貯金ゼロだと、どんな時に困る?
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯](令和3年以降)」によると、貯金ゼロの人は全国で約26%いるとされています。約5世帯に1世帯が貯金ゼロという状態ですが、貯金がゼロだとどのようなリスクがあるのでしょうか。
1:病気やケガ
毎日元気で働いていれば、貯金ゼロでもそれほど支障がないかもしれません。しかし、突発的な病気やケガが生じて働けなくなると、貯金ゼロではつらい状況に陥ってしまいます。
公的健康保険や有給休暇があるから大丈夫と考える人もいますが、それは違います。有給休暇や私傷病休暇、傷病手当金などの制度には限りがあるため、入院や療養が長期に渡ると、いずれも使えなくなってしまうのです。
2:転職や離職
転職や離職が生じたとき、貯金がないと生活自体が困難になります。失業保険という手段もありますが、自己都合での退職の場合、支給は退職の3ヶ月後。貯金がゼロだと、3ヶ月分の生活費がいきなり不足してしまうということです。
3:急に発生した大きな出費
パソコンやスマートフォン、家電がもし故障したら、すぐに買い替えなければならない人も多いでしょう。そうしないと生活や仕事が成り立ちませんよね。修理や買い替えの場合、大きな出費になることがほとんどですが、貯金ゼロだと対応できません。
また、家族や親しい人の冠婚葬祭も、大きな出費になるケースがほとんど。貯金がないからお祝いできないとなると、心苦しい思いをすることになります。
4:結婚や出産
自分の結婚や出産も、大きなお金が動きます。結婚式をしないとしても、新生活の準備金はそれなりの費用がかかるもの。出産は原則自費扱いですから、相応の費用が必要です。
このように、いつまとまったお金が必要になるかは予測できません。そんな時に貯金ゼロだとたちまち困ることになるでしょう。その点から考えても、貯金ゼロはリスクが高く、貯金はあった方が安心です。
貯金ゼロから抜け出せない!
貯金をしたいと思っても、貯金ゼロから抜け出せないということがあるでしょう。貯金が苦手な人には、次のような傾向が見られます。
1:お金の使い方を把握していない
日々なんとなくお金を使っていて、自分がどんなお金の使い方をしているか把握していない人は、貯金できないでしょう。現状を把握してはじめて対策がとれるので、改善ポイントすら見つけられません。
年収が低いから貯金できないと考えている人もいるかもしれませんが、実はそうではありません。年収が多くても無計画にお金を使う人もいれば、年収が低くてもきちんと貯金している人もいるからです。
2:お金を管理するのが苦手
お金に対する苦手意識があり、ついついお金のことを後回しにする人も貯金が苦手な傾向にあります。また、安いからと要らないものやサービスを購入していると、やはり貯金できません。
3:目標がない、将来について考えていない
目標や将来について考えず、老後や子供の教育資金も「何とかなる」と楽観視してしまうのは危険です。今の日本は、賃金は下がるけれど物価は上昇し、増税の傾向にあります(2023年1月現在)。
目標や将来のこと、お金について考えるのは労力が要るかもしれません。しかし今のうちに対策するためにも、一度はきちんと考える時間を持ちましょう。
貯金ゼロからスタートしてお金を貯める方法は
貯金ゼロからスタートし、お金を貯める方法を見ていきましょう。
1:必要な貯蓄額を知る
最初にしたいのが、必要な貯蓄額を知り、貯金の目標金額を決めることです。「貯める」と決心しないと、貯金は挫折しがちですから、最初にしっかりと決めましょう。
貯金ゼロからスタートするなら、まずは生活費の3ヶ月分を貯めてみては。不測の事態が起きても、3ヶ月分の貯金があれば、それなりに対応できますから安心ですよね。給与の手取り額3ヶ月分を貯めることができたら、おそらく気持ちも軽くなっているはずです。
2:お金の使い方を把握する
自分のお金の使い方を把握するのも大切です。そのために有効なのが、家計簿をつけること。きっちりつけるのは大変ですので、まずは簡単な収支の記録からはじめてみましょう。今は、手軽に記録できるアプリやソフトがたくさんあります。無料で使えるものも多いので、いろいろ試してみて、継続できそうなものを見つけましょう。
大切なのは、記録を継続すること。完璧に記録することを目指すと挫折しがちですので、続けることを意識しましょう。
3:先取り貯金で習慣化
生活費の余りを貯金に回そうとすると、お金はなかなか貯まりません。貯金したいなら、先取り貯金をはじめましょう。手取りの10%を貯金に回せれば理想的ですが、難しい場合は少額から先取り貯金をしていきます。
先取り貯金は、お金が入ったらすぐに貯金するようにしましょう。そのために貯金用の口座を作るといいですね。銀行の定期積立や自動振り替えサービスを使うのもひとつ。自分で操作をしなくて済むので、スムーズにお金が貯まるでしょう。
勤務先が財形貯蓄制度や社内預金制度を採用していたら、ぜひ活用しましょう。いずれも給与天引きで貯金ができます。また、お金を引き出すには手間がかかりますので、知らず知らずのうちにお金が貯まるはずです。
4:保険加入を検討する
貯金をするために保険加入を検討するのもいいでしょう。お金を積み立てて行きながら、万が一のことがあったときに保険で備える仕組みを作るのもひとつです。
掛け金(保険料)を払うのが難しい場合は、共済などで医療の保障だけ持つのもおすすめ。入院や手術の際に保険からお金がでるので、貯金を崩さなくて済みます。
保険商品の内容は難解でわかりにくいことが多いので、金融機関やお金のプロに相談し、内容を把握してから加入するようにしましょう。
貯金で心がけたいことは
貯金ゼロからお金を貯めるときに、心がけておきたいことをお伝えします。
がんばっている自分を認める
貯金の習慣がない場合、貯金をはじめてすぐはつらく感じることがあるかもしれません。また、思うように貯金ができず、落ち込んだり、自分を責めたりすることもあるでしょう。しかし、貯金をするために生活スタイルや考え方を変えようとがんばっているのは事実ですよね。それを踏まえ、自分に過度な負荷をかけることは避けましょう。
最初は上手くいかなくても、回数を重ねることで貯金の習慣は身につきます。大切なのは試行錯誤し、諦めないこと。自分の小さな変化を見逃さず、少しずつ貯金に慣れていくようにしましょう。
最後に
約5世帯に1世帯が貯金ゼロの状態ですが、貯金がゼロだと危機的状況に陥りやすいもの。安心して暮らすためにも、先取り貯金や家計簿で貯金習慣を身につけましょう。ただし過度にがんばるのはかえって危険。貯金で大切なのは継続です。無理のない範囲で、少しずつ生活や習慣を変え、目標額を貯金しましょう。
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益田瑛己子
ライター・キャリアコンサルタント・ファイナンシャルプランナー。金融機関の営業職として長年勤務し、現在はライター(ブック・Web)と就職支援をメインに活動中。3人の子供が自立し、仕事と趣味を謳歌している。