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聴き慣れないカタカナ英語は、うっかりすると聞き間違いや勘違いすることがあります。この記事で取り上げる「インクルージョン」も、その意味をしっかりと理解していないと、下手すると「イリュージョン」と勘違いしかねませんね。
恥ずかし〜い思いをする前に、インクルージョンの基本的な意味から、実際の活動や取り組み、関連する概念について、しっかり理解しましょう。
インクルージョンとは?
説明に戸惑うカタカナ言葉が増える昨今、インクルージョンもそんな言葉の一つだと思います。インクルージョンの言葉の意味はもちろんのこと、どのように社会に影響を与えているかを説明します。
インクルージョンの基本
インクルージョン(inclusion)とは「包括」とか「包含」を意味する言葉です。特に、障害者やマイノリティ(少数、少数派)が、社会や学校で健常者と共に活動し、学習できるようにすることを指しています。この考え方は、すべての人々が平等に扱われ、社会の一員として尊重されることを目指す取り組みです。
インクルージョンが生まれた背景
インクルージョンは、障害者が社会から排除されたり隔離されたりする現実に対するアンチテーゼとして生まれました。類似の概念であるインテグレーション(統合教育:障害児教育で、障害児を普通の児童と一緒に教育すること)は、社会的な統合を目指していますが、障害者と健常者の間に格差が残ることが課題とされています。
それに対してインクルージョンは、すべての人が同じ権利を持ち、社会から排除されないことに重きをおいた活動です。
インクルージョンの実際の取り組み
ここでは、実際の場面においてインクルージョンがどのように実施されているかを見ていきます。教育や福祉、ビジネス分野などの事例を紹介することにます。
インクルージョン教育
まずは教育分野からです。インクルージョン教育は、障害の有無にかかわらず、すべての子どもたちが同じ教室で学び、共に成長する教育のことです。このアプローチにより、子どもたちは多様性を尊重し、偏見を取り除き他者と協力する力を醸成することを目指します。
福祉におけるインクルージョン
福祉の分野でのインクルージョンは、障害者が地域社会で自立して生活できるよう支援する取り組みを指します。これには、公共的な設備をはじめとするバリアフリーの環境整備や、障害者雇用の促進など必要不可欠の条件となります。
ビジネスにおけるインクルージョン
企業においても、インクルージョンは重要なテーマです。多様なバックグラウンドを持つ人材を受け入れ、彼らが活躍できる環境を整えることで、組織の創造性や競争力が向上します。特に、心理的安全性を確保することが、社員が自由に意見を出し合い、イノベーションを生むために重要だとされています。
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とは?
ここでは、インクルージョンと密接に関連するダイバーシティ&インクルージョン(D&I)について説明します。
ダイバーシティとは?
すでに認知が広まったダイバーシティという言葉は、「多様性」という意味です。性別、年齢、国籍、障害、個人のライフスタイルや価値観など、さまざまな違いを尊重し、受け入れることを指します。
D&Iの重要性
日本で「多様化の時代」といわれるようになって数十年が経ちます。やっと世の中に浸透してきた感じがする一方で、まだまだ偏見が色濃く残っていることも実感します。
さらなる「多様化の時代」への推進を図るうえで、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)が推進されています。D&Iは、多様性を尊重しつつ、すべての人々が平等に機会を得られる環境を作ることを目指します。これにより、企業は多様な視点やアイデアを活かし、より革新的で競争力のある組織を作ることができます。
D&Iの具体的な取り組み
具体的な取り組みとしては、企業や各種団体における採用や昇進において、公平性の確保、ダイバーシティトレーニングの実施、柔軟な働き方の推進などが挙げられます。こうした取り組みによって、社員一人ひとりが持つ多様な才能や能力を最大限に引き出すことを目指しています。
幾つかの分野のインクルージョンへの取り組みを紹介してきました。ここで、インクルージョンの概念を社会全体に広げ、大きな視野での取り組みや活動を見てみることにします。
ソーシャルインクルージョンとは?
今やSNSの普及で、誰もが知るソーシャルという外来語。社会的なとか、社交的と訳されることはご存じでしょうか? 「個」ではなく「公」という捉え方もできると思います。
ソーシャルインクルージョンとは、障害者を含むすべての人々が社会から排除されず「共に生きる」ことを目指す考え方です。これにより、社会全体がより包摂的で、公平なものとなることを目指します。
ソーシャルインクルージョンの実例
では、ソーシャルインクルージョンの具体例を見てみましょう。
分かりやすい例ですと、バリアフリーの公共施設や交通機関の整備、障害者の就労支援、インクルーシブデザインの導入などが挙げられます。こうした取り組みこそが、すべての人々が社会の一員として尊重される環境づくりにつながるのだと思います。
インクルージョンの課題と展望
ここまで、さまざまな視点からインクルージョンへの取り組みや活動を紹介してきました。しかし、インクルージョンが目指す環境への道のりは、いまだ遠い感じもします。今後、実現に向けた課題と、それを克服するための展望について少し触れておきます。
インクルージョンの課題
やはり、今後インクルージョンを推進する上で大きな課題となるのが、社会の偏見や差別、物理的なバリアなどが挙げられます。また、制度や政策の整備が不十分なことも解決しなければならない課題です。そのためにも、私たち一人一人がインクルージョンへの理解を深める必要があるでしょう。
インクルージョンの展望
先述したように、インクルージョンを実現するためには、教育や啓発活動の強化、バリアフリー環境の整備、法的枠組みの整備が必要不可欠です。また、企業や各種団体、地域コミュニティが積極的にインクルージョンを推進することで、より包摂的な社会を実現することができます。そのためにも社会全体の理解と意識を高めることが、何よりも大切なことですね。
最後に
インクルージョンは、すべての人々が尊重され、平等に機会を得られる社会を目指す重要な概念です。私たち一人一人が、その意味を深く理解し、日常生活や仕事の中で実践することで、より包摂的な社会が実現できると思います。
今後もインクルージョンの推進に向けて、啓発活動、制度の整備などに関われる活動に積極的に関わっていきたいものです。そのことが「誰もが安心して暮らせる社会づくり」へと近づくことだと思います。
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