狸寝入りとは? 意味を例文でチェック
眠っているふりをすることを「狸寝入り(たぬきねいり)」といいます。
- 狸寝入りをして、彼らのひそひそ話を盗み聞きした
- おそらく声をかければ彼はすぐに目を覚ますよ。きっと狸寝入りをしているだけだから
たぬき‐ねいり【×狸寝入り】 の解説
出典:小学館 デジタル大辞泉
[名](スル)眠っているふりをすること。空寝 (そらね) 。「—して聞き耳を立てる」
類似する意味の言葉1:空寝
「空寝(そらね)」とは、寝たふりをすることです。「そらねむり」ともいいます。
- お父さんは都合が悪くなると、空寝して聞こえないふりをします
- 話すのが面倒で空寝をしていたら、いつの間にか本当に寝てしまった
類似する意味の言葉2:嘘寝
「嘘寝(うそね)」は空寝と同じく、寝たふりをすることを意味する言葉です。
- 目を閉じているけれど、耳とひげがピクピク動いている。やはりあの猫は嘘寝をしているらしい
- 軽く寝息を立てているが、嘘寝をしているのか、本当に寝ているのかわからない
狸寝入りの由来とは?
狸は驚くと気絶をして動かなくなってしまうことがあります。その様子を見て、昔の人々は「狸が寝たふりをしている」と思い、寝たふりをしていることを「狸寝入り」というようになったようです。
なお、狸は交通事故に遭うことも多いとか。個体差はあるものの狸は臆病な性格で、車のヘッドライトに驚いて固まってしまったり、走行音に驚いて仮死状態になったりするからともいわれています。
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狸のことわざ・慣用句・単語
狸という漢字は、動物を意味する獣偏(けものへん)と人里を示す「里」で構成されています。人間の行動圏と重なり、昔から馴染みの深い動物だったと考えられます。
そのため、狸を使ったことわざや慣用句、単語は少なくありません。よく使われる言葉を紹介します。
取らぬ狸の皮算用
「取らぬ狸の皮算用」とは、まだ捕まえてもいない狸の皮を売ることを考えること。それが転じ、手に入るかどうかわからないものを当てにして、計画を立てることをたとえた言葉です。
- まだ商品も完成していないのに、すでにヒットした気になって利益で事業を拡大する計画を立てている。まさしく取らぬ狸の皮算用だ。売れずに借金を抱える可能性だってあるのに
- 取らぬ狸の皮算用とは娘のことだ。娘はお年玉をもらう前から使う計画を立てている。今年は景気がよくないから、期待するほどにはもらえないかもしれないのに…
鹿待つ所の狸
「鹿待つ所の狸」とは、鹿を捕ろうと待っていたのに、狸が来たため狸を捕まえたという意味の言葉です。
皮や角、肉などが珍重される鹿とは異なり、人里近くで暮らし、馴染みの深い狸はハンターにとってあまり喜ばしくない獲物だったのかもしれません。そのため、「鹿待つ所の狸」は、期待に反してつまらないものを得ることや、予期に反することをたとえて使われます。
- 彼女と一緒に帰ろうと教室に行ったら、まさに鹿待つ所の狸だよ。悪友につかまって一緒に帰ることになってしまった
- 有名な俳優に会えると思って出待ちをしていたら、マネージャーにしか会えなかった。鹿待つ所の狸とはこのことだ
狸の腹鼓
「狸の腹鼓(はらつづみ)」とは、月夜に狸が腹をたたいて楽しむという言い伝えのことです。人をだまそうとお腹をたたいているのか、それとも狸が楽しんで自分のお腹をたたいているのかはわかりませんが、狸といえば大きくて丸いお腹をたたくイメージがあるようです。
狂言の演目の一つにも「狸の腹鼓」があります。メスの狸が尼僧に化け、猟師に殺生を戒めますが、正体を見破られて腹鼓を打って命乞いをし、隙を見て逃げるというストーリーです。
狸親父
「狸親父(たぬきおやじ)」とは、年老いてずるがしこい男性をののしっていう言葉です。
- あの先生は一筋縄ではいかない。老獪で抜け目がなく、まさしく狸親父だ
- 温和そうに見えるが、彼は狸親父だ。計算高い人だから、決して自分が損をする取引はしない
狸親父と同じ意味で、「たぬきじじい」ともいいます。なお、「じじい」とは年老いた男性を指す言葉ですが、おもに年老いた男性をののしる際に使われます。
- うちの親父はたぬきじじいだ。ずるがしこいことこの上ない
- 人様に「たぬきじじい」だの「狸親父」だのいうのは失礼ですよ
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狸顔
「狸顔」とは、人をばかにしたような、そらとぼけた顔のことです。
- 彼はわたしたちの悪だくみを全部知っているくせに、ばかにしたような狸顔で知らないふりをする
- 彼女の狸顔を見ていると腹が立つ
狸顔(たぬき顔、タヌキ顔)は必ずしもネガティブな意味で使われるわけではありません。現代では丸顔で愛らしい顔を指して、「狸顔」と呼ぶこともある傾向がみられます。厳密な定義があるわけではありませんが、柔らかい雰囲気があり、丸い目やぷっくりとした唇、優しそうでふくよかな頬などを持っている顔立ちを指すことが多いようです。
狸顔と対比する言葉に「狐顔(きつねがお)」が挙げられます。丸く柔らかい印象のある狸顔とは異なり、狐顔は直線的でシャープな印象を指します。ほっそりとした頬や切れ長の目などは、狐顔の特徴でしょう。子どものようにかわいらしい狸顔に対して、狐顔は大人びてきれいな顔立ちともいえます。
狸そば
「狸そば」とは、刻んだねぎと揚げ玉をのせたかけそばのことです。地域によっては、油揚げをのせたそばや、あんかけにしたそばなどを「狸そば」と呼ぶこともあります。
店舗によっても違いはありますが、大阪では油揚げがのったそばは「狸そば」、油揚げがのったうどんは「きつねうどん」と呼ばれることが多いようです。一方、東京では油揚げがのったそば・うどんは「きつね」、天かすをのせたそば・うどんを「たぬき」と呼び分けることが多いようです。
狸を使った言葉を覚えよう
身近な動物であった狸は、多くの慣用句やことわざに使われています。また、昔話の中にも狸はよく登場します。かわいいイメージから、ずるがしこいイメージまで多様な狸を想像しながら、狸を使った言葉を覚えてみましょう。
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