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「早蕨」という言葉には、春の訪れを感じさせる響きがありますが、読み方が難しいですね…。文学や俳句に登場することが多く、情緒的な意味を持つ表現として使われてきました。日常生活ではあまり聞かれませんが、香水の名前になっていたり、漫画にも登場しますよ。
そこで、この記事では「早蕨」の読み方や意味、語源などを深掘りしていきいます。
早蕨とは? 意味や語源を知ろう
「早蕨」は、春に芽吹くワラビを指す言葉です。読み方や意味を確認しながら、その魅力を探っていきましょう。
早蕨の読み方と意味
「早蕨」は、「さわらび」と読みます。辞書では以下のように定義されています。
さ‐わらび【▽早×蕨】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
一
1 芽を出したばかりのワラビ。《季 春》
2 襲(かさね)の色目の名。表は紫、裏は青。春に用いる。
二源氏物語第48巻の巻名。薫大将、25歳。宇治の大君(おおいぎみ)没後、中の君は匂宮の二条院に移り、薫の失望するさまを描く。
「早蕨」とは、早春に芽生える若いワラビのことを指します。春の息吹を感じさせる言葉であり、成長や変化を表す象徴的な存在としても捉えられています。
早蕨の語源
「早蕨」の語源には諸説ありますが、代表的なものを2つ紹介します。1つ目は、「さ」が発芽や発生を意味し、「発(さす)」の語根であるとする説。2つ目は、「さ」が「早(わさ)」を省略したもので、早春に芽吹く様子を表しているとする説です。
いずれも、ワラビが春にいち早く芽を出すことに由来していると考えられています。
参考:『日本国語大辞典』(小学館)

俳句・和歌に見る早蕨
俳句や和歌の中で「早蕨」は、春の訪れを象徴する表現として使われます。日本の伝統的な詩歌には、四季の移ろいを繊細に表現する言葉が多くありますが、「早蕨」もその一つといえるでしょう。
早蕨は春の季語
俳句の世界では、「早蕨」は春の季語として用いられます。土の中から顔を出したばかりの蕨の姿には、新しい生命の息吹が感じられるため、春の訪れを詠む際にふさわしい言葉として用いられることが多いようです。
『万葉集』にも登場する早蕨
「早蕨」という言葉は、『万葉集』にも詠まれています。春の訪れを感じさせる植物として、古くから和歌の題材となり、新しい季節の始まりを象徴するものとして表現されてきました。春の喜びや期待感が込められた歌の中に、早蕨の芽吹く情景が描かれています。
岩走る 垂水の上の 左和良妣(サワラビ)の もえ出づる春に なりにけるかも
引用:志貴皇子『万葉集』
この和歌では、岩の上を勢いよく流れる滝のそばで、早蕨が芽吹く様子が詠まれています。厳しい冬が終わり、春の到来を実感する喜びが伝わる一首です。早蕨の芽吹きは、単に自然の移り変わりを示すだけでなく、新たな生命の始まりや希望の象徴として、古来より日本人に親しまれてきました。
「早蕨」に関連する「早蕨の舞」と香水とは?
「早蕨」という言葉に関連して、「早蕨の舞」という表現や、「早蕨」という名の香水が存在します。これらについて詳しく見ていきましょう。
「早蕨の舞」の意味
「早蕨の舞」は、アニメ『NARUTO-ナルト-』の第127話「執念の一撃! 早蕨の舞」に登場する技の名称です。このエピソードでは、君麻呂(きみまろ)が「早蕨の舞」という技を使用し、骨を自在に操る戦闘シーンが描かれています。
サノマの香水「早蕨」
「早蕨」という名の香水は、フレグランスブランド「サノマ(canoma)」から発売されています。この香水は、松やシダーウッドのウッディな香りと、ラベンダーやセージのアロマティックな香りが特徴で、青リンゴのようなムスクが優しく包み込む香り立ちです。寒い冬の朝、窓から差し込む暖かな光をイメージして作られています。

早蕨に類似する、春を感じさせる表現
「早蕨」は、春の訪れや新しい始まりを象徴する言葉です。同じく春の芽吹きを表す言葉を知っておくと、場面に応じて適切な表現を選ぶことができます。
若草
「若草」は、春に芽吹いたばかりの草を指します。新しい生命が宿る様子を表す言葉として、「早蕨」と同じように春の訪れを表現する際に使われることがあるでしょう。柔らかくみずみずしい緑の草を連想させるため、自然の息吹を感じさせる表現としても用いられます。
春草
「春草」は、春になると萌え出る草を指す言葉です。『万葉集』や和歌などの詩的な表現にも登場し、春の始まりを印象付ける表現として用いられてきました。新たな命の芽吹きや季節の変化を象徴する言葉としても親しまれています。
早蕨を使った例文
「早蕨」という言葉を文章の中でどのように活用できるのか、具体的な例を紹介します。春の訪れや新たな始まりを表現する際に役立つ表現です。
「山の斜面には、早蕨が小さな芽をのぞかせていた」
春の訪れを感じさせる情景を描写した表現です。冬の終わりを告げるように、自然が芽吹く様子が伝わります。
「早蕨の芽吹きとともに、新たな旅立ちの季節がやってきた」
新しいスタートや希望を象徴する表現として使われます。春という季節とともに、何かが始まる雰囲気を演出できます。

「庭の片隅に、今年も変わらず早蕨が芽を出していた」
自然の移り変わりを穏やかに描写する表現です。毎年の季節の訪れや、変わらない風景の中にある安心感を伝える場面に適しています。
早蕨の英語表現
“bracken”は蕨を意味する単語です。春先に芽吹くワラビを表す場合には “early bracken” という表現が適しているでしょう。
最後に
「早蕨」は、日本の四季や自然の変化を繊細に表現する美しい言葉の一つです。俳句や文学、香水など、さまざまな分野で用いられており、日本語の豊かさを感じさせます。言葉の背景を知ることで、その響きがより深く心に残るかもしれません。春の息吹を感じながら、この言葉の魅力を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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