「箸にも棒にもかからない」の意味や由来は?
「箸にも棒にもかからない」ということわざを聞いたことがありますか? 使用頻度の高い言葉ではありませんが、人やものを評価する時に使います。まずは正しい意味や由来から解説していきますね。
意味
「箸にも棒にもかからない」は「はしにもぼうにもかからない」と読みます。「箸にも棒にもかからぬ」といったりもするでしょう。どうしようもないほど、ひどい様子を意味する言葉です。また、なんの取り柄もない人をたとえる表現としても使われるでしょう。
ひどすぎて手をつけられない、手に負えない状態を表すこの言葉。あまりに低い評価を意味するため、使う相手やシチュエーションに注意が必要です。「箸にも棒にもかからない」は特にビジネスで使われることが多く、人材評価をする時、企画書を評価する時などによく聞くことがあるかもしれません。もし「箸にも棒にもかからない」と言われてしまった時は、見当違いな行動や発言をしている可能性が高いでしょう。
由来
ここでいう「箸」は小さくて細かいものを扱う道具として、「棒」は大きいものを扱う道具として位置づけられています。お箸と棒があれば、小さいものでも大きいものでも扱える。しかし、この2つを使ってもどうにも扱えないほどくだらないもの、それを「箸にも棒にもかからない」と表現するのです。
使い方を例文でチェック!
「箸にも棒にもかからない」を「なんの手がかりもない」というニュアンスで捉えてしまう方も多いですが、これは誤用です。あくまでも「かからない」というのは、「扱えない」という意味であり、「引っかかる」「手がかりになる」という意味ではないありません。「姉を探そうと思ったが、箸にも棒にもかからず、見つけられなかった」という使い方はしませんので、注意しましょう。正しい使い方については、以下の例文で解説していきますね。
1:「仕事を探すわけでもなく、毎日ゲーム漬けの日々を送る弟は箸にも棒にもかからない」
仕事、私生活のどちらもだらしなく、取り柄がないというような意味ですね。ただ怠惰であるというわけではなく、「箸にも棒にもかからない」は、相当低い評価をする時に使います。そのため、もしこの言葉を言われてしまった時は、しっかり自分の生活や行動を見直す必要がありそうです。
2:「今の君じゃどこへ行くにしても、箸にも棒にもかからないよ」
この場合は「見込みがない」というようなニュアンスでしょう。上司や親が、部下や子供に対して使う場合が考えられます。今の状態が未熟であるが故に、どこへ行っても役に立たない、成功する見込みがないということを表しています。
3:「あの子は挨拶もせず、連絡も返さない。まったく箸にも棒にもかからない新人社員だ」
手に負えないほど勤務態度がひどいという意味になります。「箸にも棒にもかからない」は、自分より立場の低い人に使うのが一般的。そのため、上司から部下や新人社員に向けて使われることが多いでしょう。
社会人になりたての頃は、社会のルールや礼儀作法の知識がまだ十分に備わっておらず、無意識のうちに無礼な行動をしていることもあるかもしれません。自分が思っているよりも慎重に、発言や行動をするように心がけたいですね。
4:「部下が持ってきた企画書は、箸にも棒にもかからないような内容だった」
このように「箸にも棒にもかからない」は人だけでなく、ものに対しても使うことができるでしょう。この場合は、企画書の内容がまったくの見当違いであったり、誤字脱字が多くレベルの低いものであったことが読み取れます。「箸にも棒にもかからない」というほどですから、相当低い評価をされてしまったということになりますね。
5:「話には聞いていたが、箸にも棒にもかからないほど散らかった部屋だった」
改善、対処しきれないほどひどい様子を表しています。どこから片付けたらいいのかわからないほど、散らかっている部屋の状態が思い浮かびますね。このように、あまりにも手に負えない、手がつけられない状況を「箸にも棒にもかからない」と表現することができます。
「箸にも棒にもかからない」の言い換えや類語表現を紹介
さて、次は「箸にも棒にもかからない」と同じ意味を持つ言葉を紹介していきます。聞いたことのない表現もあるかと思いますが、ぜひこの機会に覚えていきましょう。
1:縄にも蔓にもかからぬ(なわにもかずらにもかからぬ)
「蔓(かずら)」というのは、つる草の総称のこと。縄、つたのどちらを用いても縛れないことから、どうしようもできないことを意味します。「箸にも棒にもかからない」と同じように、処置する方法がないほど、どうしようもできない様子を表すでしょう。「縄にも杓子にもかからぬ」も同じ意味で使うことができます。
2:煮ても焼いても食えぬ(にてもやいてもくえぬ)
「煮ても焼いても噛まれぬ」と言ったりもします。どうすることもできず、手に負えない様子のこと。こちらの思い通りにならず、扱いにくいという意味でもあります。「最近入社したあの人は、煮ても焼いても食えぬ相手だ」というように使うでしょう。
3:つがいにかからぬ
これも「箸にも棒にもかからない」と同じニュアンスで使います。「つがい」が何かを束ねる時に使うものであることから、束ねることができない、つまり制約しがたく扱いづらいことを意味するでしょう。
他にも「箸にも棒にもかからない」は、「手に負えない」「見込みがない」と言い換えることができます。
最後に
「箸にも棒にもかからない」は、相当低い評価を表す言葉です。ビジネスで使われることもしばしばありますが、相手を悪くいうニュアンスなので、くれぐれも使う相手やシチュエーションには注意が必要ですね。また、もし「箸にも棒にもかからない」といわれてしまった時は、一度自分の生活や行動を見直すべきでしょう。
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