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「映る」と「写る」を使い分けられていますか?
日常的に使われる「うつる」という言葉。会話のなかでは気になりませんが、文字に表そうとすると「『映る』と『写る』、どちらを使ったらいいんだろう…?」と分からなくなってしまいがちです。
そこで、本記事では「映る」と「写る」の意味をおさらいし、使い分け方まで例文を用いながらしっかり解説します。記事の後半では、日常生活においても頻繁に登場し、かつ分かりにくい同音異義語について見ていきましょう。
「映る」の意味
まずは、意味のおさらいから。実は「映る」が含んでいるニュアンスは意外と多いのです。1つ目は、「映像がスクリーンなどの上に現れる」です。2つ目は、「反射や投影などによって、姿やかたち、影などがほかの物の上に現れる」になります。1つ目と2つ目は、同じくくりでとらえて良いでしょう。
3つ目は、「人間の目に何かしらの印象を与える」、そして最後4つ目は、「色や物のバランスが良く、つりあいがとれている」です。
「写る」の意味
続いて、「写る」の意味も確認しましょう。「写る」には、「写真などに姿やかたちが表出される」「紙を通して下に描かれたものが透けて見える」という意味があります。
「映る」と「写る」の違い【まとめ】
「映る」と「写る」、それぞれの意味を確認しましたが、違いが分かりくいですよね。ここで一度、両者の違いについて整理しておきましょう。
「映る」は、「反射や投影によって現れる」という部分に重きが置かれています。したがって、スクリーンや壁に投影されるだけでなく、水面や鏡、ガラスなどに反射によって現れる様子は、「映す」となりますね。また、印象や心に浮かぶイメージに対しても使われます。
一方、「写る」はもう少し限定的な使われ方をします。「写真」という言葉があるように、写真に関連して使われることが多いです。「写る」は、「裏側や下にあるものが透けて見える」というニュアンスに重きが置かれます。なお、「写る」には「反射や投影によって現れる」ニュアンスはありませんよ。
「映る」の使い方を例文で紹介
「映る」と「写る」の違いを整理したところで、続いては実践的な使い方を紹介しますね。言葉を覚えたり、正しく使ったりするためには実生活のなかで使っていくのがいちばんです。ぜひ、参考にしてみてくださいね!
1:「映画館のスクリーンに映る映像は、いまにも飛び出しそうな迫力がある」
映画館で見る映像は、スクリーンに投影されている映像です。したがって、「映る」を使います。よくよく言葉を見てみると「映画館」も「映像」も「映」の漢字が含まれていますね。
2:「水面に映る富士山は逆さ富士と呼ばれ、日本が誇る絶景だ。逆さ富士の美しさは、言葉に表せるものではない」
「水面に映る(みなもにうつる)」という表現はしばしば使われますので覚えておくと便利です。水面に像が映るのは、水面にあたった太陽の光が反射して人間の目に入っているから。反射によって現れるのは 「映る」でしたね。
3:「私にとっては見慣れた高層ビル群の風景も、彼女には新鮮に映ったようだ」
「映る」には、その人の印象を表すというニュアンスもあります。この例文のように「新鮮に映る」と言ったり「奇怪に映る」、「不思議に映る」と言ったりすることもできますよ。
「写る」の使い方を例文で紹介
「写る」の使い方についても押さえておきましょう。
1:「その写真には、笑顔で写る友達と私の姿があった」
「写真にうつる」は、「写る」を使います。映像や反射、投影に対しては「映る」を使うことを考えると、静止しているもの(写真)には「写る」、動きやリアルタイムのもの(映像・反射・投影)には「映る」という使い分けをするのが分かりやすそうです。
2:「油性ペンで紙に記入したら、下の紙にインクが写ってしまった」
「写る」は「透けて見える」というニュアンスがあります。この例文の場合、下の紙にインクが写ったということは、油性ペンで書いた紙の裏面に書いた文字が透けているということです。いわゆる「裏写り(うらうつり)」という現象ですね。
「裏写り」は「裏移り」とも書きますが、もともと「写る」は「移る」と同じ語源なんです。
同音異義語はほかにどのようなものがある?
最後に、「映る」と「写る」のように混乱しやすい同音異義語について紹介します。みなさんはどんな言葉を思いつくでしょうか?
1:いがい(以外/意外)
「いがい」で混同しやすいのは、「以外」と「意外」です。「以外」には、「ある範囲の外」「(名詞や動詞の後ろについて)それをのぞいたほかの物事」という意味があります。一方の「意外」は、「イメージしていたことと非常に違ったいること」という意味です。
2:いし(意思/意志)
「意思」と「意志」も混同しやすいですね。「意思」は、「何かをしようとする気持ち」という思いや考えの意味に重きが置かれます。一方の「意志」は、「何かをしたい」「実現したい」という精神の働きそのものを表す場合に使われることが多いです。また、哲学や心理学の用語として使われる傾向にあります。
3:つとめる(努める/務める/勤める)
「つとめる」には、「努める」「務める」「勤める」などがあります。「努める」は「努力して行う」というニュアンスが強いです。「役割や仕事を引き受ける」は「務める」が使われます。「勤める」は、「就職する」「仏道に励む」というニュアンスです。
最後に
「映る」は「反射や投影によって現れる」という部分に重きが置かれ、「写る」は「裏側や下にあるものが透けて見える」というニュアンスに重きが置かれているということがわかりました。「うつる」を漢字にするとき、次回からは迷わずにすみそうですね!
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