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「前向きに検討する」の意味とは?
誰かの提案や意見、依頼、交渉内容などに対して、今すぐ答えを出せないが、その方向で進められるように積極的によく調べ、考えると伝えたいときに使う言葉が、「前向きに検討する」です。
その場で断ることを避けて言葉を濁したかったり、時間稼ぎのために使われたりする場合ももあります。言われた方は、「どういう意味で言ったのだろう」と気になることもあるかもしれません。
まずは、「前向きに検討する」の本来の意味を、確認しておきましょう。
「前向きに検討する」は「前向き」と「検討する」が組み合わさった言葉です。「前向き」とは、物事に対する姿勢が積極的、建設的であることという意味があります。一方、「検討する」とは、よく調べ考えること、種々の面から調べて良いか悪いか考えることを指す言葉です。
以上から、その方向で進むように積極的建設的によく調べて考える、という意味であることがわかります。「検討します」とひとことで言うよりも、「前向きに検討します」の方が、その実現に向けての積極的な気持ちが伝わりますね。
余談ですが、「検討する」は中国では「激しく自己批判すること」を意味します。同じ言葉ですが、随分違った意味です。中国の人に「よく検討してください」なんて言うと、驚かせてしまうかもしれませんね。
「前向きに検討する」の使い方は?
多様なシーンで使うことのできる言葉ですが、取引先との交渉や、部署を跨ぐ社内のミーティングなどで、結論や回答をその場で出しにくい時によく使われます。本来は前向きな意味の表現ですが、最初にも紹介したように、実はあまり前向きな気持ちではないのに用いられることも多いのが実情。
そこで、よく使われる場面を、3つの例文と共に見てみましょう。
お話はよくわかりました。前向きに検討させていただきます。
会議での提案や、取引先からの交渉内容などに対して、即答できないけれどその方向で考えるので回答までに時間が欲しい時によく使われます。
もう少しじっくり考えたい、自分だけでは決められないので持ち帰って決裁権者と考えたいなど理由はいろいろです。場合によっては、回答を先送りしたかったり、断るつもりだけれどその場ではっきり言いにくくてこの言葉を使うこともあります。
自分が言われる側だった場合は、本当に前向きに考えてくれているのだろうか? と気になるかもしれませんね。相手の気持ちを推し量って気を揉むよりも、結論が出るまでの間は相手にさらに前向きになってもらうための時間だと考えてはどうでしょうか?
放置せずに、新たに提案の補足をしたり、暫くしたら状況を伺って相手の疑問を解消したり。良い返事をもらうためにできることはいろいろありそうです。
合否については、前向きに検討したいと思います。次の連絡をお待ちください。
採用面接の最後に言われると、随分気になる言葉です。深読みして「それって、不採用ということ?」と心配してしまうこともあるかもしれませんが、決してそうとは限りません。
採用活動は殆どの場合、複数の候補者に会って、その中から最適と思う人物を選んだり、人事担当者だけではなく配属予定先の責任者や上位職の人たちと協議して進めます。
・とてもいいなと思うけれど、後から来る人たちも見てから最終判断したい
・発言した面接官はぜひ採用したいと思ったけれど、自分1人では決められない
など、採用場面ならではの事情もあるでしょう。面接でこの言葉を聞いても過敏に反応する必要はありません。最後まで落ち着いて前向きな気持ちで挨拶をして面接を終え、良い連絡を待ちましょう。
その件については、党の審議会で前向きに検討いたします。
こんな政治家の答弁をニュースでよく耳にするのではないでしょうか。政治家の答弁では、回答の先送りやするつもりがないことに対して時間稼ぎをしていることも多いそうです。
一方、政府間の協議などで使われる場合は、実際に複雑なことを慎重に調べたり考えたりしながら前に進めようという気持ちで使われることも多いのだとか。1つ例文を見ておきましょう。
例)アジア諸国の友好的関係を深めるために○○○条約の締結を前向きに検討することになった。
「前向きに検討する」の類語や言い換え表現にはどのようなものがある?
このフレーズとぴったり同じ意味やニュアンスを持つ言葉は少なく、「調べたり考えたりする」という意味が薄れますが、辞書で紹介されている類義語には次のようなものがあります。
少し固い表現ばかりですが、ビジネスの場で出てきたときにしっかり意味がわかっていると安心ですね。
前向きに取り組む
何か物事をできるように積極的に努力すること。
善処する
適切に処置すること。上手くいくように処理すること。
するよう努める
それが実現するように精を出して行う。努力して行う。
その場での即答を避けて、返事を待つように伝えたい場合に次のように言い換えることも可能です。
総合的に検討する
「総合的に検討する」は、積極的、建設的にと言うニュアンスはなくなり、様々な側面や要素全体をよく考える、という意味になります。
もちろん、この表現も文字通りの意味で使われる場合もあります。
「前向きに検討する」の英語表現は?
次に、英語でどのように表現されるのか紹介しましょう。
give positive consideration to
単語に分解すると、giveは「与える」、positiveは「積極的な・建設的な」、considerationは「考察・検討」、toは「〜に対して」という意味です。
The company gives positive consideration to the possibility of developing a new technology.
(その企業は新しい技術開発の可能性を前向きに検討している)
think positively
thinkは「考える」、positivelyはpositiveの副詞で「積極的に・建設的に」、という意味になります。
They positively think about this so that they will be able to keep good relationship.
(彼らは、良い関係を続けられるようにこの件を前向きに検討している)
try to be constructive
最後に、「前向きに検討して」と頼むときの表現を紹介しましょう。try toで「~するように試みる・努力する」、constructiveは「建設的な・積極的な」という意味です。
Please try to be constructive when considering this matter.
(この件、どうぞ前向きにご検討ください)
ちょっと堅苦しい表現が多かったですね。普段のビジネスシーンで使える、簡単な表現も折角なので見てみましょう。
Let me look into it.
(検討させてください)
let me 動詞の原形、で「私に~させてください」という決まり文句です。Look intoは「調べる」という意味になります。
反対に、検討をお願いするときは、「Thank you for your consideration.」で「ご検討よろしくお願いします」という意味になります。Thank youはしてくれた事へのお礼だけではなく、してくれたらありがたい事を依頼するときにも使える表現です。
最後に
「前向きに検討する」について一緒に見てきました。額面通りには受け取れないこともある表現ですが、本来はポジティブなニュアンスです。言われたときは深読みしすぎず、自分ができることは何かを考え行動し、自分が言うときには、本来の意味で使っていきたいですね。
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