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「こりつむえん」という言葉、誰しも一度は聞いたことがあるでしょう。さてさて、漢字にしたときに「孤立無援」と「孤立無縁」、どちらが正しいでしょうか…? あらためて聞かれると、結構難しいものですね。漢字を見ても、どちらも正しいように感じられます。
本記事では、「こりつむえん」について深掘りしていきましょう。
「孤立無援」と「孤立無縁」どちらが正しい? 意味も確認
さて「こりつむえん」の正しい漢字ですが…、正解は「孤立無援」です。合っていたでしょうか? 「孤立無援」が持つ意味を理解すると、類似表現との違いもより明確になります。
「孤立無援」の意味と定義
「孤立無援」は、「仲間がおらず一人ぼっちで、周囲からの支援がないこと」を意味します。単に一人でいることではなく、支援が必要な状況で誰からも援助を受けられないという意味がありますよ。
「孤立無援」は、仕事上の交渉や意思決定の場面、人間関係の中での立場を説明するときなどに使われます。例えば、チームからの協力が得られない状態や、孤独な戦いを強いられる状況で用いられることが多いでしょう。

「孤立無援」と「四面楚歌」の違いは?
「孤立無援」に似た言葉に「四面楚歌」があります。意味の違いを理解するために、「四面楚歌」の辞書の定義を確認してみましょう。
しめん‐そか【四面×楚歌】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《楚の項羽が漢の高祖に敗れて、垓下(がいか)で包囲されたとき、夜更けに四面の漢軍が盛んに楚の歌をうたうのを聞き、楚の民がすでに漢に降伏したと思い絶望したという、「史記」項羽本紀の故事から》敵に囲まれて孤立し、助けがないこと。周囲の者が反対者ばかりであること。
「四面楚歌」は「周囲が敵ばかりで孤立し、助けがないこと」を指します。
「孤立無援」は、支援が得られない状態を表しますが、必ずしも敵がいるとは限りません。一方、「四面楚歌」は、周囲がすべて敵対的な存在であることを意味します。単に助けがないだけでなく、攻撃や批判を受けている状況で使われますよ。
この違いを理解しておけば、状況に応じて適切な言葉選びができますね。
「孤立無援」の使い方と例文
「孤立無援」という言葉は、ビジネスや交渉の場面、さらには日常生活においても用いられます。具体的な例文を通して、どのような状況で適切に使えるのかを確認していきましょう。
彼は、孤立無援の中でプロジェクトを進めた。
この例文は、仕事やプロジェクトにおいて、他者からの支援が得られない状況を表しています。例えば、チームメンバーが協力してくれず、一人で作業を進めるしかなかった場合に使うことができるでしょう。また、周囲の理解が得られない中で、自分の信念を貫く場面でも用いられますよ。
孤立無援の状態で交渉に臨んだ。
交渉の場では、通常、チームや上司のサポートを受けながら進めることが望まれます。しかし、すべてを一人で担わなければならず、支援すら得られないときもあるでしょう。例文は、まさにそんな状態を表しています。
引っ越したばかりで知り合いがいないため、見知らぬ土地での生活はまるで孤立無縁であるように感じた。
この例文では、新しい環境に馴染めず、頼れる人がいない状況を「孤立無援」と表しています。引っ越したばかりで知り合いがいないと、日常のちょっとした困りごとや緊急時にも相談できる人がいないため、不安を感じることがあるでしょう。
この例文のように、物理的に一人でいるだけでなく、精神的にも支えがないと感じるときに「孤立無援」という表現は使えます。

英語で「孤立無援」はどう表現する?
英語で「孤立無援」を表現する場合、いくつかの言い回しがあります。ここでは2つ紹介しましょう。
be a minority of one
“be a minority of one”は、「一人意見が違っている」という意味のほかに「孤立無援である」という意味もあります。
例文:She was a minority of one at her company.
(彼女は会社で孤立無援だった。)
plow a lonely furrow
“plow a lonely furrow”は、「孤立無援で黙々と一人で仕事をやっていく」、「我が道を行く」という意味があります。
例文:He plowed a lonely furrow and completed the project on his own.
(彼は孤立無援でプロジェクトを成し遂げた。)
参考:『小学館 ランダムハウス英和大辞典』(小学館)

「孤立無援」が登場する作品をチェック
「孤立無援」という言葉は、文学作品や音楽のタイトルとしても取り上げられています。以下に、特に注目される作品を紹介します。
『孤立、無援』とは?
『孤立、無援』は、映画監督・阪本順治さんの著書です。デビュー作『どついたるねん』(1989年)から『亡国のイージス』(2005年)まで、14作品にわたる映画制作の舞台裏や、監督自身の映画人生を振り返った内容となっています。映画制作における孤独や挑戦、情熱が綴られており、映画ファンや業界関係者にとって興味深い一冊です。
『孤立無援の唄』とは?
『孤立無援の唄』は、シンガーソングライター・森田童子さんの楽曲です。歌詞は、社会から取り残されたような感覚や、日々の中で感じる孤立感が描かれており、多くの人々の共感を呼んでいます。
最後に
「孤立無援」という言葉は、ただ孤独を表すだけでなく、助けを得られない状況を意味する奥深い四字熟語です。似た表現と比較することで、違いや適切な使い方が見えてきます。また、「孤立無援」という言葉は、文学や音楽にも取り入れられていることがわかりました。こうした作品に触れることで、さまざまな視点から考察することができますね。
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