働く私たちの「大人の処世術」。“毒”をエレガントに吐く方法とは?
一度は経験したことのある「そんな言い方しなくてもいいのに」「こんなとき、なんて返せば…?」と思う場面。言いにくいことをサラッと、そして効果的に相手に伝えられたら仕事もプライベートももっとうまくまわるはず。ちょっとした言い回しの工夫で、あなたの心の毒、上手に吐き出しましょう。
Oggi読者に聞きました!
あなたは、「言いづらいこと」を上手に伝える自信はありますか?
▲3分の2以上が「自信がない」!
「相手に伝えてこじれるより、自分の気持ちをのみ込んだほうが丸くおさまる」(36歳・卸売)など、自分の気持ちにふたをしてしまう人が多数。職場では「今後の関係を考えると本音を言えない」(27歳・IT)という人が多いよう。
プライベート編
仕事やプライベートで遭遇する、「こんなとき、なんて言えばいいの?」というシーンの数々。読者のみなさんから寄せられた悩みをもとに、大人の「モノの言い方」をズラリご紹介。今回は、プライベートでの言い換えポイントをご紹介。
“言い換えポイント”を教えていただいたのはこのお二人
1:何度も同じようなグチを繰り返す母。イヤだと伝えづらい…
「帰るたびに父や親戚のグチを聞かされてしんどい。吐き出す相手がいないんだろうけど、こっちも消耗します」(34歳・金融)
【言い換え前】
「もうそれ何回も聞いたよ」
↓
【言い換え後】
「今日はもう店じまいで~す」
ポイント!
「ユーモアを交えた言い方で明るくリアクションするのがおすすめ。たとえば『今日のグチの受付時間はお昼までです』など。突き放しすぎると関係が悪くなる場合もあるので、3回に1回は聞くなど、相手と自分の負担のバランスを見ながらつきあいましょう」(大野さん)
2:夫との家事分担に関して、「旦那さんに負担をかけてない?」と余計な心配をしてくる母がウザい
「心配してくれてるのはわかるけど、大人になってまで干渉されるのは勘弁。私の家庭のことなんだから放っておいて!」(27歳・建築)
【言い換え前】
「こっちのことは放っておいて」
↓
【言い換え後】
「負担はかけてるけど、時代は令和だから大丈夫!」
ポイント!
「親だからといって、ハイハイと従う必要はありません。『今はお母さんの時代と違うから!』とバシッと伝えてOK」(森さん)
「そもそも、家事分担の話をするから『旦那さんに負担が~』という話になる。小言を言われたくないなら情報を与えない、言わないのも手です」(大野さん)
3:友達の恋バナを聞くに、相手は完全なダメ男。忠告してあげたいけど…
「私の友人、元カレに未練があるらしいけど、『そいつはやめとけ』としか…。新たな出会いを探すほうがいいと思う!」(27歳・専門職)
【言い換え前】
「もっといい人がいるよ!」
↓
【言い換え後】
「私だったらほかの人に目移りしちゃうかも」
ポイント!
「ダメ男に沼っている人に対して『もっといい人いるよ!』『あの人はダメ!』という助言は、心理的に『彼に限ってそんなことない!』とムキにさせるため逆効果。『私ならこう思うけどな~』くらいに留めると、相手も『そういうもんかな』と冷静になります」(大野さん)
4:友人からの気の乗らない誘い、上手に断るには?
「誘いをやんわり断っても何度も誘ってくる友人。かなり先の日程を聞かれるとさすがに『予定がある』とは言えず…」(24歳・受付)
【言い換え前】
「その日はちょっと予定があるんだ~」
↓
【言い換え後】
「しばらく立て込んでるから、落ち着いたら私から誘うね」
ポイント!
