働いていると、イベントが中止になったり、企画がなくなってしまったりと、今までやっていたことが台無しになってしまった経験はありませんか? せっかく苦労してやったことが、無駄に終わってしまうと落ち込んでしまいますよね…。そんな状況で使われるのが「水泡に帰す」という言葉です。本記事では、「水泡に帰す」の意味や使い方、類語を解説します。
「水泡に帰す」
「水泡に帰す(すいほうにきす)」は、辞書によって「水泡に帰する」と表記されていることもありますが、意味は同じです。
努力のかいもなく全くむだに終わる。「これまでの苦労が―・する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
努力したことが、まるで水の泡のように儚く消えてしまうことを「水泡に帰す」と言います。せっかく努力をしたにも関わらず、思うような結果が得られず無駄になってしまったということですね。
そっくりな「水の泡」という表現も
「水泡に帰す」によく似た言葉に「水の泡」があります。会話の中ではこちらの方が馴染みがあるかもしれませんね。意味を見ていきましょう。
1 水面に浮かぶ泡。転じて、はかなく消えやすいもののたとえ。すいほう。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
2 努力・苦心がすべてむだになること。「苦労のかいもなく―となる」
こちらは、「水面に浮かぶ泡」から転じて、儚いもののたとえとしても使われます。2番目の意味が、「水泡に帰す」とほぼ同じですね。「せっかくの苦労も水の泡になったよ」というように使われるのが一般的です。
使い方を例文でチェック!
「水泡に帰す」は、これまで頑張ってきたことがすべて無駄に終わってしまうこと。このことから仕事や受験、スポーツなどさまざまな場面で使われます。主な例を3つみていきましょう。
1:悪天候のせいでイベントが中止になり、準備していた苦労が水泡に帰してしまった。
イベントのために何か月も前から準備していたことが、すっかり台無しになってしまったということですね。イベントの企画から、会場の確保、主催者との話し合いや備品の準備に至るまで、イベントを開催するにはたくさんの時間と労力がかかります。それが急遽中止になってしまうのは、関係者にとって大変残念なことですよね。
2:兄は、受験当日に高熱が出てしまい、試験が受けられなかった。「これまでの努力が水泡に帰してしまった」と嘆いている。
受験に向けて、頑張って勉強をしてきたにも関わらず、当日体調が悪くなってしまうのは災難なことですね。これまで頑張ってきた成果が出せなかったことを悔いる時に、例文のように、「努力が水泡に帰してしまった…」と表現することもあるでしょう。
3:「ここで挫けたら、今までの努力が水泡に帰してしまうよ」とリーダーは言った。
例文のように、誰かを励ます時にも「水泡に帰す」が使われることがあります。頑張っているにも関わらず、いつになっても成果が出ないと、落ち込んだり、もう辞めてしまおうかと考える人も出てくるでしょう。そんな相手に対して、「今までの努力が水の泡になってもいいの?」と声をかけて、思いとどまらせようとしているのがわかりますよね。
類語や言い換え表現は?
せっかくの努力が報われず、無駄に終わってしまうことを意味する言葉に、「棒に振る」「白紙に返す」「徒労に帰す」などがあります。言い換え表現としてチェックしてみてはいかがでしょうか?
1:棒に振る
「棒に振る」の意味は以下の通りです。
それまで積み重ねてきたものを無にしてしまう。「地位を―・る」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
それまでの努力や苦心した結果を、ゼロにしてしまうことを「棒に振る」と表現します。例えば、せっかく選挙に当選したにも関わらず汚職事件に関与し、すべてが台無しになったという場合にも、「棒に振る」という言葉が当てはまるでしょう。せっかく積み上げてきたものが無しになってしまうのは、もったいないですね。
(例文)
・兄は病気で、学生生活の1年間を棒に振った。
・スピーチで失言したことが原因で、部長の座を棒に振ってしまった。
2:白紙に返す
「白紙に返す」の意味は、以下の通りです。
それまでの経緯をなかったものとして、もとの状態に返す。白紙に戻す。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
今までやってきた仕事や作業などを、何もなかったものとして、元の状態に戻すことを「白紙に返す」と言います。「白紙に戻す」「白紙になる」などということもありますね。中には、会社の都合で、担当していた企画が白紙に返すことになってしまい、がっかりした… という経験がある方もいるのではないでしょうか?
(例文)
・今までの努力を白紙に返すことだけはしたくない、と先輩はいった。
・会社が倒産し、今まで積み上げてきたものが白紙に返してしまった。
3:徒労に帰す
「徒労に帰す(とろうにきす)」とは、「骨折ってきたことが、無駄に終わること」。「徒労」とはそもそも「無駄な苦労」のことを指すので、苦労してきたことや努力してきたことが、なんの結果も出ないまま終わってしまうことと言えますね。全てが徒労に帰してうなだれている様子が伝わってきます。
(例文)
・さんざん怒られながらやった仕事が、途中で打ち切りとなってしまい徒労に帰してしまった。
・せっかくの努力が徒労に帰して、社員はがっかりしていた。
最後に
「水泡に帰す」とは、「努力のかいもなく、まったくむだに終わること」。「努力が水泡に帰す」「苦労が水泡に帰す」などと表現します。頑張っていたことが白紙になってしまうのは残念なことですが、経験から得たスキルまでなくなったわけではありません。またチャンスが巡ってきた時に、実力を発揮できるといいですね。
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