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この記事のサマリー
・「映る」は、「姿・形・影などが反射や投影によって他の物の上に現れる」ことを意味。
・「写る」は、「写真に姿・形が現れる」「下にある文字や絵が透けて見える」ことを意味。
・写真に関する表現は「写る」が基本。
「映る」と「写る」。どちらも「うつる」と読むため、つい使い分けを迷う言葉です。写真、鏡、テレビなど、日常のさまざまな場面で登場するこの二語ですが、実は意味や使い方には違いがあります。
本記事では、辞書の定義をもとに、「映る」と「写る」の正しい意味と使い分けをわかりやすく整理。誤用を防ぎながら、言葉の背景までスマートに理解できるように解説します。
「映る」と「写る」の違いは?
「映る」と「写る」は、どちらも「目に見える像」を指す言葉ですが、使われる場面や意味には違いがあります。ここでは、それぞれの言葉の意味から整理していきましょう。
「映る」の意味と使い方
「映る」は、「姿・形・影などが反射や投影によって他の物の上に現れる」ことを意味します。例えば「鏡に映った姿」や「テレビに映る」のように、光の反射や投影によって像が現れるときに使います。
この他、「赤いリップがよく映る」というように、物事の釣り合いや色の配合などがぴったりしていることも指します。
辞書では次のように説明されていますよ。
うつ・る【映る】
[動ラ五(四)]《「移る」と同語源》
1 姿・形・影などが、反射や投影によって、他の物の上に現れる。「鏡に―・った顔」「障子に―・る人影」
2 映像がスクリーンやブラウン管などの上に現れる。「電波障害でテレビがよく―・らない」
3 色や物の配合がよく、つりあいがとれている。また、付属的なものが本体と調和する。「あの人には赤がよく―・る」「その背広にはストライプのネクタイがよく―・る」
4 人の目にある印象を与える。映ずる。「初めての人には奇異に―・る風習」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「写る」の意味と使い方
一方の「写る」は、「写真に姿・形が現れる」「下にある文字や絵が透けて見える」といった意味を持ちます。つまり、何かが媒体に記録される・転写される場合に使う言葉です。
例えば「いい表情で写っている」「次のページが写ってしまっている」などが典型的。カメラや紙など、物理的な媒体を通して像が固定されるのが「写る」です。
辞書では次のように説明されています。
うつ・る【写る】
[動ラ五(四)]《「移る」と同語源》
1 写真に姿・形が現れる。写真が撮れる。「にやけた顔で―・っている」
2 下にある文字や絵が、紙などを通して、透けて見える。「裏のページの絵が―・って読みにくい」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)

「映る」と「写る」の語源は共通
「映る」と「写る」は、ともに「移る」が語源です。「移る」には以下の意味がありますよ。
うつ・る【移る/▽遷る】
[動ラ五(四)]
1 位置が変わる。
(ア)場所や地位・配置などが変わる。「新居に―・る」「営業部に―・る」
(イ)(遷る)移転する。「都が―・る」
2
(ア)関心の対象が変わる。「興味がほかに―・った」
(イ)物事や人の性質・傾向・状態などが変わる。「次の議題に―・る」「すぐさま行動に―・る」
3 時間が過ぎる。「時代が―・る」
4 色やにおいなどが他の物に染みつく。「石鹸(せっけん)のにおいが―・る」
5 病気や物の勢い・傾向などが他に及ぶ。「風邪が―・る」「火が隣家に―・った」「父の癖が子供にも―・る」
6 時が経過して色があせる。色がさめる。
「花の色は―・りにけりないたづらに我が身よにふるながめせしまに」〈古今・春下〉
7 花や葉が散る。
「今日だにも庭を盛りと―・る花消えずはありとも雪かとも見よ」〈新古今・春下〉
8 霊魂などがのりうつる。
「物の怪(け)、生霊(いきすだま)などいふもの、多く出で来て、さまざまの名のりする中に、人にさらに―・らず」〈源・葵〉
[可能]うつれる
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「映る」と「写る」の違い【まとめ】
「映る」と「写る」、それぞれの意味を確認しましたが、違いが分かりくいですよね。ここで今一度、両者の違いについて整理しておきましょう。
「映る」は、「反射や投影によって現れる」という部分に重きが置かれています。したがって、スクリーンや壁に投影されるだけでなく、水面や鏡、ガラスなどに反射によって現れる様子は、「映す」となりますね。また、印象や心に浮かぶイメージに対しても使われます。
一方、「写る」はもう少し限定的な使われ方をします。「写真」という言葉があるように、写真に関連して使われることが多いです。この他、「裏側や下にあるものが透けて見える」という意味もありますよ。
なお、「写る」には「反射や投影によって現れる」ニュアンスはありません。

【場面別】「映る」と「写る」の正しい使い分け
「映る」と「写る」の使い分けについて、日常シーンごとに具体例を交えて見ていきましょう。
写真に使うとき:どっちが正解?
写真に関しては、「写る」が正解です。例えば「昨日の集合写真、変な顔で写ってた〜」のように使います。
カメラで記録される対象がある場合には、「写る」が正しいと覚えておきましょう。
鏡を見るとき:「映る」が自然?
鏡に映るのは、「写る」ではなく「映る」です。鏡は光を反射して姿を見せる道具なので、「反射や投影によって現れる像」を意味する「映る」が適しています。
例えば「鏡に映った自分の顔が意外に真剣だった」といった表現が典型的です。
動画・テレビ・画面での使い方
動画やテレビの映像は、「写る」ではなく「映る」が正しい表現です。これは、「映像がスクリーンやブラウン管などの上に現れる」という定義に基づいています。
例えば「この番組、うまく映らないな」「動画に変なものが映ってた」などが自然な言い回しです。

「映ると写るの違い」に関するFAQ
ここでは、「映ると写るの違い」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1.「写真に映る」「写真に写る」どちらが正しい?
A. 正しくは「写真に写る」です。
カメラを通して姿が記録される場合は「写る」を使います。
Q2.「テレビに映る」と「テレビに写る」、どちらが正しい?
A. 正しいのは「テレビに映る」です。
テレビやモニターなどに表示される映像は、反射や投影によって「目に見える像」であり、記録ではないため「映る」が適切です。
Q3.「鏡に写る」と書いても問題ない?
A. 正しくは「鏡に映る」です。
鏡は光を反射して像を見せるため、「映る」が正しい表現とされています。
最後に
「映る」と「写る」は、読みが同じでも使い方が異なる言葉です。本記事を通して、場面に応じた正しい使い分けを整理できたのではないでしょうか。
言葉の選び方一つで、印象は大きく変わります。日常会話やSNS、ビジネスの場でも、自信をもって使いこなしてみてください。
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