看護の日とは?由来も紹介
看護の日とは、看護やケア、助け合いの気持ちを持つための5月12日の記念日です。旧厚生省により、1990年に制定されました。
5月12日が看護の日となったのは、近代看護の礎を築いたフローレンス・ナイチンゲールの誕生日にちなみます。なお、スイスのジュネーブに本部のある国際看護師協会では、1965年から5月12日を「国際看護師の日」と定めています。
看護週間とは?
看護週間とは、看護の日を含む日曜日から土曜日のことです。例えば、2023年は5月12日が金曜日のため、5月7日(日)から5月13日(土)が看護週間になります。また、2024年は5月12日が日曜日のため、5月12日(日)から5月18日(土)が看護週間です。
看護週間にはさまざまなイベントが開催されます。看護協会は都道府県ごとにあるため、毎年、各地の看護協会主導で看護やケアについての啓発イベントが実施されています。
フローレンス・ナイチンゲールとは?
イギリスで看護師として働いていたフローレンス・ナイチンゲール(1820年~1910年)は、近代看護教育の生みの親として知られています。上流階級に生まれ、幼い頃から語学や歴史、音楽などの高い教育を受け、とりわけ数学に対して強い興味を持っていたようです。
ナイチンゲールの名前が知られるようになったのは、イギリスの看護師団リーダーとしてイギリス政府によりクリミア戦争に派遣されたときからです。クリミア戦争とは、ロシアとトルコの間で起こった戦争で、イギリス軍はフランスとともにトルコに味方をしていました。イギリスの兵士も数多く参戦し、ナイチンゲール率いる大勢の看護師も野戦病院で働いていました。
ナイチンゲールは、野戦病院に派遣されると、すぐに看護活動に取り組みます。そして、病院で亡くなる兵士の多くが、ケガそのものではなく野戦病院の劣悪な衛生状態により亡くなっていることを突き止めました。実際に病院内の衛生状況を改善することで、野戦病院に運ばれてくる兵士の死亡率を劇的に引き下げることに成功しています。
彼女は統計に関する知識を存分に使ってイギリス軍の戦死者・傷病者に関する膨大なデータを分析し、彼らの多くが戦闘で受けた傷そのものではなく、傷を負った後の治療や病院の衛生状態が十分でないことが原因で死亡したことを明らかにしたのです。
統計学の先駆者としても知られる
兵士たちの死因が劣悪な衛生状態にあると気付けたのは、フローレンス・ナイチンゲールが兵士たちの膨大なデータを、統計学の知識を駆使して分析したからです。
その当時、統計学は一般的な学問としてあまり知られていませんでした。しかし、フローレンス・ナイチンゲールは、野戦病院の環境改善のための予算を引き出すには統計学が適していると見極め、実行に移します。
まずは兵士たちの状況をすべてデータ化し、兵士のケガの状態や野戦病院内での環境などをグラフとしてまとめました。そして、劣悪な衛生環境と死亡率の関係について、視覚に訴える方法で国会議員や役員に説明し、環境改善のための予算獲得を成功させたのです。
看護の世界に統計学などの数学的な考え方を持ち込んだのは、フローレンス・ナイチンゲールが初めてとされています。ナイチンゲールはその後、統計学における功績が認められ、1859年に女性初の王立統計協会の会員に選ばれました。また1875年にはアメリカの統計学会の名誉会員にもなっています。
看護の日のキャラクター「かんごちゃん」
世界的には「国際看護師の日」、日本では「看護の日」として記念される5月12日は、国内外において看護や看護師に関わるさまざまなイベントが開催される日でもあります。日本の看護の日を盛り上げるのが、「看護の日」キャラクター かんごちゃんです。
かんごちゃんは、看護の未来への懸け橋となり、看護職を目指す若年層の皆さまの夢を叶えるキャラクター。2021年に公募により決まりました。看護協会は47都道府県ごとにありますが、かんごちゃんもそれぞれの地域ごとにいて、地域の特色を表したデザインのコスチュームを着用しています。例えば、山梨県ならシャインマスカットの被り物、大阪府なら大阪のおばちゃんをイメージしたコスチュームで、地域ごとの看護の日イベントを盛り上げます。
看護の日に開催されるイベント
日本看護協会や、都道府県ごとの看護協会では、看護の日・看護週間にさまざまなイベントを実施しています。例えば、2022年の看護の日には、現場で働く看護師から募った看護エピソードをアニメ化して上映するなどの取り組みを行いました。
そのほかにも、看護の日・看護週間にはさまざまなイベントが実施されます。いくつかのイベントを紹介します。
トークショー
看護の日には、トークショーが開催されることもあります。ただし、著名人のトークショーではなく、現場で働く看護師をメインとしたトークイベントになることが多いようです。現職の看護師と看護学生が話し合うイベントなどもあります。
看護エピソードの表彰
日本看護協会では「忘れられない看護エピソード」というタイトルで、実際のエピソードを募集しています。素晴らしいエピソードは表彰され、アニメ化も実現しました。
地域ごとに多数のイベントが開催
地域ごとの看護協会主導で、さまざまなイベントが開催されます。例えば、現職の看護師が小中学校を訪問し、看護について語るイベントなどもあります。
看護の日をきっかけにケアの心を育もう
医療と看護は切り離せません。適切な医療を受けても、適切な看護を受けられないときには、早期回復を見込めないこともあります。看護の日をきっかけに、看護の大切さやケアの心を意識してみましょう。
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