対症療法とは?
対症療法とは、「たいしょうりょうほう」と読みます。現れた症状を軽減する療法のことです。風邪をひいて熱を出した場合には熱を下げる治療を行い、痛みがある場合には痛みを抑える治療を行います。このような治療を表す意味のほか、一時的な対策という意味で使われることもあります。対処療法と間違えがちですが、対処療法は誤りです。
対症療法の2つの意味や、具体的な例をみていきましょう。
2つの意味がある
対症療法には、医療としての意味と一般的に使われている2つの意味があります。それぞれの内容や、例文をご紹介します。
現れた症状を軽減する
対症療法は、病気の原因を取り除くのではなく、表に現れた症状を軽減するための治療です。一時的に症状を和らげることで、病気そのものを治療するものではありません。
原因を治療する方法は、「原因療法」と呼ばれています。病気の症状や進行速度、患者の状態によっては原因両方に時間を取れない場合もあり、医療現場の多くで対症療法と原因療法の組み合わせる治療が行われています。
症状を軽減するという意味で対症療法を使った例文は、以下のとおりです。
・病気の原因がわからず、対症療法をしながら検査を続けている
・患者の症状がひどくなってきたため、対症療法を施しながら根気よく原因治療をしていく方針である
状況に応じた対策を行う
対症療法という言葉は、医療ではなく一般的な場面で使われる場合もあります。根本的な解決を図るのではなく、状況に応じて一時的な対策で済まそうとするような場合です。基本的に、そのような対応をすることに対するネガティブな意味合いで使われます。
一時的な対策という意味で対症療法を使う場合の例文をみてみましょう。
・いったん対症療法で状況を切り抜けたものの、毎回このような対応をすることはできない
・今回、会社が採用した制度は対症療法のようなもので、根本に抱える課題を解決するものにはならないと噂されている
「対処療法」は間違い
対症療法は発音が「たいしょりょうほう」に聞こえることもあり、「対処療法」と覚えている人も少なくありません。
「対症」は専門的な言葉で一般的に馴染みがなく、「一時的に対処する」というイメージで対処療法と覚えている可能性もあります。「対処法」という言葉もあり、「症状に対処するための療法」と考えてしまうのかもしれません。
しかし、対症療法のほかに対処療法というものがあるわけではなく、対症療法の方が正解です。
対症療法の例
対症療法は、病気が原因で発生した痛みや発熱、せきなどの症状を和らげる治療を指します。対症療法の代表的なものは、痛みを軽減する鎮痛薬や、蕁麻疹(じんましん)やかゆみなどに用いられる抗ヒスタミン薬、風邪の症状を和らげる風邪薬・解熱剤などです。
対症療法を行っても、痛みやかゆみの原因となった病気は治りません。熱の原因となっているようなウイルスや細菌を取り除くこともできず、対症療法を行わなくなるとまた症状が出てきます。
がんによる痛みや治療による副作用が強く出るがん治療の多くでは、対症療法と原因療法を併用するという方法がとられています。苦痛な症状を和らげながら日常生活を快適に過ごし、原因治療にも取り組んでいくという治療法です。
対症療法の類義語
対症療法と同じような意味を持つ類義語は少なくありません。類義語として、主に以下のような言葉があげられます。合わせて覚えれば、対症療法の理解も深まるでしょう。
・その場しのぎ
・当座をしのぐ
・間に合わせの対応
・差し当たり
どれも、一時的にその場を乗り越えるという意味があります。ここでは、対症療法の類義語を2つみていきましょう。
その場しのぎ
その場しのぎ(そのばしのぎ)とは、その場の問題を一時的に乗り越えることです。「一時しのぎ」という使い方もします。本質的な問題の解決ではなく、その場だけ間に合わせる対応策をとるという意味で、対症療法と似た言葉です。
(例文)
・今回はその場しのぎの対応でなんとか無事に済ませたが、いつも同じようにできるとは限らない
差し当たり
差し当たり(さしあたり)は、「先のことはともかく、今のところ」という意味です。連用形で「差し当たって」とも表現します。
将来のことは考えず、現在の状況に対応することを指す言葉です。とりあえず一時的な対策をしておく対症療法と似たような言葉といえるでしょう。
(例文)
・差し当たり必要なものだけを揃え、彼女は急いで家を出た
対症療法の対義語
対症療法の対義語は、根本的な治療を行う原因療法です。「根本療法」「根治療法」とも呼ばれます。病気の原因を取り除き、完全治癒を目指す治療法を指します。代表的なのが、感染症の原因である病原菌を攻撃する抗生物質を使った治療です。
一時的に症状を改善させる対症療法よりも根本的に治す原因療法が望ましいとされていますが、原因が不明な症状に対しては原因療法を行うことができません。
また、原因療法は効果が出るまでに時間がかかるため、実際には対症療法と原因療法を併用した治療を行うのが一般的です。例えば、インフルエンザの治療では熱を下げる解熱剤とウイルスを攻撃する抗生剤の両方が処方されるなど、対症療法と原因療法の薬がともに支給されます。
対症療法には2つの意味がある
対症療法は、一時的に症状を抑える治療方法です。熱を下げたり痛みを軽減したりして、苦痛を和らげます。対義語は、根本的な治療をするという意味の原因療法です。実際の医療現場の多くでは、対症療法と原因療法が併用されています。
このほか、対症療法は一般的な意味にも使われます。状況に応じ、一時的な対処法を行うという意味です。主に、そのような行為を批判する場面で使われます。類義語には、その場しのぎや差し当たりがあげられます。一緒に覚え、場面に応じて使い分けるとよいでしょう。
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