「推し」の意味とは?
「推し」とは“一推しのメンバー”の略語“推しメン”をさらに短縮させた言葉です。
以前から使われていましたが、AKB48が一世を風靡した際に、一般にも広く知られるようになり、11月4日は語呂合わせで「いい推しの日」として記念日認定され、2021年には「新語・流行語大賞」に”推し活”がノミネート。2023年には漫画作品『推しの子』がアニメ化され大ヒットするなど、もはやトレンドワードではなく一般的な言葉として浸透しました。
現在ではアーティストにだけではなく、ペットやアニメ&ゲームのキャラクター、球団などのチーム、食べ物や風景、文房具など、あらゆるジャンルの中で「自分が特に好きなもの」「コストや熱量を注げる対象」を指す言葉として使われています。
◆語源の解説
語源は推薦する、他に薦める、という意味の「推す」からきています。他者に薦めたいほど好きである、ということです。そして先にも説明した通り、“一推しのメンバー”→“推しメン”→“推し”とどんどん短く略されてきました。
◆推しと恋愛の違い
「推し」にも「好き」だという感情が含まれていますが、手の届かない距離感があり、不釣り合いな相手に対して見えない線引きが存在しています。恋愛は自分だけが相手と親しくなりたいと望むのに対し、推しは他者にも薦めたいという気持ちが含まれている点が異なります。
「推し」の関連語、派生語いろいろ
「推し」に関連する言葉をご紹介していきましょう。
箱推し
「箱推し」は誰か一人を推すことではなく、アイドルグループなどのグループ全体を応援することを指します。特定の誰かを好むのではなく、グループメンバー全員を応援している場合に使います。
「箱推し」に似た意味の言葉に「DD」という言葉があることをご存知でしょうか? 両者を混同すると、「箱推し」をしている人からは睨まれますので、お気をつけください。DDは「DaredemoDaisuki(誰でも大好き)」の頭文字を取った言葉です。つまり「アイドルなら誰でも好き」という無節操さがあります。一方、「箱推し」の場合は、“特定の”グループが好きだという意味なので、そこに差異があります。
推し被り
「推し被り」とは自分が推しているアイドルを他の人も推している状態のことをいいます。推し被りが起こった場合、対応は大きく2つに分かれます。一つはライバル視して敵視するタイプ、もう一つは共感して仲良くするタイプです。
神推し
「神推し」とは自身の推しの中でも最大級に推していることを表しています。この場合の「神」は「非常に」や「とても」を表し、後に続く言葉を強調する接頭語として使われています。似た言葉として「単推し」という言葉もあります。こちらはアイドルなどのグループの中でたった一人だけを応援する場合に使われます。
一推し
一番好きなメンバーのことを指します。ちなみに、二番目に好きなメンバーのことは「二推し」、三番目に好きなメンバーは「三推し」と言います。
推し変
「推し変」は「推し」を変えることを意味します。要は他のメンバーに鞍替えすることです。ちなみにジャニーズタレントのファンの間では応援していたタレントのファンを辞めることを「担降り」と言います。
推し増し
「推し」は変えずに、別の「推し」を増やすことを意味します。
推しの正しい使い方は? 例文をご紹介
日常会話にも出てくる「推し」。幅広く使える「推し」の使い方を紹介しましょう。
1:「推しがドラマに出るから、今日は早く帰る」
好きなアイドルもしくは俳優さんを「推し」と表現して使っています。他にも「推しに恋人が発覚してつらい」や「社内では課長が推しかな」などというように使い、憧れの先輩やあまり喋ったことのない相手にも使ったりします。
2:「この映画は推しだから、絶対映画館で観た方がいい!」
人やキャラクターではなく、作品や物にも使えるところが、「推し」の使い勝手のよさです。他にも「このお店の推しはハンバーグランチ!」や「私はこのメーカーのボールペンが推しだな」などというように、日常の会話でも取り入れやすいところがポイントです。
3:「今回のスキャンダル報道の対応を見て、推し変することに決めた」
ここでは「推し」の関連語である、「推し変」の使い方を紹介しました。他にも「コンサートに感動して、箱推しすることにした」や「今夜は推し被りしている先輩と飲みに行って語る」などというように使います。
◆使ってはいけないNGシーン
これまでにもご紹介してきたように「推し」は広く使われてきてはいますが、全員が認知している言葉ではないため、ビジネスシーンで使うのは避けるべきでしょう。親しい人たちの間で楽しく使うことをおすすめします。
推しの類義語はどんなものがある?
推しに関連して使われる似たような言葉を3つピックアップ。
尊い
本来の「尊い」は高貴だ、とか敬うべき存在に使う言葉ですが、ここで言う「尊い」は推しに対して使う表現です。推しが素晴らしく、信仰心すら抱くほどの感情に高まった時に使います。推しとセットで使うことが多いですね。
例えば「推しが尊すぎてつらい」などというように、推しがかっこよすぎて胸が苦しくなるほど最高だ、というときに使います。
推しぴ
「推し」に代わり「推しぴ」という言葉が台頭してきています。“ぴ”はピープル(people)の頭文字です。ピープルという言葉がついていることから、推しが一人である必要はありません。例えば「新作映画を観たら、推しぴが増えた」などというように使います。ちなみに「彼ピ」という言葉もありますが、これは「彼氏」を可愛く呼んだものです。“ピ”はピープルではないので、語源は異なります。
エモい
「推し」のことを表現する際に、「エモい」という言葉もよく耳にします。“エモ”はエモーショナル(emotional)の略だと言われ、切なさを含んだ“なんとも言えない感情”を表す言葉です。例えば「この音楽はエモい」などというように使います。
最後に
以上、なんとなく理解しているようで、かなりの広がりや使われ方のある言葉「推し」について、マスターできたでしょうか? 特に派生語・類語を覚えておくと、いろんなシーンで人、物にまで使えるので便利な言葉ですよ。
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