「垣間見える」とは物事の一部が見えること
「垣間見える(かいまみえる)」とは、物事の一部だけが見える状態を指します。「垣(かき)」とは生垣(いけがき)の垣で、家の周りに張り巡らされた塀状の植え込みのことです。
垣の間からでは、物事の全体をはっきりと見ることは困難です。そのため、「垣間見える」といえば、一部のみが見えることや、はっきりと見えないことを指すようになりました。
元々は「垣間見る」から派生した言葉
元々「垣間見える」という言葉はなく、「垣間見る」から派生した言葉です。そのため、辞書によっては載っていないこともあるようです。
「垣間見る」は歴史が古く、源氏物語や竹取物語などの古典でも使われています。かつて高貴な女性は他人には顔を見せずに生活をしていました。笠や衣を被らずに外を出歩くこともなく、外出するときは御簾を下ろした牛車などを使い、他人に顔を見られることがないように注意していたとされています。
しかし、見るなといわれると見たくなるのが人情です。高貴な女性が暮らしている建物の周りを何度も通り、垣の間から少しでも顔を見ようとする男性貴族も多くいたようです。このように垣の間から見ることを「垣間見(かいまみ)」といい、動詞化して「垣間見る」や「垣間見する」と表現するようになりました。
「垣間見える」と「垣間見る」は意味が異なる
「垣間見える」は「垣間見る」から派生した言葉ですが、意味は少々異なります。それぞれの意味を例文をとおしてご紹介します。
「垣間見える」を例文でご紹介
「垣間見える」とは、物事の一部が見えることや、本質をうかがい知ることの意味で用います。たとえば次のように使われることがあります。
・子どもに優しく話しかける様子から、彼の優しい人柄が垣間見えた。
・あまり家のことは話さないけれども、丁寧にまとめられた髪やアイロンのかかったシャツから、大切に育てられていることが垣間見える。
いずれも実際に見えているのではなく、「想像する」や「理解する」「うかがい知る」などのニュアンスで使われています。
「垣間見る」を例文でご紹介
「垣間見る」とは、源氏物語などの古典でも使われていますが、物事の一部を見るという意味で現代でも使われることがあります。たとえば次のように使います。
・子どもに優しく話しかける様子から、彼女の普段とは違う一面を垣間見た。
・海外から要人が来ているらしく、中の様子を垣間見ることはできない。
最初の例文は、「垣間見える」とほぼ同じ意味で使われています。ただし、「垣間見える」は物事が主語になりますが、「垣間見る」は動作の主体が主語になる点に注意しましょう。
二番目の例文では、古典と同じ意味で「垣間見る」が使われています。垣ではなくても塀などで厳重に囲われているところをのぞき見する場合なら、現代でも「垣間見る」という言葉が適切でしょう。
「垣間見える」の言い換え表現を例文でご紹介
最初にも紹介しましたが、「垣間見える」という言葉は「垣間見る」の派生語のため、辞書の見出し語となっていないケースもあります。また、辞書によっては「垣間見える」は文法的に間違いだとすることもあるため、文章に書くときには注意が必要です。同じ意味の言葉を覚えておき、場合によっては言い換えるほうがよいでしょう。
垣間見えるの言い換え表現としては、次のものが挙げられます。
・のぞき見する
・うかがい知る
・チラ見する
それぞれの表現を例文をとおしてご紹介します。
のぞき見する
「垣間見える」を古典の「垣間見る」と似た意味で使うときは、「のぞき見する」と言い換えてみてはいかがでしょうか。ただし、あまり「のぞき見する」のは上品なことではありません。また、光源氏のように個人の家などを「のぞき見する」と、不審者として通報されることもあるため注意が必要です。
・寝てばかりいる隣の生徒の顔をのぞき見すると、薄目を開けてこちらをにらんでいた。
・彼女のノートをのぞき見した。予想に反して完璧に美しくまとめられており、彼女の意外な面を知った気がする。
・隣の家の玄関が開けっ放しだった。よくないとは思いながらものぞき見したところ、泥棒に荒らされたかのような惨状だった。
うかがい知る
「垣間見える」という言葉は、現代では「うかがい知る」の意味で使うことが多いです。人間性や普段の生活、隠れた努力などが見えたことを表現するときは、「うかがい知る」に置き換えてみましょう。
・彼の言葉の端々から、慈愛深い人間性がうかがい知れた。
・「特別なことはしていない」と彼女はいうけれど、時折眠そうな表情を見せることから、毎日夜遅くまで勉強をしていることがうかがい知れる。
・おしゃべりをしながらでも、キレイに食べる様子から、しつけの厳しい家庭で育ったことがうかがい知れた。
チラ見する
「のぞき見する」ほど大げさではなく、軽くチラッと見るときは「チラ見する」という言葉と置き換えてみましょう。ただし、「チラ見する」という言葉は口語のため、文章に書くのは好ましくない可能性があります。文章で「チラ見する」を伝えたいときは、「少しだけ見る」「遠目に見る」などに言い換えるほうがよいかもしれません。
・兄の顔をチラ見したところ、あまりこの話には乗り気ではないことがわかった。
・彼女の様子が気になって、チラ見をする。
・カンニングはいけないとはわかってはいたけれど、つい隣の生徒の答案をチラ見してしまった。
状況に応じて適切な表現を使おう
「垣間見える」とは、物事の一部が見えることを意味する言葉です。現代では、ふとしたことから本質などが見えるときに使う傾向にあります。
「垣間見る」という言葉から派生した言葉ですが、辞書などによっては正しい言葉とはされていないため、場合によっては別の言葉に置き換えるほうがよいでしょう。状況に応じて、「うかがい知る」などに言い換えてください。