【目次】
・「善処します」とは? 読み方や意味を知ろう
・「善処します」の使い方を例文で確認〈返事する場合〉
・「善処します」の使い方を例文で確認〈依頼する場合〉
・「善処します」の使い方には注意が必要?
・「善処します」の類語にはどのようなものがある?
・「善処します」の対義語にはどのようなものがある?
・最後に
「善処します」とは? 読み方や意味を知ろう
「善処します」と言われたことがありますか? ビジネスシーンで、何か依頼された時の返事として「善処します」とよく使われています。しかし、使い方や受け取り方に、注意が必要な言葉でもあるんです。今回は、「善処します」の意味と使い方、類語や対義語までまとめて解説します。
まずは、「善処します」の意味を学んでいきましょう。
◆「善処します」の意味
「善処」は「ぜんしょ」と読みます。事態に応じて適切な処置をとることの意味。「善処します」は、「状況に応じた対処をします」「できるだけ努力します」といった意味合いになります。
「善処」は「善(よ)いを処する」と書くとおり、「その状況に応じた対処をする」という前向きな印象を受けませんか? しかし、実際に「善処」を使った場合「できるだけ努力します」という少しマイナスのニュアンスが含まれる場合があります。言葉通りの意味ではない可能性があることを、念頭に置いて考える必要があることを覚えておきましょう。
◆「善処します」を使える相手
「善処します」は、上司や取引先といった目上の方に使うことが出来ます。「善処」は「対処」や「対応」よりも堅い言葉であり、かしこまったシーンで使える丁寧な表現です。
また、「善処してください」は、「今後はミスを繰り返さないよう、善処してください」などというように使います。目上の人に使うことはできません。「○○してください」は、相手に行動を促す命令表現なので、目上の人が目下の者に対して使う言葉です。
目下の者から、目上の方に対応をお願いしたいときや依頼したいときには、丁寧語の「ご」を付けて「ご善処いただきたい」と言うと良いでしょう。もう少し柔らかい印象で伝えたい場合には、他の言葉に言い換えて使ってくださいね。
「善処します」の使い方を例文で確認 〈返事をする場合〉
ビジネスシーンで「善処します」を使う場面について、例文を用いて紹介します。まず、「お願いや依頼に対する返事・返信」として使用する場合です。確認していきましょう。
1:「本件につきましては、善処します」
ビジネスシーンで上司や取引先など、目上の方から依頼やお願いをされた際に、返答するフレーズです。その場では、すぐに決断できない場合やクレーム対応にも使うことが出来ます。より丁寧に「善処いたします」「善処してまいります」と言っても良いでしょう。
「善処します」と返答された場合は、どんなニュアンスなのかは、相手や状況を見て判断するしかありません。その場で言及せず、「よろしくお願いします」と返すと良いでしょう。
2:「今後、同じ過ちを繰り返さぬよう、善処を尽くします」
仕事のミスに関して上司から注意を受けたときに「同じ過ちを繰り返さぬよう、善処します」と返答し、誠意を伝えることができます。このように、相手から改善を求められた場合や、事態を収拾するための行動をとる必要が生じた場合に「善処します」が使えますね。謝罪の際には、より丁寧に誠意を込めて「善処いたします」や「善処を尽くします」と表現します。
3:「いただきましたご要望に関して、善処するよう努めます」
お客様や取引先からの要望に対して返答する際に「善処します」を使うことが出来ます。この場合の「善処します」には「一旦保留にする」という意味合いで使うこともあるでしょう。相手の要望を受け入れることができるか不確かなときや、明言を避けたいときの返事です。
ただし、保留のニュアンスを含んで返答した場合は、改めて結果を連絡する必要があります。「一旦保留」とした件について、対応が可能か否かを伝えることがマナーです。また、「善処します」と返答された場合には、遠回しに断られている、または、要望通りの結果は得られない可能性があると考えましょう。
「善処します」の使い方を例文で確認〈依頼する場合〉
返答する以外にも「お願いや要望を伝える、依頼をする」ときに使うことができます。「善処」はかしこまった表現なので、ビジネスシーンで目上の方にお願いするときに適した言い方です。ただし、お願いする際は、相手を不快にさせないような言い回しを使うよう、注意しましょう。
1:「至らぬ点もあろうかと存じますが、善処くださいますようお願い申し上げます」
取引先に要望や依頼を伝えた際に、最後に「善処くださいますようお願い申し上げます」や「何卒善処していただけないでしょうか」と付け加えます。そうすることで、出来るだけこの要望に応じた対応をして欲しいという意を伝えることが出来るでしょう。
相手の事情を察して「何かと事情がおありかと存じますが」や「ご多忙の中、恐縮ですが」など、配慮の言葉をクッションとして使うことで、失礼のないようにします。
2:「今回のプロジェクトでは善処を求めたい」
上司から部下へ「頑張れ」「努力してください」と尽力を求める場合にも、「善処」と表現するケースがあります。部下は、その要望に応えられるよう、出来るだけ努力しなければなりません。このように相手に対して善処を求める場合は、その相手よりも発言者が優位であることが前提とされます。自分よりも目上の人に対して善処を求めることは、大変な失礼にあたります。注意しましょう。
3:「本件につきまして、原因を明らかにするとともに善処を望みます」
何らかのトラブルが起きた際に、対処してもらいたい意思を伝えるフレーズです。「今後このようなトラブルが起きないよう、善処してもらいたい」と、同じ過ちを繰り返さないようお願いすることも出来ます。より丁寧に「善処していただきますよう、申し入れます」と言っても良いでしょう。
「善処します」の使い方には注意が必要?
