褒めて得られることとは?
人から褒められると、「自分のことをわかってくれる人がいた!」と嬉しい気持ちになりますよね。褒めた方も、相手の笑顔や、素直に喜んでくれる姿を見ると、温かい気持ちになるものです。お互いのモチベーションが上がり、チームワークもよくなることでしょう。
キャリアコンサルタントの櫻井宏美さんと一緒に、褒められる人の特徴や褒められることが苦手な人の心理について見ていきます。
今回は、後輩の育成に少し苦労されている、Oggiブレーンの方から、お悩みをいただきました。
後輩の指導で悩んでいます。仕事をもうひと手間かけるともっとよくなるのに、それを伝えるとあからさまに嫌な顔をします。これでは後輩の成長にならないとは思うのですが、そこにかける時間とエネルギーはかなり大きいので、自分で自分を労うようにしています。『自分をどう育ててくれたのか』など、最近は先輩に聞くようになりました。(Fさん・40歳・女性/大阪府)
「後輩の育成がなかなかうまくいかずに、苦労されている様子ですね。指導する側としては、今までの経験値から、こうした方が上手くいくとわかっていて、つい、それを伝えてしまうんですね。お気持ちは大変よくわかります。
最近、Fさんと同じように、若手社員の育成に悩む方からのご相談をよくいただきます。
後輩にアドバイスを伝える際に、褒めることから伝えるようにしてはいかがでしょうか。『ここはよくできたね。もっと上手くするには、どうすればいいと思う?』と本人に考えてもらいます。本当はこうした方がいい、とわかっていても、そこはグッとこらえてください。
大事なのは、相手を褒めて、自分の意見を出してもらうこと。Fさんご自身の意見は最後に少し添える程度にとどめてください。『good&もっと』を心掛けて、後輩との距離感を程よく、保ちましょう。そして、ご自身を心の底から労ってあげてくださいね。
Fさんは本当に真面目で、後輩思いの素敵な先輩だと思います。Fさんが受けた先輩の指導は過去のもの。今のFさんのやり方で、後輩と新しい関係を築くことが大事だと思います」(櫻井さん)
部下の指導では、アドバイスすることも大事ですが、効果的な褒め方もとても重要ですね。特に、昨今は叱られることなく、褒められて育ってきた若い社員も多いようです。褒められることは、人が成長する大きな原動力にもなりますよね。ここからは、褒められるとはどういうことか、その人の特徴から見ていきましょう。
褒められるとは?
褒められるとは、その人の実績や行動が、他の人から評価され、称えられることを意味します。小さなお子さんであれば、学校の成績や、運動会での頑張り、友達に親切にするなどの行為について、褒められることが多いですよね。
大人でも、会社での営業実績や社会貢献など、人から褒められることは、次の行動への活力やモチベーションにつながるもの。この「誰かに褒められたい」という感情は、「承認欲求」ともいえます。
アメリカの心理学者アブラハム・マズローは、人の欲求を低次元のものから順番に5つの階層で表しました。
生理的欲求:生命を維持したい
安全欲求:自分の身を守りたい
社会的欲求:他人と関わりたい
承認欲求:他人から認められたい
自己実現欲求:自分らしく生きたい
人は低階層の欲求がある程度満たされると、より高度の欲求を求める。つまり、生理的欲求に始まり、最終的には自己実現に向けて成長していく生き物であると、マズローは説いています。
他人に褒められたいと願う人は、他人から認められ、自分を高く評価してほしいという気持ちが強い人と言えるでしょう。
褒められる人の特徴とは?
