「記載」と「記入」の違いとは
日常や仕事の場で「記載」と「記入」という言葉は、何かと目にする機会は多いのではないのでしょうか? でも、「それぞれ違いを説明して」と言われたとしたら「普段から何となく使い分けていたから、言葉にするのは難しい…」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。
「記載」と「記入」は、共通して何かを「書く」ことを表現している言葉です。しかし、そこには微妙なニュアンスの違いがあります。
厳密に言うと「記載」とは、書類や書物、資料などに「記録」として書き記すことを意味します。もう一つの意味としては、自然科学の世界では「特定の生き物の分類を決定する時、その形質を全て記述したもの」としての意味もあるようです。その生物を「新種発見」として報告する際には「原記載」と呼び、これを記録している論文のことを「記載論文」と呼びます。
「記入」とは指定された用紙や空欄に、数字や文字などを書き入れることを指す言葉です。用紙に記入する際、数字や文字以外にも「〇・×・△」のような記号を書くこともあります。
双方の違いをシンプルにまとめると、「記入」は「書き入れる」こと、「記載」は「人に見られることを目的に書く」ということになります。
「記載」と「記入」を正しく使い分けるには「どこで、何の目的で書くのか」がジャッジするポイントになります。この記事では、記載と記入の使い方や使う場面、類語・英語訳を紹介しますよ。
記載と記入の例文
「記載」という言葉を使うシーンは、「公式な場面で、大多数の人に見られるもの」に対して使うことが多い傾向にあります。例えば、
・仕事の書類
・新聞
・雑誌
・SNS
のようなシチュエーションです。どれも記載する内容は意味のある「情報」を載せていることがほとんどなので、「記録」として残すことを目的にしているケースが多いようですね。
「記入」を使う場面は、所定の用紙に何かを書き込む時が多いです。例えば、
・申し込み用紙
・アンケート用紙
・履歴書
・テストの解答用紙
など。これらに個人の情報である「氏名」「住所」や、試験の回答を書く時は「記入」を用いるのが適していると言えます。また、「記入」は自分が書く時に限らず、相手に求める時にも使用できる言葉です。
以下に、「記載」と「記入」の例文をそれぞれ紹介していきます。
「記載」の例文
・「企業がホームページ上に謝罪文を記載した」
・「パンフレットに記載されている内容に誤りがあったため、情報を訂正したシートが挟まっていた」
・「説明書に記載されている通りの手順で進めてください」
例文に出てきたホームページ、パンフレット、説明書はいずれも、大多数の目に触れるものです。したがって、「記載」を使っています。
「記入」の例文
・「ご意見のある方は、アンケート用紙の意見欄に記入をお願いいたします」
・「こちらの申し込み用紙に、氏名のご記入をお願いします」
・「受付の来場者名簿への記入は、もうお済みですか?」
例文に出てきたアンケート用紙、申し込み用紙、来場者名簿はいずれも、所定の用紙に書くことを促しているため、「記入」を使います。
「記載」と「記入」の英語例
「記載」と「記入」を英語に訳す場合、日本語と同じように状況によって使用する単語は、若干異なる部分もあるようです。ここでは、類語と英語訳をそれぞれ紹介します。
「記載」を英語に訳すなら
「記載」は 「書く」という意味の「write」や「write down」、フォーマルな場では「述べる」という意味である「state」が使われることが多いようです。例文を見ていきましょう。
・I will write down the date on all of the documents.
「全ての書類に日付を記載しておきます」
・It is stated in the contract.
「契約書に記載されています」
「記入」を英語に訳すなら
用紙に書き込む場合の「記入」は、「書き入れる」という意味を持つ「fill in」や「fill out」、「入力する」という意味である「enter」が使用されます。
しかし、用紙のどの部分を記入するかによって使用する単語が異なるので、使用時は注意が必要です。
「fill in 」は用紙の「一部」を埋める場合、例えば名前のみ記入する際などに使う言葉。対して、用紙全ての空欄に記入する場合、「fill out」を用いるのが適切と言えるでしょう。
・I forgot to fill in this box.
「この空欄に記入するのを忘れていました」
・I will fill out this form.
「この書類の全項目に記入しておきますね」
・Please enter your name.
「名前を記入してください」
「記載」と「記入」の類語
一般的に、「記載」と「記入」は「類語」と見なされているケースが多い印象です。しかし、厳密にはそれぞれ使用するシチュエーションや意味合いが異なる場合がほとんど。書く内容やシーンによって、言葉を使い分ける必要があるので注意が必要ですね。
「記載」と「記入」の類語は、シンプルに「書く」や「筆記する」、「記す」という言葉で表現。それ以外には、
・簿記
・したためる
・書き表す
・書き立てる
・書き記す
・記録
など、このような言葉が類語であると定義されています。
最後に
何かと使用する機会の多い「記載」と「記入」という言葉。特にビジネスの場では、恥をかかないためにも正しい使い方を身に付けたいですよね。本記事が、適切な使い方の参考となれば嬉しいです。
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