「『その日はNG』という返事をすると、別日程を提案されてしまうなど、話がややこしくなることも。『こちらから誘う』と言っておけば、相手も頻繁には連絡しづらくなりますよ。ただ、『誘ってくれてありがとう』という、感謝は忘れずに伝えるようにしましょう」(大野さん)
5:噂話や陰口が多い友人。同調したくないけど…
「会うといつも『聞いてよ~』『ひどいよね~』とグチグチ…。『そうだね』とは言いたくないし、どうすれば?」(33歳・IT)
【言い換え前】
「そうだよね~、わかる~」
↓
【言い換え後】
「いつもすごい情報網だね…!」
ポイント!
「グチや文句ばかり言う人はどの集団にもいるもの。安易に同調すると『この人は聞いてくれる』とターゲットにされます。『その話どこで聞いたの⁉』など話の論点をずらして反応するくらいが◎。『地獄耳だね』という相手への軽い皮肉も込められています」(森さん)
6:病歴など、家族以外に話したくないことを、ズケズケ聞いてくる友人をかわしたい
「人の病気の話や夫の仕事の内容を知ってどうするの? 仮に話してあれこれ噂されたら…と警戒してしまいます」(35歳・教育)
【言い換え前】
「うーん、実は去年病気が見つかってね…」
↓
【言い換え後】
「うーん? もう忘れちゃった」
ポイント!
「話したくないことには、噓も方便、はぐらかすに尽きます。『詳しいことはもう忘れちゃった』『夫の仕事のことは私もよくわからなくて~』など」(森さん)
「このタイプの人は少し話すと『もっと聞かせて!』とどんどんエスカレートするので、最初のガードが肝心です」(大野さん)
7:香水がきつい友人。なんとか指摘できないかな
「友人の香水がきつい。ほんのり香るくらいならいいけれど、ひどいときは酔ってしまうほど。もはや香害だよ…」(32歳・金融)
【言い換え前】
「けっこう強めの香水つけてる…?」
↓
【言い換え後】
「香水変えた? 部屋に入ってきた瞬間わかった!」
ポイント!
「においの感じ方は個人差があり難しい問題。ストレートに伝えると相手の気を悪くさせる可能性もあるので、間接的に気づかせるくらいに」(森さん)
「ただ、体臭の場合は本人の体調やうつ症状など、心身の不調と関係している場合もあるので、慎重な対応を」(大野さん)
エレガントに毒を吐くために… 働く私たちが“できること” 3つ
1.まずは自分の気持ちを知る
「本音を伝えづらいのは、自分の気持ちを把握していないことが根本の原因。何が不快か客観視できなければ、いくら言葉を駆使しても自分の本心は相手に正しく伝わりません。『今どんな気持ち?』と自問することから始めて」(大野さん)
2.ひとまず「ありがとうございます」と言っておく
「上手に毒を吐くには、その前後の言葉と姿勢が大切。たとえ相手にイヤなことを言われても、まずは『アドバイスありがとうございます』と相手を立てておく。その後に自分の言いたいことを伝えるのが大原則です」(森さん)
3.毒は丁寧に吐けば意外と穏便に伝えられる
「弁が立つ人=毒吐き上手ではありません。だれに対しても穏やかに、謙虚な姿勢で接すれば、言いたいことを言っても関係は壊れません」(森さん)「まずは『私はこう思っている』など、気持ちを伝えることからトライして」(大野さん)
〝自分の気持ちを伝える〟メソッドをまとめた書籍が話題!
『エレガントな毒の吐き方脳科学と京都人に学ぶ「言いにくいことを賢く伝える」技術』中野信子著 (日経BP刊)
脳科学者・中野信子さんによる一冊。京都人の〝遠回しに本音を伝える〟方法を参考に、身近な人間関係においても「自分も相手も傷つけず、〝毒を吐きながら〟言いたいことを伝える」技術を紹介。大人の新たな処世術として話題に。
メイン・アイキャッチ画像:(c)Adobe Stock
2024年Oggi3月号「働く私たちに必要な『大人の処世術』!エレガントに毒を吐く方法」より
イラスト/伊藤美樹 構成/佐々木 恵・酒井亜希子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部