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アサーションとは? 職場で役立つ自己主張スキルの基本
・依頼を断れず、受けてしまい、悔やんだことがある。
・注意したら、相手が気分を害してしまった。
このような思いをしたことがある人は多いのではないでしょうか? 職場において、相手と対等な立場で、自分の意見を素直に述べることができる環境は、ビジネスの成功へのカギと言えるでしょう。ここではアサーションの意味、ビジネスシーンでの重要性について解説します。
アサーションとは? 心理学的視点から見るその意義
アサーション(Assertion)とは、相手も自分も大切にする自己表現のこと。1960年から1970年代にかけて、自己主張の技法として確立されました。アサーションの起源は、アメリカの臨床心理学者たちが、対人関係において自己主張ができない人々のために開発したコミュニケーションスキルにさかのぼります。
日本では、1980年以降に広まり、教育、産業、医療分野などさまざまな領域で応用されています。
アサーションのビジネスシーンでの重要性
ビジネスでは、多様な人材が活躍できることが重要です。そのためには、誰もが他人の価値観や意見を受け入れ、自分の意見を言える組織づくりが必要となります。
「上司やチームメンバーに遠慮して意見交換ができない」、「本音が言えなくて他人に仕事を任せられない」、といったストレスを抱えていては、個人の能力が最大限に発揮できません。
円滑な組織運営や企業の成長において、ストレスなく働ける職場環境づくりには、アサーションが欠かせないといえます。
アサーショントレーニングの方法~職場での実践に向けて
アサーショントレーニングとは、相手も自分も双方の価値観を大切にしながら、意見を表現するトレーニングです。トレーニングでは、素直に自分の意見を発言しながら、お互いを尊重することを心がけます。
ステップバイステップで学ぶアサーショントレーニング
アサーショントレーニングの1つに「DESC法」があります。合意が必要な状況や場面に効果があり、4つのステップで構成。自分の考えを的確に伝える方法として活用できるでしょう。
D:描写する(Describe)状況を客観的に描写します。
E:表現する(Express)状況に対して、自分が感じていることを表現します。
S:提案する(Specify)相手に望む行動を、具体的かつ現実的に提案します。
C:選択する(Choose)提案が実行された時、されなかった時の結果を想像し、それに対してどう行動するか、具体的な選択肢を示します。
職場でのロールプレイ実践に基づいたアサーションの練習
アサーションを練習するのに適しているのは、ロールプレイです。ロールプレイとは、特定の役割やシナリオを設定し、実際の状況を模擬的に演じる練習方法。自己表現するのが難しいと感じる相手や状況を想定して、アサーションの手法を用いて、模擬体験します。
相手役を立てて、上司に対して業務負担を軽減するように依頼する場面を想定して話してみる、他者からの批判的なフィードバックを受けた際に、自分の視点や意見を主張する、といった具合です。
アサーションとアサーティブ~効果的なコミュニケーションスタイルの理解と使い分け
アサーションは、コミュニケーションスキルの1つとお伝えしてきました。一方で、方法や技術といったテクニックで終わらせるものではありません。効果的に活用することで、良好な人間関係が構築でき、対人ストレスも軽減するでしょう。
アサーションとアサーティブの違いを知る
「アサーション」と「アサーティブ」は密接に関連していますが、微妙に異なる概念です。アサーションは、自己主張や意見表明の行為そのものを指します。
アサーティブ(Assertive)は、その行為を特徴づける形容詞。他者の権利や感情を尊重しつつ、自分の意見や感情を率直かつ適切に表現するコミュニケーションスタイルや態度を指します。
アサーティブなコミュニケーションのメリット
アサーティブなコミュニケーションは、自己表現と他者尊重をバランスよく実現することで、健全な人間関係を築くことができます。
意見や感情を抑制することなく相手に伝えることで、内面的なストレスを軽減し、自己肯定感を向上させます。また、誤解や対立を未然に防ぐことで、職場や個人の生活環境において、円滑で健全なコミュニケーションを促進するでしょう。
アサーションの実践例~成功事例から学ぶ効果的な応用方法
言葉としてアサーションを理解できたとしても、実際に活用するのはなかなか難しいものですよね。ここでは実際に、職場で効果的にアサーションを取り入れて成功した例を紹介しましょう。また、職場で想定されるシチュエーションでの使い方も説明します。
職場でのアサーション成功事例
会議で、あるメンバーが自分の意見が十分に尊重されていないと感じたケースの場合。会議後にリーダーに対し、冷静に自分の意見も聞いてほしいと伝えたところ、リーダーは会議の進行方法を見直し、結果、チーム全体のコミュニケーションが改善し、より協力的な雰囲気になりました。
別のケースでは、プロジェクトの進め方について同僚と意見が対立した際、一方の社員が自分の意見を素直に伝え、同僚の意見を尊重。2人は共通点を見つけ、協力して最適な解決策を見つけることができました。これにより、プロジェクトはスムーズに進行し、両者の関係もより強化された、という事例もあります。
アサーションの応用テクニック~実際のシチュエーションでの使い方
DESC法を応用した、具体的なビジネスシーンでの使い方を見てみましょう。例えば、上司に頼まれた仕事の納期が遅れそうになった場合。
・D:描写する 仕事の納期が間に合わないことを伝える。
・E:説明する やる気はあるがこのままでは、他の仕事にも迷惑が掛かってしまうことを素直に説明する。
・S:提案する 自分ができそうなスケジュールや、業務の分担を提案する。
・C:選択する 提案したスケジュールであれば必ずできるし、スケジュール延長が無理であれば、業務分担することで、仕事自体は進むことを伝える。
アサーションのメリットとデメリット
アサーションは、自分も他人も尊重しながら自己主張する表現なので、デメリットは無いように思われます。一方で、アサーションに慣れていない人にとっては、うまく伝えられないことで、不満に思ったりストレスを感じることも…。何事にもバランスが重要ですね。
アサーションのメリット自己表現と他者尊重のバランス
アサーションのメリットとしては、健全な人間関係を築く点が挙げられます。自分の意見や感情を素直に伝える一方で、相手の意見や感情も尊重するため、対立を避け、効果的なコミュニケーションが可能になりますね。このバランスにより、信頼関係が強化され、協力的な職場環境や人間関係が促進されます。
アサーションのデメリットとその克服方法
アサーションのデメリットとしては、誤解や対立を招くリスク、タイミングや状況を誤る危険性が考えられます。これを克服するには、相手の立場や状況を的確に理解し、柔軟で共感的な対応を心がけることが重要です。
最後に
相手も自分も大切に思いながら、気持ちを伝えるのは、意外と難しいですね。職場で取り入れにくい場合は、身近な友人や家族に使うことから始めてみるといいかもしれません。
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