「訊く」の意味や読み方とは?
皆さんは「訊く」という言葉を目にしたことはありますか? 機会は少ないものの、小説などで見たことがあるかもしれません。「訊く」は、「聞く」や「聴く」とはどのような違いがあるのでしょうか。今回は、「訊く」の意味や使い方、使い分け方のポイント、英語表現について解説します。
意味や読み方
「訊く(きく)」とは、「問う、尋ねる」という意味です。「訊」という文字には、「聞き出す」という意味があります。このことから、興味のあることについて人に聞いたり、ある物事がなぜ起こったのかを調べたり、人に尋ねたりするときに「訊く」を使うのです。
ただし「訊く」は、常用漢字ではないため、正式な書類やビジネス文書では使いません。使い分けに困ったときには、「聞く」を使いましょう。
「訊く」の使い方
相手に何か尋ねたり、質問したりするときに「訊く」を使います。ただ、音や情報を聞き流すのではなく、興味を持って聞いていることがポイントです。
・事件の真相が知りたいと思い、関係者の何人かに話を訊いた。
・今度いつ会えるか、彼女の都合を訊いた。
・道に迷ってしまったので、地元の人に訊くことにした。
・娘がデパートで迷子になったので、周辺の人に訊いて回った。
「聞く」や「聴く」との違いとは?
「訊く」と「聞く」「聴く」はいずれも、音を「きく」ことを表す言葉。それぞれどのような意味や違いがあるのでしょうか? 一つずつ意味を確認していきましょう。
「聞く」の意味や使い方
「聞く」は、「音や声を耳に感じとる」こと。耳にすること全般に使える言葉です。意識していなくても聞こえる風の音や木々のざわめき、クラクションの音などが耳に入ることを「聞く」と言います。また、人の話を理解して受け入れるという意味も。そのため、「先生の言うことを聞く」場合にも「聞く」を使います。
また、「聞く」には、「訊く」と同じように「人に尋ねる」という意味や、「聴く」が持つ集中して聞くという意味も。耳に入った音全般に使うことができる言葉なので、迷ったときは「聞く」を使うのが無難です。
(使い方)
・窓を開けると小鳥のさえずりが聞こえた。
・親の言うことはよく聞きなさいと母親に怒られた。
・授業でわからないことがあったので、先生に聞きに行った。
・病院嫌いの祖父にいくら入院をすすめても、聞く耳を持ってもらえなかった。
「聴く」の意味や使い方
「聴く」は、「集中して耳できく」という意味。人の話や音楽に耳を傾けるときには「聴く」を使います。また、「講義を聴く」「演説を聴く」など、何かを習得するために話を聞くことに対しても「聴く」が適切です。
例えば、カフェにいてBGMが自然と耳に入ってくる場合は「聞く」。反対に、自分の好きな歌手の曲やラジオなどを意識してきいている場合には「聴く」を使います。耳に入ってくる音を意識してきいているか否かが、両者の違いです。ただし、使い分けに困った場合は、すべての意味を含んだ「聞く」を使って問題ありません。
(使い方)
・弟は部屋にこもって好きなアイドルの音楽を聴いていた。
・今日は先生の講義を聴きにきました。
・その政治家は市民の声をもっとよく聴くべきである。
・テスト前だったので生徒たちは特に先生の授業をよく聴いているようだった。
英語で「きく」はなんという?
日本語で「きく」に、様々な漢字が当てられているように、英語も「きく」を意味する単語がいくつもあります。ここではわかりやすく3つに分けて紹介しましょう。
「聞く」の英語表現
「hear」は、「音・声が聞こえる」という意味。自然と耳に入ってくる音や、聴覚で感知する音を指します。また、日本語の「聞く」と同じように、人の話を注意して聞くときや、講演を聞きに行くときにも使えるので、覚えておくと便利な単語です。
・I heard her playing the piano.(彼女がピアノを弾いているのが聞こえた)
・He can’t hear at all.(彼は耳が全然聞こえない)
・I never heard of such a thing.(そんな事は聞いたことがない)
・Have you heard anything about this incident?(この事件について何か聞いていますか?)
「聴く」の英語表現
「listen」は、「耳を傾ける」「(忠告に)耳を貸す」などの意味があります。日本語の「聴く」と同じように注意深く音を聴くときに使われる単語です。また、音楽に耳を澄ませて聴くときも「listen」を使います。
・I listened to my favorite record in my room.(私は部屋で好きなレコードを聴いた)
・I went to listen to the senior’s speech.(先輩のスピーチを聴きに行った)
・She was listening to the voice on the phone.(彼女は電話の声に耳を済ませて聴いていた)
・I listened to her troubles all the time.(僕はずっと彼女の悩みを聴いていた)
「訊く」の英語表現
「ask」は、「人に質問する、尋ねる、きく」という意味。日本語の「訊く」とほぼ同じ意味で用いられています。誰かに道を尋ねたり、やり方を教えてもらうときには「ask」を使うと便利です。
・I got lost so I asked someone nearby for directions.(迷子になったので、近くにいる人に道を訊いた)
・I asked my brother how to solve math calculations.(兄に数学の計算の解き方を訊いた)
・I asked how long it would take to enter the store.(あとどれくらいでお店に入れるのか訊いた)
・He asked me how to swim.(彼は私に上手な泳ぎ方を尋ねた)
最後に
「訊く」の意味や、「聞く」と「聴く」との違いについて理解できましたか? 「訊く」は「尋ねる」という意味を持つことから、相手から情報を聞き出したり、質問するときに使います。常用漢字ではないので、ビジネス文書では「聞く」を使いましょう。この機会に「訊く」「聞く」「聴く」の違いを押さえて、正しく使い分けてみてくださいね。
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