「一病息災」とは
お見舞いなどで使われることがある「一病息災」。病気に関連する四字熟語だと知っているけれど、正しい意味を知らない人もいるでしょう。「一病息災」とは、病気を持っているほうが長生きするという意味を表します。なぜ病気があるほうが長生きするのか、意味を探っていきましょう。
まずは、辞書に掲載されている意味と読み方を紹介します。
辞書によると
【一病息災】
読み方:いちびょうそくさい
ちょっとした病気のある人のほうがからだに注意するので、健康な人よりもかえって長生きするということ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「一病息災」の読み方は「いちびょうそくさい」。病気にかかってしまっても、体に注意しながら生きることになるため、長生きしやすいということを表します。
「息災」とは
「息災」について、少し掘り下げてみましょう。日常的に使う言葉ではありませんが、神社の祈願などで見聞きしたことがあるのではないでしょうか?
息災とは、病気をしないで元気なことや、仏の力で災難を防ぎ止めることを意味します。仏教に関連する言葉で、平安時代の書物に登場することから、約一千年にわたって使われ続けていることがわかっています。
「一病息災」の意味
「一病息災」が表すのは、病にかかることで、生活習慣を改めたり、体にかかる負担に気づいたりする機会が生まれるため、それが長生きにつながるということ。
たとえば、腹痛でつらい思いをしたら、食べ物に気を使うようになりますよね。消化のよいものをよく噛んで食べる、規則的に食事を摂るなど、症状がぶり返さないよう最大限気を配るのではないでしょうか?
「一病息災」が示すのは、まさにそのような意味といえます。
「一病息災」と「無病息災」
「一病息災」と似た言葉に「無病息災」があります。同じ意味を表すと思われがちですが、実はそうではありません。ここからは「無病息災」について見ていきましょう。
「無病息災」とは
【無病息災】
読み方:むびょうそくさい
病気をしないで健康であること。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「無病」とは、病がない、つまり病気をしないということ。病気をすることなく、元気に暮らすことを意味します。
二つの言葉の違いは?
同じ「息災」を使っている四字熟語ですが、二つの言葉が意味することはまったく異なりますよね。病気があることで養生するため、長生きにつながることを意味する「一病息災」と、病気をしないことを表す「無病息災」は、前提となる条件が違います。使うシーンも異なりますので、違いを把握しておきたいですね。
「一病息災」に似た言葉
ここからは、「一病息災」に似た言葉を見ていきましょう。「息災延命」「無事息災」を紹介します。
「息災延命」
災難を防ぎ、長生きすることを「息災延命」といいます。「延命」とは、寿命を延ばすことの意。「そくさいえんめい」と読みます。「延命息災」と書くこともあります。
「無事息災」
「無事息災」は、病気や災いなどの不安や心配がなく、穏やかに元気で暮らすことや、そのさまを表す四字熟語。「ぶじそくさい」と読みます。
「一病息災」の使い方
「一病息災」の使い方を見ていきましょう。まずは、この言葉を使うシチュエーションを紹介します。
シチュエーション
「一病息災」は、病気を持っていることを表すため、お見舞いや励ましの際に使われることが多いでしょう。また、戒めや注意を促す言葉として使うこともありそうですね。
「一病息災」は、自分に対してはもちろん、人に対しても使える言葉です。病気が関連する言葉ですので、相手や状況をしっかりと見極めて用いるようにしてください。
使い方例
「一病息災」の使い方を例文で紹介します。
《お見舞いや励ましで使う場合》
・急にご入院されたと伺い、驚きましたが大したことがないとのこと。安心いたしました。一病息災と申しますので、これを機に健康にご留意くださいね。
・病気は軽いと聞いたけど、気持ちがしんどいと思います。一病息災というし、あまり思い詰めないようにしてください。
《自戒で使う場合》
・生活習慣病を発症してしまった。来週詳しい検査をするけれど、一病息災と考えて、今後は養生しよう。
・健康診断で肝臓の数値がよくないといわれました。一病息災という言葉もあるし、悲観的になり過ぎないようにしています。
《注意を促す場合》
・一病息災とはいうけれど、病気はないに越したことがないのだから、しっかり休まないとダメだよ。
・彼女は病気がわかったのに、一病息災だからと生活習慣を変えようとしない。悲観しないのもよくない、命を縮めることになるよと忠告した。
会話例
ここからは、「一病息災」を会話で使うパターンを見ていきましょう。夫婦がリビングで話しているとイメージしてください。
夫「この間の健康診断で、胃と肝臓の精密検査を指示されたよ…」
妻「それは大変なことだよ。病院の予約はしたの?」
夫「二週間後に受診するよ。自覚症状はないんだけどな」
妻「肝臓は症状が出たら進んでいることが多いというし、今のうちに検査をするほうがいいわ。なんの病気かはわからないけど、一病息災というし、これを機にもっと健康に意識を向けてもいいんじゃないかしら。あなたは無理ばかりするから…」
夫「そうだな。もう若いとはいえない年齢だし、今日から十分に気をつけるよ」
仕事が忙しい、ストレスがあるなどすると、生活習慣は乱れがち。それが続くと、健康診断で指摘を受けたり、軽い自覚症状が出始めたりするなどがあるかもしれません。たとえ自覚症状がなくても、健康診断で指摘を受けたら、きちんと受診して状態を確かめるほうがいいですね。
会話例が示すのは、まさにそのようなこと。自分の体としっかり向き合い、大きな病気につながらないよう、注意したいですね。
最後に
「一病息災」について、意味や言葉の使い方、「無病息災」との違いなどをまとめました。「一病息災」は、病気になったとしても、健康に意識を向けることで長生きにつながることを表す言葉。お見舞いや励まし、自戒などの意味合いで使われています。病気をすると、あらためて体に向き合うことになりますから、それをいい機会と捉えて養生しましょう。
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