この記事のサマリー
・ビジネス用語としての「フロー」は、「流れ」を指します。
・心理学の「フロー」とは、ある活動に没入した状態を指します。
・「業務フロー図」は、記号と手順を使って仕事の全体像を見える化する図解資料のこと。
「フロー」という言葉を聞くと、「ビジネスでの業務の流れ」を想起する人が多いのではないでしょうか? 実は心理学でも使われている用語だったりします。
この記事では、「ビジネス」・「心理学」の2つに焦点を当てて、わかりやすく整理していきます。
フローとは?【ビジネス用語編】
業務効率を上げたい、資料の説得力を高めたい… そんなときに欠かせないのが「フロー」です。仕事中、何気なく使う言葉ですが、その本質を正しく理解しておくことは、ビジネスにも役に立ちます。
「フロー」の意味を確認
まずは、「フロー」という言葉の基本的な意味を辞書で確認しておきましょう。
フロー【flow】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
1 流れ。流量。
2 一定期間に生産され流動する経済数量。国民所得・投資など。→ストック5
3 プリント基板に電子部品を実装する際、部品を基板に仮留めした状態で、溶融した半田の槽の上を滑らせて接合を行うこと。→リフロー1
ビジネスシーンにおいて、「フロー」は業務や情報がどのように流れているか、作業の手順を追った工程のことを指します。

業務フローとは?
ビジネスシーンでよく使う「業務フロー」とは、仕事の手順や情報の流れを、図や手順で整理する方法です。
例えば、受注から納品までのプロセスを記号で表すことで、ムダが可視化され、改善につながります。
近年ではBPM(Business Process Management)という業務管理手法と併用されることも多く、業務全体を俯瞰して最適化するための土台として活用されています。
業務フロー図の種類と記号
業務フローは、一般に「フローチャート」と呼ばれる図で表現されます。
開始・処理・判断などのステップを記号で表すことで、関係者全体が流れを直感的に共有できます。
BPMN(Business Process Model and Notation)は、ビジネスプロセスを図式化するための国際標準です。このBPMNでは、プロセスフローを明確に表現するために、特定の図形に意味が割り当てられています。
これらの共通ルールを理解しておくと、資料作成やプレゼンテーションの際に、より説得力のある説明ができるようになります。
業務フロー図の作り方と注意点
業務フロー図を作るときは、まず現場の声を聞きながら、実際の手順を丁寧に書き出すことが基本です。次に、その手順を図に落とし込み、改善の余地がないかを検討します。
具体的には、業務フローを可視化したことで二重入力に気づき、月10時間以上の作業時間を削減できた事例があります。
Lucidchartやdraw.ioなどの無料ツールを使えば、初心者でも簡単にフロー図が作れます。一度覚えておくと、チーム全体の動きを俯瞰するうえでも役立ちますよ。

心理学での「フロー」とは?|時間を忘れて没頭する“あの感覚”の正体
アイデアが止まらない、手が勝手に動いていく、そんな「集中のゾーン」に入った感覚は、あなたにも覚えがあるかもしれません。
心理学ではこの状態を「フロー」と呼びます。ここでは、心理学的な「フロー」の定義から、起こる条件、仕事への応用までをわかりやすく整理します。
フローとは?【心理学用語編】
心理学における「フロー」とは、活動に深く没頭しているときに感じる、「時間を忘れるような集中状態」のことです。淀みなく流れる水にたとえて「フロー」と呼ばれるようになりました。
この状態では、行動そのものに喜びがあり、他者の評価を気にせず、ただその瞬間に没頭しています。単なる集中力とは異なり、内面の充足や自己効力感につながる点が大きな特徴です。「ゾーンに入る」、「エクスタシーのなかにいる」ともいいますよ。
最近では、この概念が働き方やメンタルマネジメントの観点からも注目されています。
フロー状態の特徴|心理学者チクセントミハイの理論から
この概念を体系化したのが、心理学者チクセントミハイ博士です。
彼は著書の中で、「フロー」を人が最も創造的・幸福に感じる「最適経験(optimal experience)」と定義しました。
以下の6つがフロー状態の特徴とされています。
・行為と意識の融合
・注意の集中
・自我の喪失
・行為や環境を自分で支配している感覚
・首尾一貫した矛盾のない要求
・自己目的的な性質(それ自体が楽しい)
これらの要素が揃ったとき、人は最大限のパフォーマンスと満足感を得ることができるのです。
参考:『現代心理学辞典』(有斐閣)
フロー状態が起こる条件と例|あなたも経験しているかも?
フロー状態とは、例えば、資料づくりに集中していたらいつの間にか1時間経っていたとき。それは、まさにフローのサインです。
料理や音楽、創作活動、スポーツなど、日常のさまざまな場面で私たちは自然とこの状態を体験しています。
フロー状態を仕事に生かすには? 集中力と満足感の両立術
仕事でフローを生かすには、「少しだけ背伸びする」くらいの難易度のタスクを選ぶのがコツです。難しすぎると不安に、簡単すぎると退屈に感じやすいため、自分に合った負荷設定が大切です。また、集中しやすい時間帯を見つけたり、通知をoffにしたり、環境面の工夫も有効です。
毎日の仕事に「ちょうどいい没頭」を取り入れることで、働きやすさと達成感の両立が目指せますよ。

「フロー」に関するFAQ
ここでは、「フロー」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. フロー図は専門知識がなくても作れますか?
A. 基本的な記号とルールを知っていれば、誰でも作成可能です。
無料のオンラインツールも充実しており、テンプレートを活用すれば初めての方でも手軽に始められます。大切なのは「読み手にとってわかりやすい構造」にすることです。
Q2. フロー状態って誰でも体験できますか?
A. はい、年齢や職業にかかわらず、誰にでも起こりうる現象です。
好きな作業に没頭して時間を忘れてしまったとき、自然にフローに入っていることがあります。特別な才能は必要なく、条件が整えば日常の中でも十分に経験できます。
最後に
「フロー」という言葉は、ビジネスや心理学をはじめ、分野ごとに異なる意味や背景を持っています。意味を正しく理解しておくことで、職場の会話や資料作成、さらには、働き方を見つめ直すヒントにもつながります。なかでも、心理学的なフローは、自分の力を最大限に発揮するきっかけになり得るものです。
言葉の背景を知ることで、あなたの表現力と思考の幅がもっと豊かになるかもしれませんね。
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