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2023.08.08

仕事が驚くほど円滑に! 意識するだけで変わる、言葉のキャッチ・オープンとは?

30代になると仕事の手ごたえも感じ、プライベートも充実していているからこそ、さまざまな悩みが生まれてきますね。ここでは、そんな皆さんの「仕事」や「キャリア」の悩みに、リクルートマネジメントソリューションズの研究員である小松さんがアドバイスします。今回は、相手の要望や期待に応えるための話の聞き方と捉え方について。

リクルートマネジメントソリューションズ 小松苑子

前回記事はこちら

仕事を前に進めるために必要なコミュニケーション術 その1

仕事の依頼を受ける時、営業する時、何かを交渉する時、色々な立場のチームメンバーで協働する時など、相手の要望や期待を受け取り、それをもとにコミュニケーションを重ねて行く場面は、仕事をする上では欠かせません。何気なく聞いている相手の要望や期待。私たちはどれだけ正確に掴めているのでしょう?

大切なのは、「相手本位」になること

コミュニケーションの前提として、「相手の要望・期待を『純粋に』受け取る」という考え方が大事です。「純粋に受け取る」とは、自分のバイアス※に影響されることなく、自分の基準は蚊帳の外に置き、相手の期待を引き出してフラットに物事をみたり考えたりしてみる、ということ。つまり、自分本位を脱して相手本位になる。これが会話の最初の段階でできると、後戻りなく話を前に進められ、仕事がスムーズに進みます。

とはいえ、「相手の立場に立つ」とか「自分本位な考え方をやめる」ことは、初めて聞く教訓でもないし、大事であることは想像できます。言うは易し、行うは難し。「相手本位」になる近道、それは、相手の言葉を受け取るときにキャッチ→オープンを意識することです。

※バイアス:思い込みや偏見

職場で会話をする男女
(c)Shutterstock.com

言葉のキャッチ・オープンとは? ステップ1:キャッチ

私たちは日々大量の言葉を聞いたり、読んだり、見たりして考え、発言したり、書いたりしています。その大量の言葉の中で、反射的に処理せずに「キャッチ」できているものがあると思います。

例えば、会議の場などで相手の意見に直感的に違和感があり、「なんだか違うな」「よく分からないな」と思った時、反射的に反論したり頭の中で反対意見を唱えたりするのではなく、「●●さんは、~~について『○○○』と感じているのか」と一旦“キャッチだけ”すること。

逆に共感する場合も同じです。例えば、会議の場で、相手の意見が直観的に自分の意見と近いと感じ、「それ分かる!」「私も同じ!」と共感した時を想像してください。そこで、「まさに●●さんがおっしゃる通り、〇〇〇ですよね」と反応したり、頷きながら「そうそう。それに関連して~」と次の展開をすぐに思考するのではなく、一歩引いて、「●●さんは、~~について『〇〇〇』と感じているのか」と、相手の言葉をそのまま反芻して受け取ることもあるはず。

ここでいう「キャッチ」とは、自分で勝手に言葉を変換したり感情とつなげたりせずに、ただその言葉を純粋に受け取ることです。

そもそも、すぐに反応を返さないと相手に失礼な気がして、相手の言葉をフラットにキャッチだけするのはもどかしいですよね。でも、このもどかしさを感じる人ほど、日々純粋な「キャッチ」をしていない証拠かもしれません。

例えば、相手に失礼のないように相づちを打ちながら「キャッチ」するには、相手の言ったことをオウム返ししたり、「そうなんですね」と噛みしめながら返したりすることが有効です。日頃からオウム返しなどを行えている人は、言葉の「キャッチ」に長けています。

スマホを見ながら笑う男女
(c)Shutterstock.com

言葉のキャッチ・オープンとは? ステップ2:オープン

「キャッチ」の次に大事なのは、「その『○○○』ってなんだろう?」と、相手が使った表現の意味を聞いて「観察」することです。相手の放つ言葉の意味するところと、自分がイメージするその言葉の意味が完全に一致していることはほとんどありません。

固有名詞だと「あの人だ」「あのキャラクターだ」と同じ人やモノを想像できます。また、●センチ、●グラムと、解がある物理的・定量的な情報だと人によって「これは私にとっては2センチ」「いや、私にとっては1.5センチ」などとずれることはありません。

しかし、例えば「難しい」「かたい」などの形容詞に代表されるような状態や性質を表す表現は、人によって微妙に意味や連想するものが異なります。なぜなら、人によって経験、価値観、比較対象としているものなどが様々だからです。思い起こしてみると、この状態や性質を表す表現、普段かなり使っていませんか?「あの人頭がかたくて、いつも難しいことばかり言ってくるんだよね」という文章も、「かたい」「いつも」「難しい」と人によって基準や想像する状態が異なる単語が3つも並んでいます。私たちの普段の会話のほとんどは、人によって解釈が異なるもので構成されているのです。

そのため、その言葉の指している対象や意味を開いて相手と視界を揃えることが必要です。同じ言葉でやりとりしていても、話が進んだ後で「実は弊社としてはこういうイメージだったんですけど…」と、期待がずれていることが分かって、工程をいくつか戻してスタート、なんてこともあるからです。

よく「言葉のキャッチボール」といいますが、「慎重に進めたい」「時間がなくて後戻りできない」など、ここぞという時には、ボール(言葉)を受け取って投げ返す前に、「おっしゃっている△△が指していることについて、イメージをもう少し教えてください」「■■について、具体的に知りたいのですが…」と、言葉をひらくこと(オープン)をぜひ意識してみてください

特に日本は、ハイコンテクスト※な文化と言われています。「多分こうだろう」と文脈や相手の態度や表情などから真意を汲み取ることに慣れている人が多いかもしれませんが、他人同士、意味がぴったり一致することの方が稀な言葉の解釈なんです。一歩踏み込んで言葉の中身について相手とやりとりすることで、自分のイメージを補正できたり、もっとできることが生まれたりするかもしれません。

※ハイコンテクスト:文化の共有性が高く、言葉以外の表現に頼るコミュニケーション方法を指す。言葉による説明が少なく、会話の際は表情の変化や声のトーン、体の動きなどの行間を読むことが求められる

TOP画像/(c)Shutterstock.com

リクルートマネジメントソリューションズの小松苑子さん

リクルートマネジメントソリューションズ 小松苑子

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ HRDサービス開発部研究員。2008年に人材派遣会社に新卒入社して営業を経験後、新規営業モデルや若手の教育体系を構築。2017年に同社に入り、主に営業力強化や、新入~中堅社員の領域の企業研修など人材育成サービスの企画に従事。

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