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報酬と給与、違いは雇用関係の有無
収入を表す言葉にはいろいろありますが、報酬と給与もその一つ。しかし両者の違いはあまりわかっていないという人もいるでしょう。
労働の対価として支払われる報酬と給与について、それぞれの意味を把握しておきましょう。
報酬とは
一般的には、労働や物の使用を提供し、その対価として受け取るお金や物品のことを言います。報酬を受け取るのは、委託契約、請負契約などにより仕事をしている人や、個人事業主が多いでしょう。
給与とは
会社や団体などと雇用契約を結んで働く人が受け取るお金のことを言います。会社員が受け取るのは給与になりますね。
報酬と給与は、どちらも源泉徴収対象
報酬と給与は基本的にどちらも源泉徴収対象です。源泉徴収とは、年間の収入にかかる所得税をあらかじめ差し引くことを言います。
報酬の場合は、源泉徴収された額を受け取ることがほとんど。給与についても、会社側が所得税や住民税、社会保険料などを差し引いた額を受け取ることになります。
1年を通して税金を払い過ぎているという場合は、個人事業主は確定申告、会社員は年末調整を通して申請します。
源泉徴収が必要な報酬、何がある?
源泉徴収が必要となる報酬には、次のようなものがあります。個人事業主はもちろん、副業、フリーランスの人などは、自分の仕事があてはまるかどうか、きちんとチェックしておきましょう。
個人において、源泉徴収対象となるのは
報酬を受け取るのが個人の場合、次に挙げる報酬は該当すると考えてください。
・原稿料や講演料など
・弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに対する報酬
・社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
・プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
・映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
・ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
・プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
・広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
なお、原稿料や講演料ですが、懸賞応募作品などで入選し、賞金として受け取ったお金については、1回に受け取った金額が5万円以下であれば、源泉徴収をしなくてよいとされています。詳細は、下記リンク「国税庁 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」にありますので参考にしてください。
出典:国税庁|No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは
役員報酬って? 給与との違い
ここからは報酬に関連する用語である、役員報酬について見ていきましょう。役員報酬とは、会社の経営陣である取締役、監査役などに対して支払うお金のことを指しますが、従業員の給与とは少し異なります。
役員報酬の対象になるのは
・取締役
・監査役
・会計参与
・理事
・執行役または会計監査人
・監事など、法人経営に従事する人
役員報酬について
役員報酬には、役員給与と役員賞与の2つがあります。報酬額は、定款もしくは株主総会などでの決議を経て決まることになりますが、これは、会社法で定められていること。従業員のように、就業規則で定めることではありません。
このことを知らずに、給与と同様の扱いにしてしまった場合は、追徴課税の対象になる可能性があります。また、増額や減額についても、株主総会などの決議を経て決定しなければなりません。
収入関連の他の言葉も知っておこう
収入に関連する言葉は他にもあります。それぞれの定義や意味を知り、混同するのを避けましょう。
謝礼とは
イベント開催にゲストで登壇する、ゲストとして対談に出るというようなケースで支払われる謝礼は、感謝をお金や品物などで表したもの。報酬と同じように思えますが、報酬よりも感謝の気持ちが優先されたものと認識している人が多いでしょう。
謝礼の場合、源泉徴収の必要がないと思われがちですが、報酬と実態が同じという場合は、源泉徴収の対象になります。
所得とは
個人事業主や企業の場合は、経費が認められています。しかし、会社員に関しては、基本的に経費計上はできません。業務に必要なものは所属の企業が用意してくれるからですが、スーツや靴などは、会社用として個人負担で用意していませんか?
こういったことを鑑み、一定額を給与所得控除とすることで、会社員にかかる税金負担を軽くしてくれるのが、給与所得控除です。所得とは、収入から給与所得控除を差し引いた後の金額のこと。総支給額や手取りとは異なる金額ですので、注意してください。
基本給とは
会社員が受け取る給与の内訳にはさまざまな項目があります。基本給は、給与の核となるもの。残業代や資格手当などの各種手当を取り除いた金額です。「基本賃金」とも言われており、給与のベースとなる部分のことを言います。
基本給の決め方は所属の会社により異なります。一般的には、年齢や勤続年数に応じて基準を定め、それに沿いながら個人の能力やスキル、成果などを考慮し算出されることが多いでしょう。また、基本給は賞与のベースにもなります。
手当とは
手当とは、所属の会社が従業員に支払う基本給以外のお金のことです。手当には2種類あり、法律で支払いが定められているものと、会社ごとで決めてよいものとがあります。
法律で定められている手当は、「時間外手当(残業代)」、「深夜労働手当」、「休日労働手当」の3つ。一定の要件を満たして残業しても手当が支払われない場合は、法律に反することになります。
会社ごとに決めてよい手当にはさまざまなものがありますが、「役職手当」「住宅手当」「家族手当」「資格手当」などは、多くの会社で採用されています。また、業界や職種、会社によっては、「ネイル手当」「花粉症手当」「ペット手当」のような、ユニークで独自性のある手当を採用しています。
最後に
報酬と給与は似ているように思いますが、実は異なるもの。雇用関係の有無が関係します。どちらも源泉徴収対象ですので、年末調整や確定申告などをしなければなりません。副業をしている人は、本業で給与、副業で報酬を受け取ることになりますが、副業については、確定申告が必要になることも。国税庁の案内をしっかりと見ておいてくださいね。
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