どんな人でも、他人から褒められると嬉しいものですよね。周りから評価され、認められる人にはどんな特徴があるのでしょうか。ここでは3つ紹介します。一緒に見ていきましょう。
1:何かに対して努力をしている
仕事において、必要な知識を得るために、資格取得の勉強をしていたり、健康維持のためにジム通いをしていたり、目標を持って努力をしている人は、褒められることが多いでしょう。
当たり前のようなことでも、行動に移し、結果を残すことは、なかなかできないものですよね。自分の目標に、前向きに取り組んでいる人がいたら、その頑張りに対して、ねぎらいの声を掛けてあげてください。きっと、励みになるでしょう。
2:素直な心を持っている
素直で正直な心を持った人は、褒められる人の特徴と言えるでしょう。自分の過ちやミスも素直に認めて、反省しますし、人に評価されたり、認められたりした時、自然に「ありがとう」と喜びを表現します。
一方で、日本人の美徳として、謙遜するあまり、「そんなことありません」「まだまだです」と、褒め言葉を否定的にとらえる人も中にはいますよね。せっかく、自分の頑張りが他の人の目に留まり、褒められたのです。ポジティブな褒め言葉は、素直に受け取っておいてもいいでしょう。
3:自分よりも他人を優先する
困っている人や、助けを求めている人に対し、自分のことは後回しにして、相手を優先する人も、褒められることが多いですね。率先して、周りに配慮し、頼まれる前から他の人をサポートしている場合もあります。
頼りにされることも多く、仲間も多いので、その人が困った時には、必ず誰かが助けてくれます。チームワークがしっかり形成されている組織は、お互いを褒め合うケースが見られるものです。
褒められるのが苦手な人の心理とは?
素直に相手を褒めているのに、なかなか受け取ってもらえない人も、中にはいますよね。どうしてそのようなことが起こるのでしょうか。ここでは褒められるのが苦手な人の心理を解説します。
1:自己肯定感が低い
自分で自分の評価が低いので、誰に褒められたとしても、素直にその言葉を受け取ることができません。「こんなこと誰にでもできる」と、褒め言葉を否定してしまいます。
幼いころからの親子の関係性で、あまり褒められて育ってこなかったり、常に高い親の期待にさらされ、なんでもできて当たり前という環境で育ってきた場合もあります。
そのような人には、「あなたの仕事のこういうところが良かった」など、その人の頑張りや行為の過程を、具体的な例をあげて褒めてみるといいでしょう。
2:他人を信用しない
人を信用することができない人も、褒められるのが苦手だと言えます。他人から褒められると、「何か魂胆があるのかもしれない」と深読みしてしまいがち。本当は素直に嬉しいはずなのに、疑い深さから、褒め言葉が頭に入ってきません。
チーム内のコミュニケーションも円滑に進まない場合もあります。周りから孤立して、一人ぼっちの状況に陥ることも。出勤時の挨拶、就業時の行動や発言、業務中の態度などに気を配るようにしましょう。
3:お世辞や同情だととらえる
褒められることが苦手な人の中には、「きっとお世辞だろう」「同情しているだけだ」と、とらえる人も多いようです。本気で受け取って、後で自分が傷つくのが怖かったり、憐れみを持たれているのでは、と不安に思うことも。
安易に相手を褒めることをせずに、客観的にできたことや、良かったことを相手に、伝えるようにしましょう。
褒められるの類義語は?
褒められるについて、近い意味をもつ言葉があります。ぜひ、この機会にさまざまな表現を覚えておきましょう。
1:誉められる
誉められるは、特定の人からというよりも、周囲から称賛される場合に使われます。「誉」という字は、良い評判という意味があり、人が誰かに与える評価ではなく、社会が与える評価という意味で使われることが多いようです。
2:賞められる
物事を評価して、その気持ちを表すために、褒美が与えられることを表します。その人を評価したり、賞賛したりしますが、重要なのは、褒美を与えられること。賞金や賞品など、褒美を与えられるのが、賞められることになります。
最後に
大人になって人から褒められるということは、もしかしたら、あまり多くはないのかもしれませんね。一方で、褒められることばかりを意識して、日々を過ごしていると、人の顔色をうかがいながら、他人軸での生き方になってしまいます。褒められたい時は、まずは、自分で自分の頑張りを、思う存分褒めてみましょう。「わたし、エライ!」「わたし、頑張ってるね!」心の中で自分をねぎらってみるということですね。
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※本記事はOggiブレーン会員に対して2022年10月に行った「働き方アンケート」に回答いただいたOggi読者の回答をもとにしています。
キャリアコンサルタント 櫻井宏美さん
2017年国家資格キャリアコンサルタント取得。保険薬局・薬剤師の新卒採用を担当。Well-beingが高まる働き方を模索&実践中。