目次Contents
この記事のサマリー
・「グランドスラム」とは、主にスポーツの試合で年間の主要な大会をすべて制覇することを意味します。
・語源はカードゲーム「ブリッジ」で、13回の勝負すべてに勝つことから生まれました。
・野球では、「満塁ホームラン」を「グランド スラム」と呼びます。
スポーツニュースや中継でよく耳にする「グランドスラム」。テニスやゴルフを思い浮かべる方が多いと思いますが、実は競技によって意味が少しずつ違います。語源は意外にも、トランプのゲーム「ブリッジ」にさかのぼりますよ。
この記事では、「グランドスラム」の意味を確認し、テニス・ゴルフを中心に、野球や柔道などでの使い方も紹介します。
日常の会話やSNSでも使えるちょっとした豆知識として役立ててください。
「グランドスラム」とは|意味と語源
まずは、「グランドスラム(grand slam)」という言葉の意味を辞書で確認しましょう。
グランド‐スラム【grand slam】
1 スポーツで、主な試合にすべて勝つこと。
㋐テニスで、ウィンブルドンテニス大会・全米オープン・全仏オープン・全豪オープンのすべてに優勝すること。
㋑ゴルフで、メジャー選手権の大会すべてに優勝すること。
2 野球で、満塁ホームランのこと。
3 通信サービスのクアドロプルプレーのこと。
4 ⇒エクスプローラーズグランド スラム
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
『デジタル大辞泉』では「スポーツで主な試合にすべて勝つこと」とされ、テニスでは四大大会すべてに優勝すること、ゴルフではメジャー選手権を総なめにすることを指すと説明しています。また、野球では「満塁ホームラン」の意味で使います。
「グランドスラム」の語源
語源はスポーツではなく、カードゲームの「コントラクトブリッジ」にあります。ブリッジでは一人ずつカードを出し合い、より強い札を出した側が勝ちます。その13回の勝負すべてに勝つことを「グランドスラム」と呼んだことが始まりです
そこから、「すべてに勝つ=完全制覇」という意味が、テニスやゴルフなどの国際大会でも使われるようになりました。

「グランドスラム」が誤解されやすい場面
「グランドスラム」という言葉には、誤解されやすい点もあります。
テニスでは「年間グランドスラム」(1年の間に四大大会をすべて制覇)と「キャリアグランドスラム」(選手生活全体で達成)を区別する必要があります。
また、野球における「グランドスラム」とは満塁ホームランのことです。筆者自身、初めてスポーツニュースで「グランドスラム達成」と聞いたとき、テニスのニュースであったにも関わらず、野球の話かと勘違いした経験があります。こうした混乱は珍しくありません。
そして、「グランドスラム(grand slam)」と「スラム街(slum)」は無関係です。
ニュースや会話で耳にしたときは、どの分野の「グランドスラム」なのかを意識して受け取ると誤解を避けることができます。
参考:『日本大百科全書』(小学館)
テニスの「グランドスラム」|四大大会と達成パターン
テニスにおける最高の栄誉「グランドスラム」とは、四大大会をすべて制覇することを指します。世界のトップ選手にとって最高の目標とされる記録です。
四大大会とは
四大大会(「グランドスラム大会」とも呼ばれることがあります)は、以下の4つのトーナメントを指します。
・全豪オープン(オーストラリア)
・全仏オープン(フランス)
・全英オープン(イギリス、通称ウィンブルドンテニス大会)
・全米オープン(アメリカ)
四大大会制覇が偉業とされる理由は、それぞれ開催地、気候、そしてテニスコートのサーフェス(種類)が大きく異なるためです。
・全仏オープン:赤土のクレーコート
・全英オープン:天然芝を使ったグラスコート
・全豪・全米オープン:ハードコート
大会ごとにサーフェスが違うため、選手は戦術や体力配分を柔軟に変える必要があります。だからこそ、四大大会すべてを制覇するのは難しく、「テニスの最高到達点」と呼ばれています。
達成パターンの種類と重み
テニスの「グランドスラム」には、いくつかの形があります。
・「年間グランドスラム」:1年の間に全豪・全仏・ウィンブルドン・全米をすべて制覇すること。
・「キャリアグランドスラム」:選手生活を通じて四大大会すべてで優勝すること。生涯グランドスラムともいいます。
・「ゴールデンスラム」:四大大会制覇に加えて、同年のオリンピックやパラリンピックで金メダルを獲得すること。
「年間グランドスラム」は難易度が高く、達成者はごくわずかです。これに対して「キャリアグランドスラム」は、複数年にわたる努力の積み重ねて勝ち取るものです。
さらにオリンピックで金メダルも獲得する「ゴールデンスラム」は、めったに見られない記録で、ニュースでも大きく取り上げられます。
筆者自身もスポーツ観戦をしていて「年間なのかキャリアなのか」をニュース解説で聞き分けると、選手の偉業の重みをより理解できると感じました。読者の方もぜひ、この違いを押さえておくと、観戦や会話の楽しみが広がるでしょう。
参考:『デジタル大辞泉』、『日本大百科全書』(小学館)
ゴルフの「グランドスラム」|年間と生涯
ゴルフにおける「グランドスラム」とは、メジャーと呼ばれる四大大会をすべて制覇することを指します。世界のトップ選手にとって、まさに最高の栄誉です。

ゴルフの四大メジャーとは?
