「生涯年収」とは?
「人生100年時代」といわれるようになりました。そうなると気になるのが、お金です。老後の資金の大半は、現役世代の蓄え。一体、私たちはどの程度の収入を得ているのでしょうか。
「生涯年収」とは、人が一生涯の間に手にするお金のことです。ある調査によると、「大学・大学院を卒業し、フルタイムで正社員を続けた場合の60歳までの生涯賃金(退職金を含まない)」は、男性で約2.7億円、女性で約2.2億円といわれています。
どうですか? 22歳から働き始めたとして「生涯年収」が2.7億円だとすると、年収は700万円を超えることになります。「え? みんな、そんなにもらっているの?」と驚いた人もいるかもしれません。「生涯年収」は給与の総額で計算するため、社会保険料や税金なども含まれています。手取り額としては、もう少し少なめだと考えておきましょう。
また、この数字は「平均値」であり、「中央値」ではありません。収入が多い人の人数はそう多くありませんが、平均値をとった場合、一部の高所得者層がぐんと数字を上げてしまうことになります。実際に多くの人が受け取る「中央値」はもう少し減って、サラリーマン男性では2億円程度と言われています。
条件別にみる平均生涯年収
では、平均生涯年収をさまざまな角度から検証してみましょう。なお、このデータは60歳で定年退職するまで同じ企業でフルタイムの正社員として勤め続けた場合の数字です。また、この年収には退職金や年金は含んでいません。
1:学歴が高いほど、平均生涯年収も高い
・高校卒:男性 約2.58億円/女性 約1.88億円
・高専、短大卒:男性 約2.52億円/女性 約2.06億円
・大学卒:男性 約2.92億円/女性 約2.44億円
性別にかかわらず、学歴が高いほど、平均生涯年収も高くなります。初任給から格差があるわけですから、この差は納得ですね。
2:女性よりも男性のほうが平均生涯年収が多い
先ほどのデータを見るとわかるように、同じ学歴で男女を比べると、女性よりも男性のほうが多いことがわかります。最初に述べたように、勤続年数や雇用形態は同じとした場合のデータですから、この差はどこから来るのでしょうか。やはり、歩むキャリアの違いでしょうか。
3:企業規模が大きいほど、平均生涯年収が高い
同じ大卒の男性で見た場合、
・企業規模10〜99人:約2.22億円
・企業規模100〜999人:約2.61億円
・企業規模1000人以上:約3.21億円
という調査結果があります。つまり、事業規模が大きいほど、平均生涯年収も多くなる傾向があります。この傾向は女性のデータを見ても、また学歴を変えてみても同様の結果が得られます。
「生涯年収」が高い職業とは
では、具体的にどんな会社が「生涯年収」が高いのでしょうか。具体的にみてみましょう。
1:M&Aアドバイザリー
M&A、すなわち企業の合併・買収などの仲介を行っている企業は、かなり「生涯年収」が高いようです。「東洋経済オンライン」の調査によれば、「M&Aキャピタルパートナーズ」の「生涯年収」は約8.3億円、「GCA」が約7.5億円、「ストライク」が約6.4億円、「日本M&Aセンター」が約5.6億円と、いずれも平均生涯年収を大きく上回っています。
2:商社系
また、商社も「生涯年収」が高い傾向があります。「伊藤忠商事」は約5.5億円、「三菱商事」は約4.7億円。こちらも平均生涯年収を大きく上回っていますね。
3:高学歴社員
また、「日刊SPA!」の調査によれば、難易度の高い大学を出ている人のほうが「生涯年収」が高い傾向があるようです。ランキング1位は東京大学、続いて慶應義塾大学、京都大学が3位です。このような人たちが、先ほどの平均生涯年収が高い企業に勤めるとかなりの額の「生涯年収」になるのではないでしょうか。
4:国家公務員
一般職の国家公務員の「生涯年収」は約2.8億円と、平均生涯年収とそう変わらないのですが、注目すべきは総合職の国家公務員。いわゆるキャリア官僚と呼ばれる人のことで、政策を策定したり、実行したりという国にとって重要な任務に就いている人々のことです。彼らの「生涯年収」は約3.8億円といわれています。
「生涯年収」を考えるときに、ひとつ忘れてはならないのが地域差です。地方は、都市部に比べて生活費が低くて済むので給与水準も比較的低めです。「生涯年収」や「平均生涯年収」を考えるときは、給与の数字だけをみているので、こういった地域差などは反映されていません。
一概に「生涯年収」が高いからといって安心できる、低いから不安定だとは言い切れないのです。転職など、企業を選ぶ場合には、その点をも考慮するといいでしょう。
「生涯支出」とは?
「生涯年収」に対して、人が一生涯に使うお金のことを「生涯支出」といいます。総務省統計局のデータを元に算出すると、2人世帯の生涯支出は約2.7億円。60歳を定年とすると、無職となる60歳から85歳までの間には8,000万円超の支出があるとされ、現役中にどこまで蓄えられるかが大きなカギとなってきそうです。
どうやって蓄えたらいいの?
来るべき老後に備えて貯蓄が必要なのはもちろんなのですが、現実としては「生涯年収」は下降傾向にあります。一方で、平均寿命は伸びているわけですから、この乖離は深刻な問題です。上手に蓄えるためのアイデアを考えてみました。
自己投資
まずは収入を増やすことです。コツコツ貯金するのもいいですが、資格を取って昇進を狙うなど、必要な自己投資は収入アップにつながることがあります。上手に自分に投資をして自己研鑽に努めましょう。
貯蓄を増やす
家計簿をつけていますか? やみくもに我慢するのではなく、収支のバランスを見直し一定額を安定して貯蓄に回せるよう検討してみましょう。定期預金や積み立てなども活用するといいですね。自分で貯金するのは苦手という人には特にオススメです。
投資に挑戦する
超低金利時代といわれる期間が長く続いています。貯めているだけでは増えないというのも事実。そこで、思い切って投資に挑戦してみてはどうでしょう。投資にはリスクがつきものですが、NISAやiDeCoなど、元本割れのリスクが少ない商品もあります。あわせて節税効果が見込めるのもうれしいですね。
最後に
どうですか? ものすごい金額の「生涯年収」をみて、驚かれた人もいるかもしれません。また「今から生涯年収を増やすなんて無理」という人もいるでしょう。お金のことばかり考えて暮らすのはいやなものですが、お金の不安は気が重くなりますよね。先の見えない時代だからこそ、長期的なライフプランを持って、上手に貯蓄や運用をするといいかもしれません。
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