「既成事実」って?
「既成事実」という四字熟語を見て、かたくるしい印象を抱くこともあるかもしれません。ビジネスで使われるイメージがあるかもしれませんが、恋愛など日常で用いられることもある言葉です。
シチュエーションによっては、重要なことを表すこともありますから、意味や使い方を把握しておきたいですね。
意味
【既成事実】
読み方:きせいじじつ
すでに起こってしまっていて、承認すべき事柄。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「既成事実」は、すでに起こってしまっていて、変えることのできない事実のこと。認めるしかない事実や事柄を表す際に使います。
「既成事実化」も知っておこう
すでに起こっていて変えることのできない事実を、誰もが承認せざるをえない状態にすることを「既成事実化(きせいじじつか)」と言います。ビジネスシーンではこの表現を使うこともありますので、把握しておきたいですね。
「既成事実」という言葉の使い方
「既成事実」という言葉をどのように使うのか、例文とともに紹介します。ビジネスシーンとそれ以外のシーンに分けて、使い方をチェックしていきましょう。
ビジネスシーン
《例文》
プロジェクト内容の変更を知らなかったと言われたが、担当者がした書類のサインが既成事実となり、続行が決まった
「言った言わない」の水掛け論で揉めるというのはよくあることですよね。しかし、書類などに承諾のサインがあれば、それが「既成事実」となり、問題を解決してくれることも。この例文の場合は、サインが「動かぬ証拠」となり、水掛け論への発展を回避できたことを示します。
ビジネスシーンに限らず、サインや押印は「既成事実化」の助けになることも。その効果はとても大きいと考えてください。だからこそ、書類の内容を理解しない状態でサインや押印するのはNG。内容をしっかりと把握してから、サインや押印をしてくださいね。
《例文》
主任が既成事実をつくってくれたおかげで、商談はスムーズに進んだ
「既成事実」に「つくる」という言葉をつけて使うことも多いでしょう。既成事実を先につくり、それをもとにして周囲に認めさせる、円滑に物事を進めることを表します。「既成事実をつくった」「既成事実をつくってくれた」のように表すと、すでに既成事実がつくられていることを示すと考えてください。
ビジネスシーン以外
《例文》
親がパートナーとの交際に反対するので、同棲することで既成事実を作ろうと考えた
ビジネスシーン以外でも「既成事実」という言葉を使いますが、恋愛や結婚に関連することが多いでしょう。上記の例文では、同棲することで親が交際を認めざるをえなくするという考えを表しています。
「既成事実」と似た言葉
ここからは、「既成事実」に似た言葉を紹介します。それぞれの言葉の意味を把握しておくといいですね。
「事後承諾」
事前の承諾なしになされた行為に対して、事が済んでから関係者が承諾を与えることを意味する言葉。「じごしょうだく」と読みます。もうすでに行為が生じていることから、相手は承諾せざるをえない状況を表します。認めざるをえないという意味では、「既成事実」と似ていると言えるでしょう。
「事後承諾」は強制的に承諾をえる手段とも言えますから、やり方によっては周囲のひんしゅくを買う、信頼を失ってしまうということも。さまざまなリスクがあることを十分に意識したいですね。
「現状追認」
「追認」とは、過去にさかのぼってその事実を認めること。「げんじょうついにん」と読むこの言葉は、現状起きていることを事実として受け入れ、承認するという意味を持ちます。「既成事実として認める」という意味になりますので、きわめて近い言葉と言えるでしょう。
「既成事実」を言い換えたい時に使うのもいいですね。ただし、あまりなじみがない言葉ですので、相手の反応によっては、かみ砕いて伝える方がいいでしょう。
「恒常化」
常にこうである、そうあって当然だと認識されるような状態にすることを表します。読み方は「こうじょうか」。この言葉は「既成事実化」に似ていると言えるでしょう。常にその状態を維持するというニュアンスも含みますので、それが当たり前という意味合いが強いと考えてください。
「既成事実」と「事実」の違い
「既成事実」と「事実」は何が違うのだろうと疑問に感じることはありませんか? どちらも実際に起こった事柄を指しますが、どのように使い分ければいいか、その基準がわからないかもしれません。
ここからは「既成事実」と「事実」の違いについて見ていきましょう。使い分けの参考にしてくださいね。
「事実」の意味をあらためてチェック
辞書で「事実」の意味を調べてみました。
【事実】読み方:じじつ
1:実際に起こった事柄。現実に存在する事柄。「意外な—が判明する」「供述を—に照らす」「—に反する」「—を曲げて話す」「歴史的—」
2:哲学で、ある時、ある所に経験的所与として見いだされる存在または出来事。論理的必然性をもたず、他のあり方にもなりうるものとして規定される。
3:本当に。実際に。「—一度もその人には会っていない」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「事実」も、すでに起こっている実際の事柄を表します。「既成事実」と同義のように思うかもしれませんが、実は明確な違いがあります。
二つの言葉の違いは?
「既成事実」は、すでに起こっている実際の事柄を誰もが認めざるをえないことを意味します。「事実」にそのニュアンスはありませんので、その点が大きな違いになるでしょう。ただ起こった事柄を「既成事実」とは言いませんので、その違いを意識するといいですね。
また、「既成事実」は人が意識して作り上げたことに対しても使われます。「事実」という言葉にその要素は含みませんので、その点も使い分けの参考にしてくださいね。
最後に
「既成事実」という言葉を紹介しました。「認めざるをえない」というニュアンスを含むため、反対意見や否定的な意見があることに対して使われることが多いでしょう。「既成事実」を作って相手に認めさせ、物事を推し進めるという方法もありますが、やり方によっては相手の気分を損ねたり、信頼関係が崩れたりするかもしれません。そのリスクは十分に意識したいですね。
TOP画像/(c)Adobe Stock