「痛し痒し」の意味とは?
「痛し痒し」という言葉があることを知っていますか? 漢字を見て、「痛いことや痒いことを表すのかな?」と思った人もいるでしょう。この言葉が意味するのは、物事の結果に関連すること。どのような意味があるのか、一緒に見ていきましょう。また、言葉の使い方や類語も紹介しますので、ぜひチェックしてください。
まずは「痛し痒し」の意味を紹介します。
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痛(いた)し痒(かゆ)し
読み方:いたしかゆし
《かけば痛いし、かかないとかゆい意から》二つの方法のどちらをとってもぐあいが悪く、どうしたらよいか迷う。また、ぐあいのよい面もあれば悪い面もあって、困る。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
虫に刺されたところをかくと痛いが、かかないと痒くてたまらないことってありますよね。どちらを選んでもよくないわけですが、その意味が転じて、「どちらを選んでも都合が悪く、選びかねる」の意で使われています。
何かしらの選択をする際に、片方を選んだらもう片方の都合が悪くなり、どちらを選べばよいか判断できないという場合に、たとえとして用いられる言葉です。また、よい面もあれば悪い面もあるという意味で使うこともあります。
「痛し痒し」の使い方
「痛し痒し」の使い方を見ていきましょう。使い方の特徴や例文を紹介しますので、参考にしてくださいね。
使い方の特徴
「痛し痒し」は、どちらを選択しても自分にとって都合の悪い結果になり、決められずに迷うことを表す際や、都合の良いことと悪いことのどちらもあり判断に迷うさまを表す場合に用います。「状態」「状況」に対して使う言葉であり、「人」「物」の表現には使いません。
言い回しとしては、「痛し痒しだ」「痛し痒しです」「痛し痒しで困る」「痛し痒しの〜」のように使うことが多いでしょう。
例文を紹介
「痛し痒し」の例文を見ていきましょう。
《例文》
・痛し痒しの選択になるが、他に選択肢はない。どちらかで進めるしかないが判断できない
・このまま推し進めても、撤退しても、どちらにしろリスクが大きい。痛し痒しとはこのことだ
例文は、どちらを選んでも都合が悪く、判断に迷うさまを表しています。ビジネスシーンにおいては、このようなシチュエーションはよくあることと言えるでしょう。
《例文》
・彼の企画はとても斬新だが、生じるリスクも大きい。痛し痒しで判断に苦しみます
・新築マンションの購入で新しい家に住めるのはうれしいけれど、住宅ローンを背負うことになるのが不安。痛し痒しで決めきれない
こちらの例文は、それを選ぶと都合のよいことが生じるが、都合の悪いこともあり判断に迷うさまを表しています。自分にとってすべて都合がいいということはなく、何かの選択には、必ずよい面と悪い面があるということを表す言葉とも言えるでしょう。
「痛し痒し」の類語4選
「痛し痒し」の類語を見ていきましょう。「痛し痒し」を言い換えたいときの参考にしてください。4つの言葉を紹介します。
「八方塞がり」
「八方塞がり」とは、どの方面にも差し障りがあり、手の打ちようがないことを表します。読み方は「はっぽうふさがり」。進むべき道がわからず、活路が見いだせない状況を表す際にたとえとして用いられています。「八方塞がりの状態」「八方塞がりだ」のように使うことが多いでしょう。
《例文》企画は行き詰まり、売り上げは伸びないという八方塞がりの状態に陥ってしまった
「ジレンマ」
二つの相反する事柄の板挟みになることを表すカタカナ語が「ジレンマ」です。選ぶべき道は二つあるけれど、どちらも望ましくない結果をもたらすという状態を意味する言葉です。「ジレンマに陥る」「ジレンマを抱える」のように使われています。
《例文》長年の親友である彼のことを好きになってしまった。告白してフラれたら親友を失うことになる。でも、親友でいるなら恋愛感情にフタをすることになるという、このジレンマに悩んでいる
「あちらを立てればこちらが立たぬ」
一方によいようにすれば他方に悪く、両方によいことが同時にできないということを表す「あちらを立てればこちらが立たぬ」。どちらかを選択しなければならないが、どちらを選んでも都合が悪いことが生じ、選ぶのが難しいという状況を表す際に用いられています。
《例文》同僚二人の意見が対立したので仲裁に入ったが、あちらを立てればこちらが立たぬの状態で疲れてしまった
「帯に短し襷に長し」
中途半端で役に立たないことを表す「帯に短し襷に長し」。「おびにみじかしたすきにながし」と読みます。ちょうどよい選択肢がなく、条件に合うものが見つからない場合に用いることが多いでしょう。
《例文》歓送迎会の会場探しをしているのだけど、ちょうどいい広さのお店は駅から遠くて、駅に近いお店は場所が狭くて入れない。帯に短し襷に長しとはこのことだね。
「痛」を使った慣用句3選
「痛し痒し」にもある「痛」を使った慣用句は他にもあります。それぞれの意味をぜひチェックしてください。
「他人の疝気を頭痛に病む」
自分に関係のない物事で、心配をすることのたとえとして使われている「他人の疝気を頭痛に病む」。「たにんのせんきをずつうにやむ」と読みます。「疝気」とは、下腹部などが腫れて痛む病気の総称で、漢方の世界で使われている言葉です。
「痛棒を食らわす」
「痛棒を食らわす」とは、手ひどく叱ってこらしめることの意。「つうぼうをくらわす」と読みます。「痛棒」とは、痛烈な打撃や、手ひどい叱責のこと。「悪徳商法に通棒を食らわす」のように使われている言葉です。
「痛くもない腹を探られる」
やましいことは何もしていないのに、疑いをかけられてしまうことを表すのが「痛くもない腹を探られる」です。読み方は「いたくもないはらをさぐられる」。腹痛を起こしているわけではないのに、痛いところはどこかと探られるという意味が転じた言葉です。
最後に
「痛し痒し」について、意味や使い方、類語などをまとめました。「痛し痒し」と表現したくなる状況は、誰もが経験しているでしょう。特にビジネスシーンや人間関係は多いかもしれません。その状況で判断するのは大変に疲れますが、冷静になって考えることが大切です。一人で抱え込まず、誰かに相談するなどして、何とか乗り切りたいですね。
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