事由とは、どんな意味の言葉か、ご存知ですか? 契約書や就業規則などで、見たことがあるという方も、いらっしゃるでしょう。中には、有給休暇の申請書などで、「事由」を書く欄があり、「書き方が分からない」とお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
また、「理由と似ているけど、どう違うの?」という疑問の声も聞こえてきそうですね。そこで、この記事では、事由の意味や使い方、理由との違い、有給休暇の事由について解説します。
事由の読み方と意味
事由は、「じゆ」もしくは「じゆう」と読み、物事の原因や理由を指す言葉です。あまり普段の会話で聞くことは少ないかもしれませんね。事由は、どちらかと言えば、法律などの分野で使われる、やや堅い言葉と言えるでしょう。ですが、契約書を交わす際や、就業規則などでよく使われるので、意味や使い方を知っておくと何かと便利ですよ。
なお、理由と意味が似ているので、違いが気になるという方もいらっしゃるのではないでしょうか? ここからは、事由と理由の違いも見ていきましょう。
事由と理由の違い
事由と理由は、意味が似ていますよね。漢字も一文字違いですので、違いがよく分からないという方も多いのではないでしょうか?
事由と理由は、どちらも「物事の原因」という意味で似ています。ですが、事由は、「何かの原因になっている事実を指すことが多い」という特徴がありますよ。例えば、仕事を病気で休まざるを得ないときで考えてみましょう。このとき、休職の事由は、「医師が労務不能と診断した場合」など、医師が「仕事をできない状態」という診断を下している事実を言います。
それに対して、「今日は仕事に行きたくない気分だったから、休んだ」という場合はどうでしょうか? この場合、「行きたくない気分だったから」という思いは、休んだ「理由」と言えます。このように、理由は原因になっている事実以外にも、個人的な思いなど、広い意味で使われることが多いと言えるでしょう。
また、日常会話でも、「昨日ドタキャンしたのはなんで? 理由を教えてよ」などと言うことはありますよね。ですが、「ドタキャンの事由を教えて」とは、あまり言わないのではないでしょうか? このように、理由と事由には、使われる場面にも違いがあります。
事由の使い方の例
ここからは、事由の使い方の例を見ていきましょう。
1:やむを得ない事由
何か仕方がない事由があるときに、「やむを得ない事由」と言うことがあります。例えば、「遅刻は、人事評価上マイナスになります。ただし、電車の事故などのやむを得ない事由がある場合は、必ず申し出てください」などのイメージですね。
なお、やむを得ない事由かどうかの判断は、場合によって変わってきます。ですが、一般的には、その人に過失がない突発的な出来事が起こったときは、「やむを得ない事由」と判断されることが多いでしょう。
一方、「ゆうべ夜更かししていて、寝坊しました」というのは、遅刻した理由の説明にはなりますが、「やむを得ない事由」とは言いにくいかもしれません。
2:事由発生日
何かの原因となる出来事が起こった日のことを、「事由発生日」と言います。例えば、事故を起こしてしまい、保険金の請求をするときに「事由発生日」を聞かれることも。この場合、一般的には、保険金を請求する原因となる事故が起こった日が、「事由発生日」となるでしょう。
事由は英語で何と言う?
事由は、英語で「reason」と訳すことができます。例えば、「拒否事由」は、英語で「reasons for rejection」と表現することも。これは、「こんな人はお断り」というような条件を指す表現ですよ。海外旅行などで、使える機会があるかもしれませんので、覚えておくと便利です。
有給休暇の事由の書き方は?
有給休暇を取るときに、有給休暇申請書などの書類を求められる会社もあります。この際、「有給休暇の事由」を書く欄があることも。「有給休暇の事由の書き方が分からない」という声もよく耳にします。
例えば、よくある事由としては、「通院のため」や、「家族の病院付き添い」、「子供の授業参観」などがあるでしょう。本来、有給休暇を会社に申請する際、プライベートな事情を、詳しく書く義務はありません。「私用のため」などと書いても問題はないと言えます。
ただ、会社によっては、「事由によっては、有給休暇の取得を認めません」などと言われることもあるようですね。実際に、「ライブや旅行などのプライベートな事由では、有給休暇を認めない」などと説明された人も、いらっしゃるようです。
ですが、これは法律上正しいとは言えません。というのも、有給休暇は、休む事由の種類によって制限するということは、できないからです。つまり、「遊びの予定のための有給休暇は、使えない」というのは、できないということですね。
ただ、同じ日にたくさんの人が休んでしまうと、営業ができないというような場合も、あり得ます。このように、事業の正常な運営を妨げるようなときは、会社は有給休暇の時季を変える権利があり、これを「時季変更権」と言いますよ。
例えば、多くの人が同じ日に有給休暇を請求してきた際に、その日に休まなければならない事由がある人を優先するなど、配慮が必要なケースも。そのため、有給休暇の事由を聞かれることもあるでしょう。
なお、時季変更権は、あくまでタイミングをずらす権利ですので、休むこと自体を禁止するということはできません。この点も、誤解がないようにしたいですね。
中には、「有給休暇は、冠婚葬祭の行事のみに認める」など、会社が独自のルールを作ってしまっているケースもあるようです。仮に就業規則にそのように書かれていたとしても、法律に反したものは、有効なルールとは言えません。「就業規則に書かれていることは絶対」というわけではないというのも、知っておきたいポイントです。
さらに深刻なケースでは、有給休暇を申請したところ、「なんで休むの? もしかしてデート?」などとしつこく追及されて、嫌な思いをしたという人も。もちろん、このような質問に無理に詳しく答える必要はありませんよね。また、「デート?」などの質問は、ふざけ半分であっても、場合によってはセクハラになる可能性も。ですので、このような質問は、自分もしないようにした方が安心でしょう。
最後に
この記事では、事由の意味や理由との違い、有給休暇の事由について解説しました。事由は、理由に比べると、やや堅いイメージがある言葉かもしれません。ですが、就業規則や公的な文書などでよく出てくる言葉ですので、おさえておくと安心ですね。
TOP画像/(c) Adobe Stock
塚原美彩(つかはらみさ) 塚原社会保険労務士事務所代表
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサルの傍ら、ポジティブ心理学をベースとした研修講師としても活動中。HP:塚原社会保険労務士事務所 ライター所属:京都メディアライン