先述したとおり、「善処します」は「お願いされた内容を、適切に処置していきます」という意味。しかしながら、「善処」は「可能な限りやってみます」という断定を避けるニュアンスや、遠回しに断る場合にも使われているのが事実です。よりはっきりと誠意を示したいときや断定の意味を伝えたい場合は、他の表現を使うほうが誤解を与えずに済むでしょう。
もし、こちらから依頼や要望を出したときに「善処します」と返答されたとします。そのときは、何らかの対処はしてくれるものの、要望通りの結果は得られない可能性があると覚えておきましょう。
「善処します」の類語にはどのようなものがある?
では、はっきりと誠意を示したいときや断定の意味を伝えたい場合は、どのように表現すれば良いでしょうか?「善処します」の類語について確認し、返答や依頼する際のバリエーションを増やしておきましょう。
1:対処
「対処」は、「ある事柄・状況に合わせて適当な処置をとること」という意味。「善処」と「対処」は似た意味を持ちます。「善処」は、曖昧なニュアンスを含んでいるのに対し、「対処」はより具体的に「適切に行動する」ときに使われます。
【例文】:「迅速に対処いたします」
2:対応
「対応」には様々な意味があります。その中で、「周囲の状況などに合わせて事をすること」「相手や状況に応じて物事をすること」という意味で使う際に、「善処」と言い換えることが出来るでしょう。「善処」と違う点は、マイナスのニュアンスを含んだ曖昧な言い方でないという点です。ビジネスシーンでは「ご対応」や「迅速な対応」「早速の対応」などと用いられます。
【例文】:「ご対応くださいますよう、お願い申し上げます」
3:お取り計らい
「取り計らい」は、「取り計らうこと。処理。処置。措置」の意味。「物事がうまく運ぶように考えて処理をする」という意味で「お取り計らい」と用いられます。ビジネスシーンでは、相手の気遣いや思いやりに対するお礼や、相手にお願いする場面で使う表現です。ただし、自分の行動を指して使う言葉ではないので注意しましょう。
【例文】:「お取り計らいくださいますよう、何卒よろしくお願い申し上げます」
「善処します」の対義語にはどのようなものがある?
「善処します」の対義語についても、確認しておきましょう。
1:放置
「放置」は、「施すべき処置をしないでそのままにしておくこと」の意味。
【例文】:「問題を未解決のまま、放置してしまった」
2:なおざり
「なおざり」は、「いい加減にしておく、おろそかにする」の意味。物事に対して注意深くないことを指し、自分では意識せずにおろそかな結果になってしまう言動に用います。「対応せずにそのまま放置しておく」という意味合いです。
【例文】:「先日依頼した件を、なおざりにしないでください」
3:おざなり
「おざなり」は、「いい加減にしておく」の意味。なおざりと似た意味を持ちますが、「自分で意識的にいいかげんな言動をしてその場を逃れようとする」という、意志の意味が含まれます。「その場限りの間に合わせ」であることを覚えておきましょう。
【例文】:「忙しいのは分かるが、そんなおざなりな対応では困ります」
最後に
今回は、「善処します」について、解説しました。「適切な対応を望んでいるとき」は「善処」を使って、相手に自分の意図を伝えることが出来るようになりましたか? 日本語の独特のニュアンスを含んだ「善処します」という言葉ですが、ビジネスシーンで多く使われています。
「明言を避ける」文化で育ってきたからこそ、「善処します」をうまく活用して、丁寧な返答を心がけましょう。そして、社会人として、決して「おざなり」にせず、結果を報告するマナーを忘れないでくださいね。
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