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関東の方言「かたす」とは?
「これ、かたしといて」などと使ったことはありませんか? 関東地方出身の人なら、当たり前のように使っている「かたす」ですが、実は「かたす」は関東地方の方言。まずは、「かたす」の意味や由来を見ていきましょう。
意味
「かたす」とは、漢字にすると「片す」で、意味は「片付ける」。物を整理整頓する時や、元あった場所に戻す時に「かたす」を使います。
この「かたす」とは、関東や東北地方で使われる方言。「かたす」は、昔から関東地方で使われてきたようですが、1980年代になると使う人が少なくなったのだとか。その後、1990年代より再度使う人が増えてきたよう。現在では、東京都や千葉県、神奈川県、埼玉県、栃木県、茨城県、静岡県、青森県などで使われているようです。
語源・由来
「かたす」は、「片付ける」が由来です。昔の人が、「片付ける」を省略したのが、「かたす」という言葉だそう。日本語では、「アルバイト」を「バイト」、「結婚活動」を「婚活」と言うなど、様々な言葉が省略されて使われますよね。言葉を省略する文化や風習があるのは、昔からだったのかもしれません。
九州の方言「かたす」の意味は?
「かたす」は関東地方の方言で、「片付ける」という意味であると説明しました。しかし、九州で「かたす」は違う意味になるので、注意が必要です。九州の方言「かたす」の意味は、「仲間に入れる」になります。例えば、子どもが鬼ごっこの仲間に入れて欲しい時は、「鬼ごっこに私もかたしてー!」と言うのだとか。
九州で「片付ける」を伝えたい時には、「かたす」ではなく、そのまま「片付ける」を使った方が、認識の間違いが生まれにくいでしょう。
「かたす」は他の地域では何と言う?
「かたす」は関東地方の方言でした。では、他の地域で「かたす(片付ける)」は何と言うのでしょうか? 関西地方や青森県、岡山県などで使われる方言を紹介します。
なおす
「なおす」は、関西地方で使われている方言。関西地方以外にも、東北や九州、北海道などでも同様の意味で使う人がいるようです。「なおす」は、「かたす」と同じく、「片付ける」という意味になります。「なおす」が少し厄介なのは、標準語だと「修理する」という意味もある点。
例えば、関西出身同士であれば「この道具、なおしといて」と言われたら、道具を元にあった場所に戻すでしょう。しかし、他の地域出身の人であれば、「壊れてないですけど、どこを修理するんですか?」と思われてしまうことも。そのため、誤解が生まれないよう、相手の出身地まで考慮して使えるといいですね。
とろける
標準語で「とろける」と言うと、溶けてトロトロになることをイメージしますよね。青森県では、「片付ける」を「とろける」と言うそうです。「お客さんが来るから、リビングをとろけておいて」などと使うのだとか。「片付ける」より、やわらかくて可愛らしく聞こえる言葉ですね。
とらげる
岡山弁や広島の一部地域では、「片付ける」を「とらげる」と言うのだとか。言葉の由来は「取り上げる」。物を取り上げて、別の場所に移動させることから「片付ける」という意味で、「とらげる」という言葉が生まれたのだそうです。
しのべる・くるめる
土佐弁では「片付ける」ことを、「しのべる」「くるめる」と言うそう。「しまい込む」といった意味合いで、「しのべちょいて」「くるめちょき」などと使います。年配の方が使うことが多く、若い世代は使わなくなってきているのだそうです。
「かたす」の使い方を例文でチェック!
続いて、「かたす」の使い方を例文で見ていきましょう。
1:お手数なのですが、この資料をかたしておいてもらえますか?
「かたす」は、「物を元あった場所に戻す」という意味で使われます。つまり、この例文は「資料を元あった場所に戻しておいてもらえますか?」という意味です。職場などでも、「かたす」を聞くことはありますので、言葉の意味を正しく理解しておきましょう。
2:友達が来るので、散らかっている部屋をかたした。
「かたす」には、「いらない物を捨てて、綺麗にする」といった意味もあります。「かたす」=「整理整頓する」という意味でとらえてもいいでしょう。
3:新しい洋服、クローゼットにかたしておいたよ。
この例文の「かたす」が意味するのは、「片付ける」。適当な場所やスペースに、物をきちんとしまうといった意味ですね。
類語や言い換え表現とは?
「かたす」は、関東地方の方言なので、相手によっては伝わらないこともあります。そんな時には、他の言葉に言い換えて使うと誤解がなく安心です。「かたす」の類語には、「整理」「整頓」「仕舞う」「収納」などがあります。言葉の意味をそれぞれ解説しましょう。
1:整理
「整理(せいり)」とは、「乱れた状態のものを整えること」「不要なものを処分すること」といった意味です。混乱している状態のものを、きちんと整えて綺麗にするといったニュアンスを含みます。実際の物はもちろん、思考や感情などに対しても使える言葉です。
例文:散らかっている部屋を整理しなさい。
2:整頓
「整頓(せいとん)」は「きちんと片付けること」という意味です。「散らかった状態のものを、綺麗に整える」といった意味なので、「整理」とほとんど同じ意味になります。しかし「整頓」には、「無駄なものを処分する」といった意味は含まれないため、「いらなくなった書類を整頓する」とは言いません。
例文:デスクの引き出しの中を整頓する。
3:仕舞う
「仕舞う(しまう)」は、「使った物を元の場所に戻す」「続けていた物事を終わりにする」などの意味を持ちます。「かたす」も、「出していたものを元に戻す」といった意味で使われることがあるので、類語表現にぴったりですね。
例:資料を読み終えたら、仕舞っておくのを忘れないようにしてください。
4:収納
「収納(しゅうのう)」とは、「中に入れて、仕舞っておくこと」という意味。そのほかにも、「金品などを受けとり、おさめること」「農作物を取り入れる」といった意味もあります。
例文:新居のクローゼットは狭いが、大量の洋服をうまく収納できた。
最後に
「かたす」の意味や使い方について理解できましたか? 「かたす」は、関東地方の方言だとは知らなかった… という人も多かったのではないでしょうか。相手が関東地方出身でない場合には、「かたす」が通じないこともあります。ですので、当記事で紹介した「整理」「整頓」などに言い換えて使ってみてくださいね。
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