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2023.05.18

「火中の栗を拾う」とはどんなことわざ? 正しい意味や語源、類義語をご紹介

「火中の栗を拾う」とは、童話に由来する言葉です。もともとの意味と日本で使われている意味はニュアンスが異なります。本記事では「火中の栗を拾う」の意味や使い方、類義語・対義語を解説します。例文もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

「火中の栗を拾う」とは?

「火中の栗を拾う」は、「かちゅうのくりをひろう」と読みます。イソップ物語が由来のことわざで、自分の利益にならないのに他人のために危険を冒すことをたとえています。現在日本で使われている「火中の栗を拾う」の意味は、物語の本来の意味とはニュアンスが違います。

「火中の栗を拾う」の意味を詳しくみていきましょう。

山中で危険な橋を渡る様子
(c)Shutterstock.com

イソップ物語が由来

「火中の栗を拾う」の由来は、17世紀のフランスの詩人、ラ・フォンテーヌが古代ギリシャの「イソップ物語」から着想を得て書いた「猿と猫」という寓話に由来します。

物語の中で猿は猫を騙し、炎の中にある栗を拾いに行かせました。猫は大やけどをしながら栗を拾いますが、猿はそれを奪ってしまうというあらすじです。このストーリーから、「火中の栗を拾う」は他人にそそのかされてリスクを冒すという意味で使われるようになりました。

日本の意味はニュアンスが違う

現代の日本で使われている「火中の栗を拾う」は、「他人のために危険を冒す」という意味はイソップ物語と同じです。しかし、イソップ物語では他人のために危険を冒す行為が愚かだというニュアンスがあります。

これに対し、日本では他人のためにあえて自らを犠牲にするという「自己犠牲」の精神が、尊い行為であるという意味合いで使われることが少なくありません。

また、危険や困難を承知でチャレンジするといった意味でも使われています。これらは、本来の意味とニュアンスが違うということを把握しておきましょう。

「火中の栗を拾う」の例文

ガッツポーズをとる女性
(c)Shutterstock.com

ここでは、「火中の栗を拾う」を使った例文をご紹介します。

本来の「他者の利益のために利用される」という意味と、「危険を承知でチャレンジする」という意味の、2パターンをみていきましょう。

(「他者の利益のために利用される」という意味)

・赤字経営をしているあの会社と契約するのは、火中の栗を拾うようなものだ

・人助けをしたいのはわかるが、火中の栗を拾うことにならないようにしてほしい

・大きな負債を抱えている彼に融資するという、火中の栗を拾うような行為は誰もしないはずだ

(「危険を承知でチャレンジする」という意味)

・その投資のリターンはかなり大きく、リスクはあるものの火中の栗を拾う価値は十分にある

・彼は火中の栗を拾うつもりで会社を辞め、会社を起業した

「火中の栗を拾う」の類義語

野生の虎
(c)Shutterstock.com

「火中の栗を拾う」には、よく似たことわざがあります。

危険な行為をするという意味の「危ない橋を渡る」と、危険を冒してこそ成功を得られるという意味の「「虎穴に入る」があげられます。どちらも危険を冒すという意味があり、「火中の栗を拾う」の類義語といえるでしょう。

2つの類義語について、さらに詳しくご紹介します。

危ない橋を渡る

危ない橋を渡る(あぶないはしをわたる)とは、危険な手段を用いる、危険すれすれのことを行うといった意味です。今にも落ちそうな橋を渡ることに由来しています。

目的を達成するために危険を承知で行動することを表しており、法律に違反する行為を指す場合もあります。

「危ない橋を渡る」の例文は、以下のとおりです。

・危ない橋を渡ってでも、このプロジェクトは成功させたい

・どんなに報酬が良くても、危ない橋を渡るような仕事はできない

虎穴に入る

虎穴に入る(こけつにはいる)とは、危険を冒さないと成功は得られないというたとえです。虎穴に入らずんば虎児を得ず(こけつにいらずんばこじをえず)ということわざと同義で、虎穴に入るはこれを略したものです。

虎が棲む穴に入らないと虎の子を獲得できないことから、危険を冒して初めて成果が得られるということを表しています。

主にチャレンジ精神を表すときに使われる言葉です。

虎穴に入るの例文は、以下のとおりです。

・彼は虎穴に入るつもりで新しい会社に出資した

・虎穴に入る覚悟で事業を立ち上げ、今日の成功を勝ち取った

「火中の栗を拾う」の対義語

注意マーク
(c)Shutterstock.com

「火中の栗を拾う」には対義語もあります。

その物事に関わりあわなければ災いを受けることもないという意味の「さわらぬ神にたたりなしは」や、危険な所には近づかないという教訓的な意味の「君子危うきに近寄らず」が該当します。

あえて危険な行為を避けるという意味で、「火中の栗を拾う」の対義語といえるでしょう。

それぞれ、詳しくご紹介します。

さわらぬ神にたたりなし

「さわらぬ神(かみ)にたたりなし」は、そのことに関わりあわなければ、災いを受けることはないという意味です。「面倒になりそうなことには手を出すな」という戒めが込められています。

さわらぬ神にたたりなしの例文は、以下のとおりです。

・彼女は今とても機嫌が悪いから、何も話しかけない方がさわらぬ神にたたりなしだよ

・この案件に関わると余計なトラブルに巻き込まれるので、さわらぬ神にたたりなしで手をつけない方がよい

君子危うきに近寄らず

君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず)とは、賢い人はいつも身を慎み、危険なことはしないという意味です。

君子とは、「学識があり人格も優れ、立派な人物」を指します。苦手なことなどを避けたいときに、避けるための口実として使われることもあります。

君子危うきに近寄らずの例文は以下のとおりです。

・課長はクライアントとのトラブルで対応に追われている。「君子危うきに近寄らず」で今は話しかけない方がいいよ

・台風が近づいているときは「君子危うきに近寄らず」で、家にいる方がいい

「火中の栗を拾う」は本来の意味を理解しよう

「火中の栗を拾う」は他人のために危険を冒すという意味ですが、本来の意味はそのような行為を戒めています。

現代の日本では、自己犠牲としてよい意味にとらえたり、チャレンジ精神という意味で使ったりします。もともとの意味は違うということは、把握しておきましょう。類語、対義語も一緒に覚え、「火中の栗を拾う」を正しく理解してください。

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