から冬にかけて琵琶湖でとれるものが有名。ひお。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「こまい」と「ひうお」の違い
「こまい」と読む場合には、タラ科の海水魚を指します。特に冬の時期には、氷上に穴をあけて釣る習慣がありますよ。
一方、「ひうお」と読む場合には、鮎の稚魚を指します。秋から冬にかけて琵琶湖で漁獲されるものが有名です。
「氷魚(こまい)」の語源は?
氷魚(こまい)は、アイヌ語に由来するといわれています。しかし、意味は不明だそうです。氷に穴をあけ、氷下に寄せてくる産卵群を小型定置網、氷下待ち網、手釣りでとることから氷魚あるいは氷下魚と書きます。
参考:『日本大百科全書』(小学館)

「氷魚(ひうお)」の語源は?
孵化後、稚魚は1、2か月は色素がまだ体表に現われてこないため、半透明で氷のように透き通っているところからこの名があります。
参考:『日本の歳時記』(小学館)
「氷魚(ひうお)」とはどんな魚? 琵琶湖の冬の味覚を知る
「氷魚(ひうお)」は、琵琶湖の冬の風物詩として知られています。透き通るような体を持ち、独特の食感と淡白な味わいが特徴です。古くから日本の食文化に深く関わっており、その歴史をひも解くと、宮廷料理にも登場していたことが分かります。
ここでは、氷魚(ひうお)の特徴や生息地、食べ方について見ていきましょう。

氷魚(ひうお)はどんな魚? その特徴と生息地
「氷魚(ひうお)」とは、琵琶湖や琵琶湖から流れ出る川に生息する鮎の稚魚を指します。体長はおよそ3〜4センチほどで、孵化直後は色素が少なく、透明感のある姿をしています。
鮎は9月から11月にかけて産卵し、孵化した稚魚は冬の間に琵琶湖で成長します。やがて春になると川を遡上し、成魚へと育っていきます。
氷魚(ひうお)の味わいは白魚に似ていますが、より淡白で繊細な風味を持つとされています。食材としても重宝され、釜揚げなどさまざまな調理法で楽しまれていますよ。
参考:『日本の歳時記』(小学館)
氷魚(ひうお)の歴史と食べ方
氷魚(ひうお)は、古くから貴重な食材として扱われてきました。宮廷への献上品として記録があり、「年料御贄」と呼ばれる貢納品のひとつに数えられていました。
『北山抄』や『江家次第』といった文献には、氷魚を塩で味付けし、匙(さじ)で掻き取って食べる方法が記されており、当時は生食されることがあったと推測されています。
現代では、釜揚げやかき揚げ、佃煮などの料理が一般的です。
参考:『国史大辞典』(吉川弘文館)
最後に
「氷魚」と書いて2種類の魚を指すとは、驚きましたね。違いを覚えておけば、雑学として役に立つかもしれません。
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