「ご理解のほど」について
「ご理解のほど」のあとには大抵「お願いします」が付きます。セットで相手に対して「こちらの事情を理解してください、お願いします」という意味です。しかし、いざ自分が使用する場面に出くわすと「このまま使ってよいのかな?」と迷ったことはありませんか?
相手や状況によっては、そのまま使用すると失礼に当たる場合があります。それでは一体どのように表現すれば良いのでしょうか? この記事では、状況によって合わせたの使い方、類義語や英語での表現を一緒にみていきましょう。
「ご理解のほど」の意味
「ご理解のほど」とは、「こちらの事情を理解してください」「ご迷惑をおかけするかと思いますが、ご納得してください」という意味になります。
先にこちらの事情を理解してもらったうえで、物事をこれから進めさせてほしい。そんなニュアンスが含まれています。
「ご理解のほど」の使い方
「ご理解のほど」という言葉は、「こちらのお願いによって、相手側に迷惑をかける恐れ可能性がある。しかしながら、既に決定されている事項を周知する」ときに使います。この場合、相手の意見を求めるということはありません。「こちらの事情を分かってください」という、こちらからのお願いの意味を含む文章になります。
例:
「住民の皆様へ来月1日から、お住いのマンションの耐震工事を実施します。騒音などご迷惑おかけしますが、ご理解のほどお願いいたします」
ただし、この文を使う状況によっては「ご理解のほどお願いします」だけでは失礼な場合があります。
例えばビジネスシーンで、相手になにかをお願いするとき。メールで「ご理解のほどお願いいたします」を使っていませんか? 相手が目上の方の場合は、このまま使用すると失礼にあたる場合があります。また、メールでなく口頭で伝える場合でも、言い方によっては冷たい印象を与えかねません。
そんなときは、以下のようなクッション言葉を付け加えてみましょう。
・なにとぞ(何卒)
・恐れ入りますが
「なにとぞ」自体は「どうか」「どうぞ」のように相手に強くお願いする意味です。
例:
「そちらもお忙しいかと存じますが、なにとぞご理解のほどお願いいたします」
「本日、この案件の担当者は休みを頂いております。明日担当者からお客様に直接ご連絡差し上げますので、恐れ入りますがご理解のほどよろしくお願いいたします」
このようなクッション言葉を付け加えることで、少しやわらかい印象になりますね。
また、相手に多大な迷惑や労力をかける恐れがあると予想される場合は、「恐縮ではございますが」を使用すると、より丁寧な印象を与えることができるでしょう。
例:
「現在、多数のお客様がご来店されていますので、入店までかなりの待ち時間が予想されます。恐縮ではございますが、ご理解のほど宜しくお願いいたします」
「ご理解のほど」の言い換え表現
同じ意味合いで使える言葉として他に「ご了承(ください)」「ご了解(ください)」「ご容赦(ください)」があります。それぞれの表現をみていきましょう。
1:「ご了承ください(ごりょうしょうください)」
了承とは、相手の事情・提案・報告などを納得し、承諾することです。「理解した上で認める」というニュアンスが含まれます。
例:
「こちらの商品は大変人気の商品でございます。お届けは2週間ほどさきになりますのでご了承下ください」
2:「ご了解ください(ごりょうかいください)」
家族間や職場など、日常生活で依頼された際に返事としてよく使われる「了解」。「了解」自体は本来、軍隊・警察用語のためビジネスシーンでは不適切な言葉です。ビジネスシーンでは、「承知しました」や「かしこまりました」を使う方が適切でしょう。
ここでは、相手への理解を求める場合にも用いることができます。
例:
「天候不順による遅延につきましては、なにとぞご了解ください」
ただし、「ご了解してくださる」は間違った敬語表現になるので注意しましょう。
3:「ご容赦ください(ごようしゃください)」
「容赦する」とは、「大目に見る」や「手加減する」の意味です。日常でも「うちの上司は容赦ないなぁ」「容赦のない人だ」などで使うことがありますよね。
上記の2つの類義語よりかは「許しを乞う」ニュアンスが強く感じますが、こちらも「ご理解のほど」と同じ意味で使うことができます。
例:
「小さな子どもがすることですので、ご容赦ください」
英語表現
英語で「ご理解のほど」と表現する場合は
・Ⅰ hope you will understanding.(ご理解のほどよろしくお願いいたします)
・Thank you for your understanding.(ご理解のほど、よろしくお願いいたします)
となります。
相手の協力を併せて求めたい場合は
・Thank you very much for your cooperation and understanding.(ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします)
とすると、より相手へのお願いの姿勢が協調されるでしょう。
また、ビジネスでのメールで使用する場合であれば上記の文章で締めるのではなく、相手への敬意を表す締めの言葉として「Best regards, 自分の名前(企業名)」を文末に付け足すと、より良いですね。日本語の「敬具」のような印象を与え、丁寧さが出ます。自分の氏名や企業名は横ではなく、必ず下に記載しましょう。
最後に
「ご理解のほど」は、使用する状況や相手によってはクッション言葉が必要なケースもあることがわかりました。
そのまま「ご理解のほどお願いします」で使うこともできますが、言い方次第では冷たい印象を与えてしまう恐れがあります。状況に適した表現で、相手にやわらかい印象を与えてお願いすることができれば良いですね。
すべての物事は人間関係の上で成り立っています。正しい表現は、人間関係を円滑に進めるうえで自分の武器になるもの。ぜひご自身のビジネスや職場での、表現方法の引き出しの一つとして参考になれば幸いです。
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