所得税と住民税、どう違う?
年末調整や確定申告で税額が決まる所得税と住民税。個人の所得をもとに、税額が算出されます。よく見聞きする税金ではあるけれど、2つの意味や違いはよく知らないという人もいるでしょう。
会社員であれば給与天引きされるため、同じ税金のように見えるかもしれませんが、実は異なるもの。内容や課税年度などが大きく違います。所得税と住民税は毎年支払うものですから、それぞれどのような税金なのかを知っておけるといいですね。
所得税と住民税では、納付先が変わる
そもそも税金は、どこに納めるかによって分類が分かれます。国に納付する税金は国税で、管轄するのは税務署です。都道府県や市区町村に納めるのは、地方税。管轄も各自治体になります。
所得税は国税にあたります。確定申告の期間に税務署で申告をすることで、納付する所得税額が確定。会社員の場合は確定申告の必要がなく、年末調整をすれば完結するようになっています。
一方の住民税は、地方税。税額は自治体から通知されます。確定申告や年末調整での所得税の情報をもとに算出されますので、実は所得税と住民税は関連しているということです。
所得税と住民税の違いをチェック
所得税と住民税の違いはまだありますので、チェックしていきましょう。
課税の年度
所得税と住民税では、課税対象の年度が異なります。
所得税:現年課税。その年の所得に課税される
住民税:翌年度課税。前年の所得に対して、翌年に課税される
所得税と住民税は、1月1日から12月31日までの所得から算出しますが、課税年度が異なります。そのため、新卒で会社に入社した場合、1年目は住民税の負担がありません。1年目の収入に対して課税される住民税は、2年目以降に課税されますので、2年目以降は手取り額が減ることになります。
課税方式
所得税の場合、自分で税務署に所得などの申告をすることで税額が決まり、納付をします。これは申告納税方式と呼ばれるもの。住民税は各自治体から税額が通知され、それを期限までに納付する賦課課税方式が採用されています。
会社員で年末調整により納税が完結する場合は、給与から所得税と住民税が天引きされるため、自分で納付するということはありません。
納付方法
所得税の場合、自営業者などは確定申告をすることで年税額が確定しますので、定められた方法で納付をします。会社員の場合は、所得のあった際に源泉徴収されるため、基本的には給与からの天引きで納付することに。
住民税の場合、納付方法には次のものがあります。
・普通徴収(6月、8月、10月、翌年1月の4回で納付)
・給与特別徴収(6月から翌年5月までの給与から毎月天引きされる)
・年金特別徴収(年金受給者の場合は、年金支払い時に差し引かれる)
会社員で年末調整のみで完結する人は、給与特別徴収での納付になることが多いでしょう。
均等割の有無
住民税は、都道府県民税と市区町村民税の2つで構成されています。それぞれ「所得割」と「均等割」という区分で計算されており、これらをまとめたものが住民税になるわけです。所得割とは、所得に対して計算し、算出される額。そのため、税額は人により異なります。
一方の均等割は、税率がなく、各自治体により定められた定額で税額が課されることに。令和5年時点の均等割は、都道府県民税が1,500円、市区町村民税が3,500円の合計5,000円が基準とされています。
なお、東日本大震災があったことから、災害に強いまちづくりに必要な財源を確保するため、都道府県民税と市区町村民税はそれぞれ500円(合計1,000円)引き上げになっています。期間は令和5年までとされているため、令和6年以降は均等割の金額が変更になるかもしれません。
一方の所得税は、均等割はありません。
参照:新潟県新発田市公式ホームページ|住民税と所得税はどう違うのですか?
税率
所得税には累進課税が適用。累進課税とは、所得によって税金を課することを意味し、所得が高ければ高いほど税率が引き上げられることになります。令和5年時点の所得税税率は、以下の通りです。
《所得税の税率》
課税標準額:税率
195万円未満:5%
330万円未満:10%
695万円未満:20%
900万円未満:23%
1,800万円未満:33%
4,000万円未満:40%
4,000万円以上:5%
一方の住民税は、上述したように「所得割+均等割」で税額が決まります。令和5年時点の住民税所得割は、都道府県民税が4%、市区町村民税が6%です。
なお、政令指定都市など地域によっては、住民税の所得割合が異なることもあります。詳細は市区町村ホームページなどで確認してくださいね。
参照:水戸市ホームページ|所得税と個人住民税との違いはなんですか
所得税と住民税の違い、押さえておきたいポイントは
ここからは所得税と住民税の違いで押さえておきたいポイントを紹介します。知らないと、結果損をするかもしれませんので、ぜひ覚えておいてください。
会社員でも別に収入がある場合は、住民税の申告が必要になる
最近では副業やダブルワークをする会社員も増えています。給与以外の所得が20万円以下の場合、課国定申告をしないことを選択することができますが、もし申告しなくても、住民税については申し出なければなりません。忘れていたとしても、市区町村から確認が入るかもしれませんので、その点は注意してくださいね。
住民税の控除では、ふるさと納税が適用される
住民税は所得税額をもとに算出されますが、その住民税から差し引くことができる税額控除があります。その代表的なのが寄付金控除である「ふるさと納税」。ふるさと納税は、自分が応援したい自治体を選び、その自治体に対して寄付をするというものですが、この寄付額のうち、2,000円を超えた部分について、所得税および翌年の住民税から控除を受けることができます。
最後に
所得税と住民税は、1年間の所得をもとにして課税される税金です。年末調整や確定申告などで所得税の税額が算出されたあと、それを参考に住民税額が決まります。会社員の場合は、どちらも給与から天引きされることが多いでしょう。この2つの税金は同じと思われがちですが、実は所得税は国税、住民税は地方税であり、そもそもの納付先が異なります。
また、課税年度や納付方法なども異なるため、その違いを知っておけるといいですよね。所得税と住民税は、公的サービスの財源となる税金です。内容や違いを知り、正しく理解しておきましょう。
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益田瑛己子
ライター・キャリアコンサルタント・ファイナンシャルプランナー。金融機関の営業職として長年勤務し、現在はライター(ブック・Web)として活動中。3人の子供が自立し、仕事と趣味を謳歌している。
ライター所属:京都メディアライン