四大メジャー大会は環境や条件が大きく異なるため、すべてを勝ち抜くのは極めて難しく、達成できるのはごくわずかな名選手だけです。
ゴルフの四大メジャー大会は次の4つです。
・マスターズ:アメリカのオーガスタで行われる競技会。世界各国の有力選手が招待されます。
・全米オープン:1895年に創設され、プロ・アマいずれも参加できます。
・全英オープン:イギリスで開催される、1860年に創設された最も歴史のあるトーナメント。プロ・アマいずれも参加できます。
・全米プロゴルフ選手権:1916年に創設されたアメリカのプロトーナメントです。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
達成パターンの種類
ゴルフの「グランドスラム」には、制覇する期間によって主に二つの形があります。
・「年間グランドスラム」:1年の間に四大大会をすべて制覇すること。
・「キャリアグランドスラム」:選手生活を通じて四大大会すべてで優勝すること。
1930年、アメリカのボビー・ジョーンズが最初に「年間グランドスラム」を成し遂げ、この呼び方が広まりました。
「タイガースラム」という特別な偉業
「キャリアグランドスラム」を達成した選手は複数います。特に有名な達成者の一人であるタイガー・ウッズは、2000年の全米オープンから2001年のマスターズにかけて四大大会を連続で優勝しました。
年をまたいだため「年間グランドスラム」には当たりませんが、年間グランドスラムに匹敵する快挙であることから「タイガースラム」と呼ばれ、今でも語り継がれています。
ニュースや観戦時に、年間・キャリア・特別名称の違いを理解することで、選手の偉業の重みをより深く理解できるでしょう。知識を持っていると、ゴルフ観戦の醍醐味はさらに増しますね。
参考:『日本大百科全書』(小学館)
テニスやゴルフ以外の「グランドスラム」
「グランドスラム」という言葉は、テニスやゴルフ以外の場面でも使用します。競技や分野によって意味が大きく変わるため、ここでは代表的な用法を整理します。
スポーツ競技における用法(柔道・ラグビー)
「グランドスラム」は、達成を意味する場合と、大会の名称として使う場合があります。
柔道
国際柔道連盟(IJF)が主催する主要大会そのものを「グランドスラム」と呼びます。制覇を意味するのではなく、大会の名称です。
開催地はパリや東京など、年ごとに変わります。
ラグビー
ラグビーでは、ヨーロッパ6か国対抗戦(シックス・ネイションズ)で全勝優勝することを「グランドスラム」と呼びます。
派生した固有名詞としての利用
スポーツ以外でも、「グランドスラム」 という言葉が持つ「豪華さ」や「特別な舞台」というイメージから、様々な固有名詞として使われてます。
・番組名: バラエティ番組『ENGEIグランドスラム』など。「日本一豪華なネタ番組」がコンセプトです。
・カクテル名: 特定の材料を使ったカクテルの名称。カクテルに込められたメッセージは、「二人だけの秘密」です。
「グランドスラム」に関するFAQ
ここでは、「グランドスラム」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「グランドスラム」はテニス以外でも使いますか?
A. はい。
スポーツではゴルフや野球、柔道、ラグビーなどでも使います。意味は競技ごとに異なるため注意が必要です。
Q2. 野球での「グランドスラム」は何を意味しますか?
A. 満塁ホームランです。
Q3. 「スラム街」の「スラム」と関係がありますか?
A. いいえ。
「スラム街」の“slum”とは異なります。意味を混同しないよう注意しましょう。
最後に
「グランドスラム」という言葉は、テニスやゴルフだけでなく、野球や柔道など幅広い場面で使います。語源と競技ごとの違いを押さえることで、ニュースや会話での戸惑いは解消されるでしょう。スポーツ観戦の楽しみが深まるだけでなく、日常の会話での豆知識としても役立ちますね。
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