「エンパワーメント」の意味とは?
「エンパワーメント」という言葉を聞いたことがありますか? 「エンパワメント」と表記されることも。歴史の授業で耳にしたことがある人もいるかもしれませんね。カタカナ語は外来語をそのまま使用していることも多く、意味がわかりづらいことも多くあります。この機会に、正確な意味を確認しましょう。
意味
「エンパワーメント」とは、権限を与えることを意味します。「人に権利を与える」という意味を持つ英語の「empower」が語源。
もともと、「エンパワーメント」という言葉は、女性の権利獲得運動などの中で使われてきた歴史があります。しかし、現在では企業、社会福祉政策、看護業界など様々な場面で使われるようになりました。それぞれの業界で「エンパワーメント」が持つ意味合いも、チェックしていきましょう。
企業
企業において「エンパワーメント」は、主に上司から部下への「権限委譲」という意味で使われます。上司が指示を出し、部下がそれを受けて行動するだけでは、企業として最大のパフォーマンスを発揮できません。また、想定外のことが起こった場合の対応も遅れる可能性があります。
企業での「エンパワーメント」は、そういった企業体制に問題意識を持ち、上司から部下へ権限を委譲していくことで、部下が自ら判断し行動できるように育成するという考え方です。権限委譲は、適切に行わないと効果を発揮しません。部下が「仕事を押し付けられた」と感じないためにも、上司の適度なフォローが必要です。
社会福祉政策
社会福祉政策における「エンパワーメント」は、現在のような福祉サービスの提供ではなく、補助金を交付することで当事者にサービスの内容を選択する権利を与えるという考え方。これにより、政府の介入を減らすことを目的としています。
看護業界
医療業界ではもともと、医師や看護師が患者の病状改善のために生活指導などを行い、患者はそれに従うというスタンスが一般的でした。しかし、現在では「指導」ではなく「援助」を重視しています。患者やその家族が主体となって、健康を維持するための生活をコントロールできるようになることを目的としています。
教育
教育における「エンパワーメント」は、子供達が持つあらゆる可能性に焦点を当て、全てを教えるのではなく「子供が自発的に考える力」を伸ばそうとする考え方です。失敗や試行錯誤を通して、自ら判断し、行動できるように成長していくことを目的としています。
企業における「エンパワーメント」導入事例
様々な場面で見聞きされるようになっている「エンパワーメント」。企業においても「エンパワーメント」が注目されているとお伝えしましたが、実際にどのような企業が「エンパワーメント」を導入し、成功しているのでしょうか。深掘りしてみましょう。
スターバックス・コーヒー
スターバックスに接客のマニュアルがないというのは、今では有名な話ですね。この点において、スターバックスは接客を店舗の従業員に「権限委譲」していると言えます。
スターバックスにおいて、接客は上司からの指示やマニュアルに従って行うものではなく、自らが考え、判断し、行動するものです。会話を通してお客様のニーズを把握していく中で、従業員自身がベストだと考える対応を取ることができます。
スターバックスは現在、世界最大のコーヒーチェーン店と言われ、世界中に3万を超える店舗があります。人気の理由は、もちろんコーヒーの品質やドリンクの美味しさもあるでしょう。しかし、店員の自由な接客から生まれる、臨機応変な対応やフレンドリーさも、企業の急速な成長に大きく貢献しているはずです。
教育における「エンパワーメント」導入事例
教育においても、近年「エンパワーメント」が重視されているとお伝えしましたが、アイエスエイ(ISA)という企業が行なっている、「エンパワーメントプログラム」を知っていますか? アイエスエイは、1970年に創立。留学や国際教育に特化した企業です。
プログラム内容
「エンパワーメントプログラム」は、日本の若者を対象とした短期国内研修プログラム。オックスフォード大学やケンブリッジ大学など、欧米の有名な大学生とともにディスカッションなどのグループワークを行います。スタンダードタイプは一コマ50分。5日間にわたって行われます。
目的
このプログラムの目的は、日本の若者たちに英語力の必要性を気づかせるとともに、日本人とは何か、自分とは何か、を考える機会を与えること。中学生、高校生はもちろん、教職員向けのプログラムもあるそうです。
「エンパワーメント」の歴史は?
現在では、様々な業界や場面で使用されるようになった「エンパワーメント」。言葉の起源は女性の権利獲得運動だったと言われています。「エンパワーメント」という言葉とともに、人間が辿った歴史についても、見ていきましょう。
フェミニズム運動
フェミニズムとは、女性の社会的、経済的、政治的な権利を男性と同等にし、地位の向上を目的とした主張や運動。19世紀のアメリカで、女性が男性と同等の市民権を求めた運動が始まりと言われています。この結果、女性は参政権を獲得しました。
1960年代以降は、女性に求められる社会的、家庭的な役割や「女性らしさ」に疑問を抱いた女性たちが、再び運動を起こしました。この運動は「ウーマン・リブ」とも呼ばれ、世界中に広がっています。
1995年に北京で開催された世界女性会議や、2000年にニューヨークで開催された女性2000年会議では「女性のエンパワーメント」が主要な課題とされました。
公民権運動
1950年代から1960年代のアメリカにおいて、黒人が人種差別の撤廃や平等を訴えた運動です。この運動で活躍したのがキング牧師。彼の「私には夢がある(I Have a Dream)」という演説は有名ですね。この運動の結果、1964年には、黒人差別の廃止を目的に公民権法が制定されました。
最後に
最近注目されている「エンパワーメント」について、言葉の意味やこれまでの歴史について解説しました。さまざまな場面で使用されるようになり、ますます広がりを見せていましたね。特に企業においては、ますます「エンパワーメント」が重視されそうです。
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