「ミイラ取りがミイラになる」とは?基礎知識を解説
「ミイラ取りがミイラになる」とは、大きく分けると2つの意味がある言葉です。
なお、「ミイラ」は漢字で書くと「木乃伊」です。ミイラ取りがミイラになるという言葉も、「木乃伊取りが木乃伊になる」と表記されることがあります。
それでは言葉の意味や語源、ミイラの概要、江戸時代の人にとってのミイラ、使い方、例文などをチェックしていきましょう。
意味は人捜しをする人が捜される立場になること
ミイラ取りがミイラになるという言葉の意味の1つは、「人を捜しにいった人がそのまま帰ってこず、捜される立場になること」です。もう1つは、「説得しようとして臨んだが、結果的には逆に説得されて、相手側と同じ意見になってしまうこと」を意味します。
どちらの意味であっても、もともと意図していたものとは反対の結果になってしまうことを表現しています。
ミイラ取りがミイラになるの語源・由来
このことわざは、古代末期から中世にかけてのころ、ミイラがとある理由から大変重宝されていたことに由来します。そのため、人々はミイラを欲しがり、なんとかして手に入れようとして取りにいくようになりました。
しかし、ミイラがある場所にたどり着くまでには砂漠などがあって、過酷な旅です。ミイラを取りにいった人がその途中で行き倒れてしまい、乾燥した気候によって自らがミイラになってしまうことがあったそうです。
このエピソードから、ミイラ取りがミイラになるという言葉ができたといわれています。
そもそも「ミイラ」とは?
そもそも「ミイラ」とは、エジプトやアラビアなどで死体が腐らないようにと塗られていた油のことです。ミイラの語源はポルトガル語で、「没薬」という意味だといわれています。また、死後も腐敗せずに乾燥させた状態で原形を保っている屍のこともミイラと呼びます。
死体が腐らないようにしていたのは、死者の復活が信じられていたためです。取り出した脳と内臓をつぼに入れ、数十日間死体を薬液に浸けてから乾燥させます。その後、防腐剤を塗って麻布で巻き、棺におさめていました。
江戸時代の人にとってミイラは薬だった!?
ミイラが重宝されていたのは、そこからとれるミイラ油が万能薬だといわれていたためです。江戸時代の人々にとってもミイラが人気でしたが、それは見世物にするためではなく、貴重な薬として食べるためでした。
実際に、動植物や鉱物の効能などをまとめた貝原益軒の「大和本草」には、ミイラに関する効能が書かれています。そのなかでは、ミイラの丸薬が以下のようなときに効果があるとされていました。
産後の出血・刀傷・吐血・下血・気疲れ・胸痛・痰たん・しゃくり胸痛・虫歯・頭痛・めまい・毒虫や獣に咬まれたとき など
ミイラ取りがミイラになるの使い方・例文
それでは、使い方を例文でチェックしましょう。先述のとおり、ミイラ取りがミイラになるの意味には、以下の2つがあります。
・人を捜しにいった人が帰ってこず、捜される立場になること
・説得しようとして臨んだが、結果的には逆に説得されて、相手側と同じ意見になってしまうこと
それぞれの例文は、以下のとおりです。
・妹を探しにいったはずの兄まで帰ってこない。まさにミイラ取りがミイラになってしまった。
・反対派を説得するつもりで説明会を開いたら、肯定的だった人まで反対派に回った。ミイラ取りがミイラになるとはこのことだ。
ミイラ取りがミイラになると似たことわざ・類語
ミイラ取りがミイラになると似た意味を持つことわざ・類語は、以下のとおりです。
・人捕る亀が人に捕られる
・木菟(ずく)引きが木菟(ずく)に引かれる
・懐柔される
似た意味を持つ言葉は、これらのほかにも、「狩人罠にかかる」「抱き込まれる」「籠絡(ろうらく)される」「説(と)き伏(ふ)せられる」「丸めこまれる」などがあります。
それでは、ミイラ取りがミイラになると似た言葉をチェックしていきましょう。
人捕る亀が人に捕られる
「人捕る亀が人に捕られる(ひととるかめがひとにとられる)」は、ミイラ取りがミイラになると似た意味を持つことわざです。ただし、この場合には「人に害を加えたならば、自分も人から害を受ける」という意味であり、ミイラ取りがミイラになるとは異なる部分もあります。
人捕る亀が人に捕られるの由来は、「大きな亀が人を食べようとしたが、逆に人に捕まってしまった」という話からきているようです。
木菟引きが木菟に引かれる
ミイラ取りがミイラになると似た意味を持つことわざには、「木菟引きが木菟に引かれる(ずくびきがずくにひかれる)」もあります。「木菟」とは「ミミズク」のことで、「木菟引き(ずくびき)」とは昼間の目の見えない状態のミミズクをほかの鳥がつつくことです。
ミミズクをおとりにしていた猟師の罠によって、ミミズクをからかいに来た鳥が捕まってしまったことが由来だとされています。
懐柔される
「懐柔(かいじゅう)される」も、似た意味を持つ言葉です。「懐柔」とは、「自分の思い通りに相手を従わせること」です。「懐柔される」というと、「相手の思惑通りにさせられること」を指します。
思い通りに相手を従わせるとはいっても、懐柔されるという表現は、無理やり従わせるわけではないイメージです。手なずけて上手に抱き込むといったニュアンスがあります。
ミイラ取りがミイラになるを正しく理解しよう
ミイラ取りがミイラになるの意味は、「人を捜しにいった人がそのまま帰ってこず、捜される立場になること」、もしくは「説得しようとして逆に説得されてしまうこと」です。
昔、ミイラからとれるミイラ油が万能薬だといわれていた時期がありました。そのため、良く効く薬を取りにいこうとする人が多くなったものの、過酷な砂漠のたびに耐えられずに死んでしまい、乾燥した死体になってしまったという話がことわざの由来だといわれています。実際に、日本でも江戸時代には貴重な薬として食べられていました。
言葉の詳しい意味や由来、関連する類語表現などを理解して、正しく使えるようになりましょう。