人間って、偏った見方や考え方をすることが、意外と多いと思いませんか? 厄介なことに、この偏った見方や考え方は、日々の生活や仕事、人間関係において、しばしばトラブルや失敗を引き起こすことがあります。どうやら、私たち人間は無意識のうちに自分に都合の良い情報だけを集め信じる傾向があるようですね。このことを心理学では「確証バイアス」といいます。
この記事では「確証バイアス」とは何か? を理解したうえで対処法についても掘り下げていきます。
確証バイアスとは
あなたが、疑うこと無く深く信じ込んでいることは何でしょうか? 「彼の私への愛情です」と答える人がいらっしゃるかもしれませんね。でも、その答えをあなたは、どのようにして導き出されたのでしょう。もしかすると「確証バイアス」によるものかもしれませんよ。
わかりやすく説明
確証バイアスというのは、自分が信じていること、期待や予想しているとおりの情報は受け入れるのに、それに反する情報は軽視したり無視する心理的な傾向をいいます。日常生活や職場などでは、しばしば「確証バイアス」に陥ってしまいます。
次のようなことはないでしょうか? 職場で「有能」と評価の高い先輩社員のA子さん(あなたも憧れている)。彼女の有能さを物語るエピソードや噂は絶え間なく耳に入ってきます。ある日、レストルームでA子さんを非難する話を聞いた時、さて、あなたはどう思うでしょう。きっと「A子さんの活躍を妬んでいるのね…」と思うのではないでしょうか?
確証バイアスの例
ここでは「確証バイアス」を、ありそうな具体例に落とし込んで説明しますね。
あなたが、新しいダイエット法を試してみたいとします。早々に、そのダイエット法の効果のほどをインターネットで調べてみることに…。すると、なんとGoogle検索結果の中に、あなたの推すタレントが、SNSの公式アカウントで「この方法はダイエットに効果抜群!」とコメントしているのを見つけます。さらに、そのタレントのファンを中心に肯定的な評価が次々と見つかり、もはや疑う余地はないとばかりに「やっぱりこの方法が正しい!」と思い込む…。
たとえネット検索で、失敗例や批判的な意見がリストアップされたとしても気に留めずスルーしてしまいます。
こんなこと「よくあるわ」って思いませんでしたか…?
心理学でも研究されている「確証バイアス」
耳慣れない「確証バイアス」は心理学の用語です。専門的に詳しくは説明しませんが、概要は掴んでいただきたいので簡単にまとめておきます。確証バイアスは「認知バイアス」の一つ。
認知バイアスというのは、人が情報を処理するときに生じる偏りや誤りを指します。私たちの脳は、膨大な情報を効率的に処理しなければなりません。そのために「簡略」したり「省略」しようとします。しかし、そのことが誤った判断や偏見を生む原因となることがあります。そうした認知バイアスの作用によって「確証バイアス」も引き起こされるのです。
どういうときに「確証バイアス」は見られる?
偏った見方や考え方を引き起こしてしまう「確証バイアス」は、可能な限り避けた方がよさそうですよね。そのためには、どういうときに「確証バイアス」が起こり得るのかを認識しておきたいところ。そこで、日常生活における確証バイアスの例を幾つか考えてみることにしましょう。
日常生活での確証バイアスの例
健康な多くのお年寄りには、長年続けている健康法が一つや二つはあるものです。そうしたお年寄りは「その方法が健康に良い」と信じきっているわけです。「どうして続けているんですか?」と聞くと、おそらく、その健康法の良さを自慢げにお話しするでしょうね。
始めたきっかけは、それなりに理由はあるでしょう。古い健康法が、実は健康にさほど効果がないと知っても、多分中止することはないでしょう。つまり、自分が信じている情報以外は無視するんですね。
気を付けなければならないのが、インターネットが深く浸透してしまった今の社会です。ネット社会においては、確証バイアスに陥りやすい環境が形成されています。Google検索エンジンのアルゴリズムなどは、利用者の興味に基づいた情報を提供する仕組みになっています。
自分の求める情報ばかりが目に入りやすくなります。例えば、ダイエットに効果が期待できるサプリメントを検索していると、その商品の広告や関連情報が頻繁に表示されるようになります。サプリメントの健康被害などの情報は、見つけにくくなります。
恋愛面での確証バイアスの例
昔から恋は盲目といいます。「あばたもえくぼ」なんて諺もありますよね。
恋愛においての確証バイアスは要注意です。あなたが彼のことを「優しい人!」と信じていると、彼の行動の優しい部分だけを見るようになっているかもしれません。たとえば、デート当日、彼から急にキャンセルの連絡が入ってきたとします。理由は「大切なクライアントとの会食が入ったから」さてさて、あなたはどのように対応するのでしょうか? 「忙しいのね。仕事なんだから仕方がないか…」などとポジティブに解釈し、他のネガティブな側面は考えもしないのでは…?
