「フキハラ」という言葉を聞いたことがありますか? 最近では、さまざまなハラスメントが問題視されていますので、聞いたことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ですが、「フキハラってどういうもの?」や、「もしかして私にも当てはまる?」などの疑問や不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんね。
そこで、この記事では、フキハラの概要や、職場で問題になった事例や対処法、パワハラとの関連性などを解説していきます。
フキハラとは?
フキハラとは、「不機嫌ハラスメント」の略称のこと。「不機嫌ハラスメント」という言葉は、まだ馴染みがないという方もいらっしゃるかもしれませんね。
不機嫌ハラスメントは、不機嫌を表に出すことで周りを不快にさせることを指します。家庭でも職場でも使われるようになってきているようですね。
「夫や妻のフキハラに困っている」や、「上司のフキハラがひどくて悩んでいる」などのように、さまざまな場面でフキハラという言葉は耳にする機会があります。中には、「フキハラをした人を訴えたい」など、深刻なトラブルになってしまうケースもあるようですね。
フキハラのパターン
ここからは、フキハラのよくあるパターンを見ていきましょう。フキハラは、さまざまな種類がありますが、不機嫌を表に出す態度として、次のようなものが挙げられます。
・舌打ち
・大きな物音を立てる
・ため息
・そっけない言動
・八つ当たり
・睨む
などがよくあるパターンですよ。もちろん、これ以外にもさまざまなパターンがあります。
「身の回りに思い当たる人がいる」という方や、「自分もフキハラをしているかも」という方もいらっしゃるかもしれませんね。
もちろん、感じ方は人によって異なるので、一概に言うのは難しいでしょう。ですが、一般的に、不快な感情をあからさまに態度に出すのは、フキハラと受け取られる可能性があります。
感情は周りに伝染しやすいと言われていますよね。実際に、不機嫌な人が一人いるだけで、雰囲気がギスギスしてしまうということを感じたことがある方も、多いのではないでしょうか?
フキハラが職場での問題になった事例
もちろん、誰しも気分の浮き沈みは多少ありますよね。また、最近では何でもハラスメントという名前をつけられて、息苦しさを感じるという人もいるかもしれません。
ですが、フキハラは、だんだんとエスカレートして大きな問題に発展するケースもあるので、注意が必要です。 ここからは、フキハラが原因で起こった職場でのトラブル事例をみていきましょう。
ある会社での事例です。この会社には、Nさんという30代後半の女性社員がいました。Nさんは仕事に関連する資格をいくつも持っていて、仕事にも意欲的。
こう聞くと、とても優秀な人材に見えるかもしれませんね。ですが、現場でNさんと一緒に仕事をした人なら、すぐに苦笑いになるような人柄だったと言います。
というのも、Nさんは、いわゆる「フキハラ」がひどく、職場内で自分より立場が下の社員にだけ、不機嫌なオーラをまき散らすことがよくありました。Nさんは、気持ちに余裕がなくなると、舌打ちやため息、わざと大きな物音をたてるなどを繰り返していたようです。
さらには、かなり年下の後輩に対して、人目のつかないお手洗いや休憩所などに呼び出しては、「態度や服装が気に食わない」など、いろいろとお説教をしていたNさん。
上司の耳にもNさんに関する噂や相談は入ってきていたものの、仕事熱心なNさんに対して、そこまで強く注意ができませんでした。
ですが、ある日そうも言っていられない事態に。Nさんが、内線電話になかなかでない他部署に怒り、ポールペンを乱暴に自分のデスクに強く投げつけたのがきっかけでした。跳ね返ったペンが近くにいた同僚の顔面に直撃。
幸い大きな怪我はなかったものの、これを見ていた周囲が、「病院に言った方がいいよ!」と大騒ぎになったといいます。
平謝りするNさんでしたが、もう手遅れでした。常日頃からNさんのフキハラのターゲットにされていた人たちが、黙っているはずもありません。この話がすぐに上司や本社の耳に入り、Nさんは職場内で暴力的な行為をしたことや、備品を乱暴に扱ったとして、懲戒処分になってしまいました。
後に、Nさんは人事部との面談で、こんな思いを打ち明けていたと言います。
「電話に全く出ようとしない同僚や、何度も同じ質問をしてくる後輩などに、日頃いらいらしていました。自分はプライベートまで勉強してがんばっているのに…」
Nさんにも、いろいろな事情があったのでしょう。一概にNさんだけを悪者扱いすることは、本来の問題解決にはならないかもしれません。ですが、職場で不機嫌をあからさまに態度に出すことが、どんな危険性をもっているかがよく分かる事例でしょう。
パワハラの3要素
フキハラは、単なる気分の浮き沈みではすまされないことも。不機嫌な態度がエスカレートした結果、前述のようなトラブルや、パワハラに発展することもあり得ます。
なお、厚生労働省の定義では、パワハラは、次の3つの要素を全て満たすものとされていますよ。
・優越的な関係を背景としている
・仕事上必要かつ相当な範囲を超えている
・働く人の仕事環境を害している
ちなみに、「優越的な関係」は、必ずしも仕事上の地位に限られません。例えば、後輩や部下であっても、仕事の経験や知識が豊富で、「その人に協力してもらわなければ仕事が成り立たない」ということもありますよね。
場合によっては、社歴的には後輩でも、先輩よりその部署の仕事をよく分かっているということもあるでしょう。こういった場合も、優越的な関係になることがありますよ。
参考:厚生労働省ホームページ「職場におけるハラスメントの防止のために」
フキハラへの対処法
職場でフキハラをされた時に、どのように対応したら良いのでしょうか? もちろん、単にスルーするというのも手ですが、繰り返しフキハラする人がいる場合、何かしら職場で手を打った方が良いことも。そこで、ここからは、フキハラへの対処法をみていきましょう。
まずはフキハラをしている人よりも立場が上の人に、現状を報告して相談するのがおすすめです。
このとき、人によっては、「こんなひどい態度を取られた!」と感情的になってしまうかもしれませんね。また、分かってもらいたいあまりに、話が誇張されてしまうことも。
ですが、そうなると「大げさだな」と、話を真剣に聞いてもらえないこともあり得ます。ですので、相談する際は、なるべく冷静に、事実と解釈を分けて話した方が、伝わりやすいでしょう。
最後に
この記事では、フキハラの概要や、職場で問題になった事例や対処法、パワハラになる場合を解説しました。 もし職場で思い当たる人がいて困っているという方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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塚原美彩(つかはらみさ) 塚原社会保険労務士事務所代表
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。 2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサルの傍ら、ポジティブ心理学をベースとした研修講師としても活動中。 HP:塚原社会保険労務士事務所 ライター所属:京都メディアライン