「四書五経」とは?
「四書五経(ししょごきょう)」とは、中国の代表的な古典の総称です。6世紀の隋の時代から、国を治める優秀な官吏登用のための制度「科挙試験」の中軸として活用されました。
後に日本へと伝来した「四書五経」は、江戸時代に発展した学びの場「寺子屋」を通じて庶民へと広く普及しました。その教えは現代のビジネスや日常生活でも役立つといわれ、書籍なども販売されています。
ししょ‐ごきょう
出典:小学館 デジタル大辞泉
四書と五経。儒教の基本書とされる。
四書五経の「四書」とは
「四書」は、儒教の根本教典である以下4つの総称です。
・「大学(だいがく)」
・「中庸(ちゅうよう)」
・「論語(ろんご)」
・「孟子(もうし)」
日本でも馴染みが深い書物といえるのが「論語」でしょう。「論語」には、世界三大聖人といわれる「孔子(こうし)」の言葉や行いがまとめられています。
また「大学」は主権者の倫理・道徳に関する三綱領・八条目を立て、儒教の学問を説いた書物です。銅像で知られる二之宮金次郎が読んでいる物は、この「大学」という説も。
「中庸」は、孔子の孫である「子思(しし)」がまとめたものといわれているようです。「孟子」は戦国時代の思想家である孟子の言行をその弟子が編纂したもので、幕末の時代を切り拓いた人物・吉田松陰(よしだしょういん)にも多大なる影響を与えたといわれています。
四書五経の「五経」とは
「五経」は、儒教の教典として尊重される以下5つの教典を指します。
・「易経(えききょう)」
・「詩経(しきょう)」
・「書経(しょきょう)」
・「礼記(らいき)」
・「春秋(しゅんじゅう)」
「易経」は、古くから占いなどに用いられてきた書物です。また、「詩経」は中国最古の詩集といわれています。
「書経」は古代中国の政論や政教についてまとめたもので、「礼記」は古礼に関する諸説を整理編集したものです。
「春秋」は中国の春秋時代の歴史書とされ、すでに記された記録に孔子が加筆をし、自らの思想を託したといわれています。
四書五経の名言
「四書五経」の教えは中国だけでなく、日本でも古くから親しまれてきました。現在の日常生活やビジネスでも役立つといわれています。
ここからは、「四書五経」に記された名言について紹介します。現代に通ずる古代中国の教えについて、みていきましょう。
「君子は独りを慎む」(大学)
「君子(くんし)」とは、人格者を表す言葉です。学識・人格共に優れているほか、高位や高官の地位にある人を意味します。
「大学」のこちらの名言は、君子と呼ばれる人であるほど、人目のないところでも自分の心を正し、行いを慎むと説いています。日常生活がしっかりしていなければ、ビジネスでも活躍できないという教えのひとつといえるでしょう。
「至誠(しせい)神の如し」(中庸)
「至誠(しせい)」とは、きわめて誠実な行いや心のことです。「至誠は神のような力をもつ」という教えは、誠実であることの重要性とともに、至誠である人は、神のようにふしぎな洞察力をもつことを説いています。
「至誠如神(しせいにょしん)」のように、四字熟語で表すこともある名言です。
「故きを温めて新しきを知る」(論語)
「ふるきをたずねてあたらしきをしる」と読みます。古典や伝統などの先人が培ってきた事柄の研究は、新しい意味や価値の再発見につながると説いています。四字熟語「温故知新(おんこちしん)」も同じ意味をもつ言葉です。
「天の時は地の利に如(し)かず、地の利は人の和に如かず」(孟子)
「天の時」は天から与えられた好機、「地の利」は立地条件の良さを表します。「人の和」は、組織の結束力を表す言葉です。
天から与えられた好機も立地条件のよさにはかなわず、立地条件も組織の結束力には及ばないことを意味します。人の和の重要性を言い表した名言です。
「二人心を同じうすれば、その利(するど)きこと金を断つ」(易経)
2人が心を合わせれば、硬い金属をも断ち切るほどの力を発揮することを意味する名言です。それほどにかたい友情や、友情によって結ばれた間柄は「断金(だんきん)」と呼ばれます。2人の関係を「断金の交わり」や「断金の契り」のように表すこともあるでしょう。
「思い邪(よこしま)なし」(詩経)
五経のひとつである「詩経」は、詩集であるとともに、古代中国の各国の状態を知ることができる貴重な史料といわれています。
「思い邪なし」は、心が素直で偽り飾ることがないことを表す一遍です。少しも邪悪な考えがないことを言い表しています。
「人を玩(もてあそ)べば徳を喪(うしな)い、物を玩べば志を喪う」(書経)
人をもてあそぶようなことをすれば徳を失い、物をもてあそぶようなことをすれば志を失ってしまう、という教えです。
得をしようと人を侮れば、結局は自分の徳を失ってしまいます。物に執着しすぎれば、人にとってもっとも重要なはずの志まで見失ってしまうことを説く言葉です。
「敖(おご)りは長ずべからず。欲は従(ほしいまま)にすべからず」(礼記)
傲慢になったり、欲望のままに突っ走ってはいけないという教えです。おごり高ぶる気持ちは増長させず、何事も程ほどが重要であることを説いています。
「禍福は門なし。唯(ただ)人の招(まね)く所なり」(春秋)
「禍福は門なし」は、幸不幸は決まった門があって入ってくるわけではないことを表しています。この世の幸福と不幸は、あくまでも当人が招くものであると説いた言葉です。
幸せを手にするためには普段の行いが重要であり、身に起こる不幸も人のせいにはできないと表しています。
「四書五経」の学びをビジネスや日常生活に活かしてみよう
「四書五経」は古代中国で生まれた古典の総称です。かつて中国の官吏の間で重要視された教えは、日本でも古くから親しまれてきました。
自らの行いを振り返り慎む「四書五経」の教えは、現代のビジネスや日常生活でできます。それぞれの教えの意味を知り、ぜひ新たな学びを得るきっかけにしてください。
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