記事のサマリー
・「制作」と「製作」に従来は明確な区別はなかった。近年では以下のような傾向がある。
・「制作」は、芸術作品や文芸作品を作ること。
・「製作」は、道具や機械を使って、物品を作ること。
「制作」と「製作」。どちらも「物を作ること」を意味する言葉ですが、どちらの表記にしたらいいか、迷った経験がある人も多いのでは?
本記事では、辞書の定義に基づきながら、使い分けの考え方を整理します。
「制作」と「製作」の違いとは?
まずはそれぞれの意味を確認し、自信を持って使い分けできるようになりましょう。
「制作」と「製作」|辞書で見る基本の定義
まずは基礎となる辞書の定義から確認しましょう。
「制作」は、芸術作品や映画・テレビなどの文芸作品などをつくることを指します。辞書では、次のように説明されていますよ。
せい‐さく【制作】
[名](スル)芸術作品などを作ること。「肖像画を―する」「番組の―スタッフ」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
一方、「製作」は道具や機械などを使って物品を作ることを指します。辞書では、次のように説明されていますよ。
せい‐さく【製作】
[名](スル)
1 道具や機械などを使って品物を作ること。「家具を―する」
2 映画・演劇・テレビ番組などを作ること。プロデュース。制作。「記録映画を―する」
3 詩文・美術作品などを作ること。制作。
「物象観が明瞭に筆端に迸しって居らねば、画(え)を―したとは云わぬ」〈漱石・草枕〉
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本国語大辞典』(小学館)によると、従来、「制作」と「製作」には明確な区別はありませんでした。近年になって、以下のような使い分けをするようになったそうです。
・「制作」= 芸術作品や文芸作品を作ること。
・「製作」= 道具や機械を使って、物品を作ること。
放送業界の「制作スタッフ」と映画の「製作委員会」の使い分けは?
放送業界では「番組の制作スタッフ」と言い、映画などでは「製作委員会」という表現を用います。どちらも「作品を作る」ことを表しますが、「制作」は実際の内容づくり、「製作委員会」は参加企業が資金を出し合い映画などを作る方式を指します。
このように、同じ「作る」でも、関わり方や役割の違いによって言葉が使い分けられています。

似た意味を持つ言葉・「作成」「作製」との違いは?
「制作」「製作」だけでなく、「作成」「作製」も混同しやすい言葉です。4つの言葉に共通する意味は、「物を作ること」。
意味が近いからこそ、違いを知ると表現がぐっと洗練されます。それぞれの特徴を整理していきましょう。
「作成」の意味
「作成」は、書類・資料・メールなどを作り上げるときに使います。例えば「議事録を作成する」「契約書を作成する」といった使い方です。
「作製」の意味
「作製」は、品物や機械、図面など物品を作る際に使う言葉です。例えば「新素材を作製する」「実験用の装置を作製する」といった使い方です。
ただし、『日本国語大辞典』(小学館)によると、作成と作製について「使い分けは必ずしも明らかではない」と表記されています。
参考:『使い方の分かる 類語例解辞典』、『日本国語大辞典』(ともに小学館)

「制作と製作の違い」に関するFAQ
多くの人が気になる「制作」と「製作」の使い分け。ここでは、よくある疑問をQ&A形式で整理しました。間違えやすいポイントも一緒に確認しておきましょう。
Q1. 「制作」と「製作」、どちらを使えば正しいですか?
A.どちらも誤りではありませんが、使い分けの目安があります。
創作性・表現性を伴う場合(絵画・映像・音楽など)は「制作」、道具や機械、製品など形のあるものをつくる場合は「製作」が適切です。
Q2. 「作成」と「作製」の違いは??
A. 「作製」は物品などの場合、「作成」は書類、計画などの場合に使います。
ただし、使いわけは必ずしも明らかではありません。
最後に
「制作」と「製作」の使い分けがされるようになったのは、近年からだと知り驚きましたね。違いを知り使い分けられれば、言葉を選ぶ力が磨かれます。仕事のメールや資料づくりの際に、ぜひこの記事を思い出していただければ幸いです。
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