「理不尽な上司」というと、どのような人をイメージしますか? どんな会社でも、上司との関係に悩む方は多いものですよね。
この記事では、「理不尽な上司」の特徴とその心理、パワハラの基準や、対処法について解説します。パワハラが問題視されている昨今ですので、知っておくと安心のテーマですね。
「理不尽な上司」の特徴は?
ここでは、「理不尽な上司」の特徴として、代表的なものをピックアップして解説します。
当てはまるものが複数ある場合は、特に要注意。中にはパワハラに発展してしまうケースもありますので、その特徴を一緒に見ていきましょう。
1:自分に優しく他人に厳しい
「理不尽な上司」は、自分に優しく、他人に厳しいという特徴があります。
自分自身がしばしば会議に遅刻するのに、部下が少しでも遅れれば、烈火のごとく怒りだすというのは、典型的ですよね。このように、明らかに矛盾した言動をすることが、「理不尽な上司」の最大の特徴と言えるでしょう。
2:不機嫌で人をコントロールしようとする
気に入らないことがあると、あからさまに不機嫌になるというのも、「理不尽な上司」によくあるケースです。周りに察してもらおうとすることもしばしば。気を遣わせることが、もはや習慣になってしまっている人もいるようです。
3:言うことがすぐに変わる
言うことがすぐに変わってしまうというのも、「理不尽な上司」によく見られる特徴です。
もちろん、変化の激しいビジネスシーンの中で、時には臨機応援な対応が必要ですよね。しかし、あまりに度重なると、もはや理不尽と言わざるを得ないでしょう。
「理不尽な上司」の心理は?
「理不尽な上司」の根底にあるものは、一体何なのでしょうか? その心理も見ていきましょう。
1:自己肯定感が低い
意外にも、「理不尽な上司」には、自己肯定感の低い人が多いと言われています。中には、その上司自身も、過去に理不尽な言動を取られ、傷ついていることも。
その心の傷や自信の無さを隠したいあまり、不機嫌な態度で部下を威圧してしまうこともあるようです。
2:メタ認知力が低い
自分を客観的に見る力のことを、メタ認知力と言います。理不尽な言動を、何度も繰り返してしまう主要原因の一つになっているのが、このメタ認知力の低さ。
この場合、本人に自覚がないことが多く、人から指摘されて初めて気付くというケースも少なくありません。
パラハラの基準は?
働いていると、多少理不尽なことに遭遇することはありますよね。しかし、あまりに度が過ぎると、「これってパワハラ?」と悩むこともあるのではないでしょうか? あまりに「理不尽な上司」の言動は、放っておくと、そのままハラスメントに発展してしまうこともあります。
では、パワハラとは、具体的にどのようなものを言うのでしょうか? よく聞く言葉ですが、定義をはっきりと説明しようとすると難しいですよね。
ここで、国が定める「職場のパワーハラスメント」の定義を、見ていきましょう。厚生労働省によれば、以下の3つの条件を全て満たすものが、「職場のパワーハラスメント」であると定義しています。
1:優越的な関係を背景とした言動
優越的な関係の例として、真っ先に思い浮かぶのは、上司と部下などの上下関係ですよね。しかし、上司でなくとも、その仕事に精通している人で、その人の力を借りなければ、業務が難しくなってしまうなどの場合は、優越的な関係とされることがあります。
いずれにせよ、職務上の地位や知識など、何らかの力関係があるケースを指していると言えるでしょう。
2:業務上必要かつ相当な範囲を超えている
客観的に見て、業務上必要な範囲を超えている場合は、パワハラになる可能性が大きくなります。例えば、仕事でミスをして、上司から注意を受けた経験が、誰しも一度はあるのではないでしょうか?
しかし、問題はその注意の仕方。小突く、頭を叩くというような、暴力的な行為などは、業務上必要かつ相当な範囲とは言えません。また、大勢の前で長時間怒鳴り続ける、人格否定なども、相当な範囲とは言い難いでしょう。
3:労働者の就業環境が害される
労働者が苦痛を感じ、能力が上手く発揮できなくなってしまう、という場合を指します。もちろんこれは、「上司に遅刻を注意されて、ちょっと気まずい」というようなレベルではありません。
その言動によって、「労働者が就業する上で、看過できない程度の支障が生じていること」と定義づけられています。つまり、客観的に見ても、もはや見過ごせないレベルに問題が起きているということですね。
「理不尽な上司」への対処法は?
「理不尽な上司」への対処法にはどのようなものがあるのでしょうか? 働く側にとっても、会社経営者にとっても、重要な知識ですので、おさえておくと安心です。
1:然るべきところへ相談する
パワハラが疑われるような深刻なケースの場合、一人で抱え込まずに、会社や別の上司、人事部などへ相談するようにしましょう。
会社に言うと、居づらくなってしまうのでは、という心配をお持ちの人もいるかもしれませんね。しかし、独力で対応しようとして、かえってトラブルになってしまうケースが少なくありません。なるべく早めに情報を共有した方が、後々の大きな問題を防ぐことになります。
ちなみに、2022年4月からは、「職場におけるパワーハラスメント防止措置」が、企業に義務付けられるようになりました。そのため、会社は、労働者からの相談に応じ、適切な措置をする必要があります。
会社にとっても、問題を早めに把握すれば、大きな労務問題を防ぐことにつながるでしょう。そのためにも、早め早めの情報共有が鍵と言えます。
2:冷静さを意識する
あまりに理不尽なことを言われたら、怒りがおさまらないということもありますよね。また、なんとかして仕返ししたいと考えてしまうことも、あるのではないでしょうか? しかし、これでは、かえって「理不尽な上司」に振り回されてしまいかねません。
逆説的ですが、「理不尽な上司」に勝つ最大の方法は、仕返しではなく、冷静かつ適切な対応です。
早めに会社へ相談することはもちろん、できる限り距離を取る、集団で対話の場を設けるなどの対応を、落ち着いて判断していきましょう。
最後に
この記事では、「理不尽な上司」の特徴と、その心理、パワハラの基準や、対処法について解説しました。様々なハラスメントが問題視されている昨今ですので、おさえておくと安心ですね。
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開業社会保険労務士 塚原美彩(つかはらみさ)
2016年社会保険労務士資格を取得。趣味は日本酒酒蔵巡り。現在は独立開業し、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。
ライター所属:京都メディアライン