「コンプライアンス」とは?
企業が活動をする上で欠かせないのが、「コンプライアンス」です。業務の中で、コンプライアンス(法令遵守とも言う)を求められている人は多いのではないでしょうか? しかし、コンプライアンスの意味や定義を正確に把握している人は、それほど多くないかもしれません。
コンプライアンスの意味は「法令遵守」ですが、実はそれだけにとどまりません。意味や定義はもちろん、注目される背景や影響、何が違反となるのかを知り、ぜひ理解を深めてください。
意味
▷コンプライアンス【compliance】
読み方:こんぷらいあんす
1:要求や命令への服従。
ア.法令遵守。特に、企業がルールに従って公正・公平に業務を遂行すること。
イ.服薬遵守。処方された薬を指示どおりに服用すること。
2:外力が加えられたときの物質の弾力性やたわみ強度。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
社会でよく使われるのは、1-ア「法令遵守」が多いでしょう。「法令を守ればいいだけ」と思う人もいるかもしれませんが、実はそうではありません。
コンプライアンスには、もっと広い意味が含まれます。たとえば、従業員のコンプライアンスには、企業倫理や社会規範、就業規則などを守る意味も含まれると考えておいてください。
重視される背景
コンプライアンスが重視される背景には、過去に起きた企業による数々の不祥事が影響していると言われています。食品の産地偽装や粉飾決済など、目先の利益を得るために働いた不正が公になり、連日ニュースなどで大きく取り上げられました。
また、不祥事による被害者が出ていることや、コンプライアンス違反企業の倒産が相次いでいることなども影響しているでしょう。企業が利益の追求ばかりを優先した結果、企業倫理が低下し、このような結果を招いているとする説もあります。
このようなことから、多くの企業がコンプライアンスの整備に着手、コンプライアンスの体制づくりに力を入れるようになりました。コンプライアンスの重要性は、今後もますます高まるでしょう。
コンプライアンスの目的とは?
コンプライアンスは、企業の不祥事や不正を防ぐ役割を担いますが、企業価値を向上させることも期待できます。各企業は自社のコンプライアンス体制をホームページなどで公表していますが、これにより自社の社内体制が整っていることを周知できるのです。
また、コンプライアンスが整うことは、社内の人間にとっても大きなメリットでしょう。労働環境が整えば、社員のモチベーションアップや離職率低下を期待することができます。その効果は、生産性の向上や業務効率化につながり、結果的に企業価値を向上させるでしょう。
コンプライアンス違反の具体例
ここからは、コンプライアンス違反の具体例を見ていきましょう。コンプライアンス違反はいくつかの種類があるため、いくつかピックアップして紹介します。
1: 情報漏洩
《概要》
ある企業で働くシステムエンジニアが、顧客のデータベースにアクセスし、自分のスマートフォンに顧客データをコピーして持ち出した結果、約3500件の個人情報が漏洩。この企業ではUSBへのデータ書き込みは禁じていましたが、スマートフォンについてはルール化していませんでした。
《結果》
該当社員は逮捕され、取締役2名が引責辞任。お詫びなどに260億円以上の費用がかかったのに加え、信頼失墜による顧客の減少も発生、大きな損失につながりました。
参照:ノートンLifeLock|16の事例から学ぶ情報漏洩の全て|怖さや原因、対応策まで (norton.com)
2: 不正会計
《概要》
ある企業は、巨額の損失が生じていたにもかかわらず、それを隠して決算を公表。内部告発により、財務報告書改ざんという粉飾決済をしていることが発覚。社会を揺るがす事件へと発展しました。また、この発覚をきっかけに、過去20年ほど不正会計をしていたことも判明しています。
《結果》
役員が金融商品取引法違反で逮捕され、その企業の株価は大暴落。上場廃止の危機に追い込まれましたが、最終的には回避しています。また、その企業と関りのあった2つの監査法人は、金融庁から業務停止命令を受けることとなりました。
コンプライアンス違反を起こしてしまったら?
コンプライアンス違反を起こした場合、個人や企業はどのような責任を負うのでしょうか? それぞれにかかる影響とあわせて紹介します。
1:個人が違反したら
・民事責任(他人の権利または利益を違法に侵害した者が、被害者に対して損害を賠償する私法上の責任。債務不履行の場合を含めることもある)
・刑事責任(犯罪を理由として刑罰を受けなければならない法律上の責任)
上記以外にも、個人は「労務責任」が問われます。個人には、勤務する企業が設ける就業規則や社内規定を遵守する責任があります。これに反した場合、企業が定める処分を受ける、あるいは人事評価が下がることなどが生じるでしょう。
また、個人のコンプライアンス違反が悪質と判断された場合は、氏名などが公表されることもあります。そうなると、地位や職、社会的信用を失うことになるでしょう。
2:企業が違反したら
・民事責任
・刑事責任
・行政責任(監督官庁などの行政規制に違反すること。違反した場合は、業務改善命令や業務停止命令、是正勧告などを受けることがある)
企業も、必然的に社会的責任を問われます。社会的信用を失うのはもちろん、場合によっては株価に影響し、企業の存続自体が困難になることもあるかもしれません。また、対応を誤った場合、さらに大きなダメージを受ける可能性があります。
コンプライアンス違反を防ぐためには?
コンプライアンス違反を防ぐための方策には、さまざまなものがあります。
企業で言えば、コンプライアンスの重要性を経営の中核に置き、社内一丸となって取り組む体制をつくることが挙げられるでしょう。コンプライアンスを統括する部門を立ち上げ、組織体制を見直しながら、コンプライアンス防止策の実効性を高める必要があります。
また、従業員にコンプライアンス意識を広めるための仕組みづくりも重要です。従業員が理解しやすい社内規定を作成し、定期的に研修や教育を行なうのが望ましいでしょう。
内部通報制度の構築も必要です。この制度は、社内的な自浄作用を促しますので、導入・活用により、コンプライアンス体制が機能しやすくなりますよ。
最後に
コンプライアンスについて紹介しました。コンプライアンス違反は、今も途絶えることがありません。特にインターネットが普及したことから、情報に関連するコンプライアンス違反は増えていると言えるでしょう。コンプライアンス違反を起こしてしまうと、多くを失うことになります。そうならないためにも、コンプライアンスの理解を深めていきたいですね。
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