善は急げとはよいことはすぐに実行せよの意味
「善は急げ(ぜんはいそげ)」とは、よいことはためらわずにすぐに実行せよという意味のことわざです。
座右の銘としても人気の言葉で、自分を戒めるときや、相手に行動を促すときに使います。日常会話だけでなく、ビジネスシーンでも使うことがあるため、正しい使い方を覚えておきましょう。
仏教の言葉が由来とされている
「善は急げ」とは、仏教の経典を由来とする言葉です。もととなった一文は、「よいことをするのに時間をおいていると、よくない行為や楽な習慣をするようになる」という意味で、簡単にまとめて「善は急げ」といわれるようになりました。
善は急げの使い方!例文をとおしてご紹介
「善は急げ」は、次のシチュエーションで使うことが多いです。
・決意を表明するとき
・相手に行動を促すとき
それぞれのシチュエーションでどのように「善は急げ」を使うのか、例文をとおしてご紹介します。
決意を表明するとき
よいと思われることをすぐにおこないたいという決意を表明するときに、「善は急げ」を使うことがあります。たとえば、よいアイデアを思いついたときに、「善は急げだ」と自分を鼓舞して、アイデアを具現化するための行動をすることもあるでしょう。
・善は急げというように、今日から公認会計士になるための勉強を始めます。
・「時期が来たら……」と先送りにするのは、得策ではありません。善は急げの気持ちで、今すぐ取り組みます。
相手に行動を促すとき
相手に行動を促すときも、「善は急げ」を使うことがあります。ただし、促す行動が「善」と考えられるものに限ります。
たとえば、相手が学校をさぼるかどうか迷っているときに「善は急げ」と話すのは、適切ではありません。
しかし、相手が人生における岐路に立ち、学校をさぼってオーディションを受けるなどの行動をするかどうか迷っているときなら、「善は急げ」と励ますのもよいでしょう。
・善は急げだ。学校なんて休んで、今すぐオーディション会場に行かなくちゃ。
・善は急げというから、明日になるのを待たずに今すぐメールを送ったら?
善は急げと急がば回れの違い
「善は急げ」は、よいと思ったことはためらわずに行動することを意味する言葉です。いっぽう、「急がば回れ」は、たとえ遠回りになったとしても着実かつ安全な方法を選ぶほうがよいという意味を指します。
急ぐかどうかという視点では、「善は急げ」と「急がば回れ」は真逆の表現です。とはいえ、どちらも物事の真実を示す言葉です。
よいことはすぐに行動することが大切ですが、急ぐあまり失敗をしては意味がありません。すぐに行動するためにも、用意周到に準備をし、遠回りであっても着実な方法を選ぶようにしましょう。
善は急げと類似する表現
「善は急げ」と同じく、よいことなら急いでするほうがよいという表現には、次のものがあります。
・思い立ったが吉日
・鉄は熱いうちに打て
それぞれの表現において、ニュアンスの違いや使い方をご紹介します。
思い立ったが吉日
「思い立ったが吉日(おもいたったがきちじつ)」とは、決意をしたときが行動を始めるよい日だから、早く行動するほうがよいという意味です。
吉日とは暦のうえでの縁起のよい日のことで、大安などを指します。暦では「物事を始めるのによい日」や「物事を始めると失敗する日」などが決まっていますが、縁起がよい日を待っていたら、チャンスを逃すかもしれません。
暦とは関係なく、思い立った日を吉日として考えようというある意味、合理的な言葉です。
・そのアイデアはとてもよいと思うよ。思い立ったが吉日というから、今日から始めてみよう。
・思い立ったが吉日というでしょ。決断を先送りしないで、今すぐ行動しなきゃ。
「思い立つ日に日咎(ひとが)なし」や、「思い立つ日が吉日」などの表現も同様の意味です。
鉄は熱いうちに打て
「鉄は熱いうちに打て」とは、手遅れにならないように、適切なタイミングで行動しようという意味の言葉です。また、考えが柔軟で純粋な若いうちに鍛えるほうがよいといった意味で使うこともあります。
早く行動するほうがよいという意味では、「善は急げ」と同じです。しかし、「鉄は熱いうちに打て」は闇雲に早く行動しようという意味ではなく、早いほうがよいものの、適切なタイミングを見計らうほうがよいことを意味する点が異なります。
実際に、鉄は熱いうちは形を変えられますが、冷えてしまうと固くなり、自由に形を変えられません。柔軟に変えられるタイミングを逃さず、行動することが大切です。
・せっかく勉強したのだから、今日のうちに復習したほうがいいよ。鉄は熱いうちに打てというでしょ。
・若いほうが、吸収力も高いものです。鉄は熱いうちに打てといいますが、まさしく今、努力するべき時期なのではないでしょうか。
善は急げの対義語
「善は急げ」の反対の意味の言葉としては、「悪は延べよ(あくはのべよ)」が挙げられます。「悪は延べよ」とは、悪いと思うことは時期を後回しにすることで、状況が変化して、悪いことをしないで済むようになるという意味の言葉です。
たとえば、行動に問題がある同僚がいて、注意すべきかどうか迷っていたとしましょう。注意をすれば言い返されるだけでなく、悪口を言いふらされるリスクもあります。
よいことなら相手に伝えるのも簡単ですが、よくないことを伝えるのは重荷です。「善は急げというけれど、悪は延べよというからな……」と悩んでいるうちに、問題行動が多い同僚が自主的に退社するかもしれません。
適切な状況で「善は急げ」を用いよう
「善は急げ」は、よいことはすぐに行動するほうがよいという意味の言葉です。
しかし、「急がば回れ」ともいうため、闇雲に急ぐのではなく、タイミングを見計らって適切な時期に行動することが望ましいです。急ぐほうがよいと思われる場面では、「善は急げ」を使いましょう。
TOP画像/(c)Adobe Stock