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「思惑」という言葉はよく使われますが、その意味を正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。いい意味で使われることもあれば、相手の意図を探るような場面で使われることもあります。
この記事では、「思惑」という言葉の意味や使い方、類語との違いを詳しく見ていきましょう。
「思惑」の意味とは?
「思惑」という言葉には、単なる「考え」とは異なるニュアンスが含まれています。意味を正しく理解して、適切な場面で使えるようにしていきましょう。
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「思惑」の読み方と意味
「思惑」は「おもわく」と読みます。辞書で意味を確認しましょう。
おもわ‐く〔おもは‐〕【思わく/思惑】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
一《二が原義。「惑」は当て字》
1 あらかじめ考えていた事柄。考え。意図。また、見込み。「なにか―がありそうだ」「―が外れる」
2 自分のしたことに対する他人の反応、評価。評判。「世間の―が気になる」
3 相場の変動を予想すること。また、その予想によって売買すること。
4 人に思いをかけること。恋心。
「何の―がありて、美形の女の方より、指爪を放しやるべし」〈浮・禁短気・二〉
5 思いをかけた人。恋人。情人。
「この―の心算用をすまさせいでは」〈浮・禁短気・一〉
二《動詞「おもう」のク語法》
1 思うこと。
「あしひきの山は百重(ももへ)に隠せども君を―止む時もなし」〈万・三一八九〉
2 (副詞的に用いて)思うことには。思うには。
「里見れど里も見かねて怪しみとそこに―」〈万・一七四〇〉
この言葉には、いくつかの異なる意味があるため、辞書の定義をもとに整理していきます。
1.考えや意図、見込み
何かをする際の計画や期待を表します。例えば、「彼の発言には何か思惑がありそうだ」という場合、何らかの目的や意図が含まれていることを示唆。また、「思惑が外れる」と言うと、予想していた結果と異なる展開になったことを意味します。
2.他人の評価や反応
「世間の思惑が気になる」という場合、他人が自分をどう見ているか、どのように評価されているかを気にする心理を表します。このように「思惑」は、周囲の反応を意識する場面で使われることもあります。
3.相場の変動を予想すること
「思惑買い」などの言葉に見られるように、経済や投資の分野では、相場がどのように動くかを予測する意味で使われます。例えば、「市場の思惑で株価が上昇した」と言えば、投資家の予想が価格に影響を与えたことを示していますよ。
4.恋心や恋人に対する思い
「思惑」には、昔の文学作品などで「恋心」や「想いを寄せる相手」という意味もあります。現代ではあまり使われませんが、江戸時代の文学ではよく見られました。
「思惑通り」の意味と使い方
「思惑通り」という表現についても、意味を確認していきましょう。
「思惑通り」の意味とは?
「思惑通り」とは、自分の考えや計画が想定通りに運ぶことを指します。例えば、仕事で立てた戦略が成功したときや、相手の行動を予測して動いた結果が狙い通りだった場合に使われますよ。
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「思惑通り」の使い方の例
新商品の販売戦略が成功し、予測した通りの売上を達成した場合に「思惑通りの結果となった」と表現したりしますね。また、相手の行動を読んで計画的に進めた交渉がうまくいったときにも、この表現が使われることがあります。
「思惑」は悪い意味? ポジティブな使い方とネガティブな使い方
「思惑」という言葉は、状況によってポジティブにもネガティブにも使われます。場面ごとの違いを理解することで、より適切に活用できるでしょう。
ポジティブな意味での「思惑」
「思惑」が前向きな意味で使われる場合、自分の考えや計画を実現させることに焦点が当てられます。例えば、新しいプロジェクトが計画通りに進んだとき、「思惑通りになった」と表現することがありますね。このように、将来を見据えた戦略や準備がうまくいったときにポジティブに使われることが多いでしょう。
ネガティブな意味での「思惑」
一方で、「思惑」には企てや策略といった意味が含まれることもあります。例えば、「彼の発言には何か思惑がありそうだ」と言った場合、発言の裏には何か別の目的や狙いがあるのではないかという意味になりますよ。
また、政治やビジネスの世界では、異なる立場の人々の利害が絡み合うことが多いため、「それぞれの思惑が交錯する」といった表現を使われることがよくあります。
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「思惑」の類語や言い換え表現
ここでは、「思惑」と近い意味を持つ言葉を紹介します。それぞれの違いを見ていきましょう。
意図
「意図」は、何かをしようとする目的や考えを表す言葉です。「思惑」が他人の反応や評価を気にする場面でも使われるのに対し、「意図」はより主体的な考えや計画を指すことが多いでしょう。例えば、「彼の意図は明確だった」という場合、相手の考えがはっきりしていたことを意味します。
狙い
「狙い」は、特定の結果を得ることを目的とする場合に使われます。「思惑」は計画や考え全体を含むことがありますが、「狙い」はより具体的なターゲットに焦点を当てる点が特徴です。
「この広告の狙いは、若年層の関心を引くことだ」というように、意図的な戦略を示す場面でよく使われます。
計画
「計画」は、具体的な行動や実行に移すための考えを示す言葉です。「思惑」は、心の中にある漠然とした考えや期待を含むことがあるのに対し、「計画」はより整理され、実行可能なものを指します。
「このプロジェクトは入念に計画された」という場合、実際の行動に移すための詳細な準備がされていたことがわかりますね。
「思惑」の英語表現
英語で「思惑」を表現するときは、“intention”や“expectation”が使われることが多いでしょう。“intention”は意図や目的を示し、“expectation”は期待や予想を意味します。
「思惑通りに」と言いたい場合には、“according to one’s expectation(s)”を使うことができるでしょう。
最後に
「思惑」は、使う場面によって意味が異なりますので注意が必要です。適切な文脈で使うことで、より伝わりやすい表現になるでしょう。
TOP画像/(c) Adobe Stock