「収束」とは?簡単に基礎知識を解説
「収束」の読み方は「しゅうそく」です。
収束の意味や同じ読み方の「終息」との違い、「発散」という言葉とあわせて使う場合の意味、収束の使い方・例文を解説します。
収束とは「まとまって収まりがつくこと」
収束とは、「分裂・混乱していたものが、ある一定の状態にまとまって収まりがつくこと、または収まりをつけること」という意味の言葉です。
収束は、「収まる」と「束ねる」という、物事をまとめる意味を持ったふたつの漢字を組み合わせています。漢字からも、「まとまって収まりがつく」という意味をイメージしやすいでしょう。
混乱した状況や事態などがある一定の状態にまで落ち着いたときに、「収束した」「収束する」といった形で使うことが多いです。
同じ読み方の「終息」との違い
同じように「しゅうそく」と読む漢字に、「終息」があります。意味や使うシーンが少し似ているため、どちらの漢字を当てはめるのがふさわしいのか迷いやすい言葉といえるでしょう。
終息とは、「物事が終わって、止(や)むこと」を指します。「息」には、「終わる」「止(や)む」「途絶える」といった意味があります。「終」にも「終わる」という意味があり、似た意味の漢字を二重に使うことで、より「完全に終わった」のだと強調しているといえます。
「ある一定の状態にまとまって収まりがつくこと」を指す収束と「完全に終わったこと」を指す終息とでは、意図するシーンが異なることも少なくありません。
「収束」と「発散」という言葉を使う場合の意味
収束とあわせて「発散」という言葉を使う場面には、数学や気象学、デザインシンキングなどがあります。収束と発散という言葉を使うシーンは、以下のとおりです。
数学
数列とその極限を考えるときなどに使います。ある値に限りなく近づくことを「収束する」、どんどん大きくなる、または正負に振動する場合を「発散する」と表現します。
気象学・海洋学
気象学や海洋学での収束とは、気流などの流線が一点に集まる様子のことです。
デザインシンキング
多くのアイデアをつくることを「発散」、そのなかから優れたアイデアを選択することを「収束」といいます。
収束の使い方・例文
収束の使い方を、簡単な例文で確認しましょう。
・明日正式に記者会見をおこない、事態の収束を図ります。
・連続放火犯が現れなくなり、犯人不明のままで事件が収束した。
・この騒動がいつ収束するのか、まだ先がわからない。
また、「収束レンズ」などのように使うことも。これは収束ではなく「集束(しゅうそく)」と表記される場合もあります。
新型コロナウイルスの「しゅうそく」とは?
ニュースなどでは、「新型コロナウイルスの流行〝しゅうそく〟を願います」などと、「しゅうそく」の言葉を見聞きする機会も少なくありません。新型コロナウイルスに関連して表現する「しゅうそく」は、文脈によっては収束と終息のどちらでも使える場合があります。
どちらを当てはめればよいのかと迷ったときは、収束を使う場合の意味と、終息を使う場合の意味をそれぞれ考えましょう。それでは、新型コロナウイルスの「しゅうそく」がそれぞれどのような意味になるのかを解説します。
収束を使う場合の意味
先述のとおり、収束とは状態がある一定の状態までおさまることなどを意味する言葉です。新型コロナウイルスの流行に関して収束を使う場合には、「新型コロナウイルスの流行がある程度の状態まで落ち着いてきたこと」と捉えられます。
感染者数が抑制されて、減少傾向にある場合に、「新型コロナウイルスの流行が収束した」と使われることが多いでしょう。ただし、あくまでも物事が終わったわけではなく、落ち着いたとしてもまた感染者数の拡大に向かう可能性がある状態を指しているといえます。
終息を使う場合の意味
一方、新型コロナウイルスの流行に関して終息を使う場合の意味は、「新型コロナウイルスを完全に制圧できた状態」を意味することがことが多いでしょう。もしも「新型コロナウイルス感染症の終息宣言」が出される場合には、「感染流行の可能性がほぼなくなった」と宣言する意味合いになると考えられます。
収束と終息のどちらも使える文脈がある
このように、収束と終息では表現する内容がやや異なるものの、どちらであっても意味が通じる文章となる場合があります。たとえば、以下のとおりです。
・感染症が早く「しゅうそく」してほしい
・海外に行くのは、新型コロナウイルスが「しゅうそく」してからにする予定だ
この例文では、「収束」を充てればある程度まで落ち着くこと、「終息」を充てれば完全に終わることをイメージできるでしょう。
自分で文章を書く際は、表現したい内容に近いほうを選びましょう。相手が発言した内容であれば、どちらの意味で使っているのか前後の文脈で判断するといいかもしれません。
とはいえ、新型コロナウイルスが「収束」あるいは「終息」したのか判断することについては、さまざまな意見や見方があるようです。言葉の意味の違いの一例として押さえておくとよいでしょう。
収束という言葉を正しく理解しよう
収束とは、一般的に「分裂・混乱していたものが、ある程度まとまって収まりがつくこと」です。また、数学や気象学、海洋学などでは異なる意味があることも理解しておきましょう。
同じ読み方の「終息」との違いは、主に物事が完全に終わった状態なのか、ある程度落ち着いた状態なのかです。言葉の詳しい意味や使い方、関連する表現などをあわせて確認し、多くの言葉を正しく使えるようになりましょう。
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