他にも、男女間において確証バイアスは恋のテクニックとして利用される場合もあるようです。ますます要注意ですね。
あなたのパートナーが「あなたを大切にしている」と信じている場合、パートナーの優しさや気遣いだけが強く印象に残ります。たまに、無関心な行動や粗野なそぶりが見られたとしても見過ごすことがありますね。具体的なシチュエーションでいうと、彼が頻繁にメッセージを送ってくれると「彼は私を本当に大切にしてくれている」と感じます。それが、たまにメッセージが遅れたりすると「きっと忙しいんだわ」と思い込んだりする… なんてことないですか? これって恋の駆け引きかもですよ。
ビジネスでの確証バイアスの例
仕事において「確証バイアス」に陥ると、少々厄介なことになりかねません。
具体例を考えてみます。あるプロジェクトを推進するために、自分のアイデアが優れていると、強く信じているとします。そうなると、自分の考えが優れていることを裏付けるデータを収集するでしょう。そのデータを用いて、上司や同僚らから賛成意見を得るために説得を試みるでしょう。ですが、慎重論や異なる意見に対しては「反対勢力」とみなして、その意見を抑え込んだり、不利なデータは無視する行動を取ったりします。そうした行動は、チーム全体の意思決定が偏り、結果的にミスを犯すリスクが高まります。
職場では、多くの人と一緒に仕事をします。確証バイアスは、職場の人間関係にも影響を及ぼします。過去の仕事の結果や成果が確証バイアスを生み出している場合もありますので、注意をしたいものですね。
「確証バイアス」の直し方
ここまでの記事を読む限り「確証バイアス」は“災いの種”のような感じですね。「芽」が出てこないうちに、早めに対処したほうがよさそうです。ここでは「確証バイアス」が起こる背景や理由を知り、抑止する手段や対策法をおさえていただきたいと思います。
なぜ起こる?
確証バイアスが起こる背景には、2つの大きな理由があります。まず、1つ目が「自己肯定感」を保ちたいという心理的な欲求です。2つ目が、情報過多の現代社会で効率的に情報を処理するための無意識の脳作用です。
どうやら、私たちは「自分こそが正しい!」と思い、情報のるつぼから、迅速に「必要な情報だけ!」を見つけたいと願っている生き物のようですね。
起こさないための対策
さてさて、ここまできますと「確証バイアス」を克服するための“特効薬”が欲しくなりますよね。
特効薬はないにしても、確証バイアスを抑制できるヒントはあります。それは、記事の中でも述べておりますが「聞く耳を持つ」ということです。耳触りのいい言葉だけを受け入れるのではなく、意識的に反対意見や異なる視点を探すことが大切ということになります。心得となる以下のポイントを参考にしてください。
1.まず、自分に確証バイアスが存在することを認識してください。
2.意識的に反対意見や異なる視点を持つ人と対話するように心掛けてみては…?
3.情報を鵜呑みにせずに、常に疑問を持って、情報源を確認するように…。
4.自分の信念と異なる情報にも関心を持つ努力を…(かなり難しいでしょうが)。
ぜひ、意識してみてくださいね。
最後に
確証バイアスは、私たちの意思決定や判断に大きな影響を与える心理的な傾向であるだけに、そのことを理解して上手に付き合っていく必要があるようですね。特に、仕事やプライベートでの人間関係において、このバイアスを意識できるか否かは人生を左右するといっても大袈裟ではないでしょう。多様性の時代と呼ばれている現代、偏った見方や考えはあらためバランスの取れた考えや判断ができるようになりたいものです。
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