ビジネスでは欠かせない「ご覧ください」という言葉。上司や取引先の人に資料などをみてもらいたい時の、定番のフレーズですよね。「ご覧ください」は丁寧な敬語表現ではありますが、押さえておきたい注意点も。そこで今回は、「ご覧ください」の意味や使い方、言い換え表現などを解説します。
「ご覧ください」の意味
「ご覧ください」は、「見てください」という意味の敬語表現です。言葉の意味を見ていくと、「ご覧になる」は「見る」の尊敬語で、「見ること」「眺めること」を表します。そして、「ください」は、相手に対して物事を要求するという意味である「くれ」の尊敬語にあたります。
ビジネスで使うときの注意点
「ご覧ください」は、丁寧な敬語表現なので、上司や取引先などの目上の人にも安心して使うことができる表現です。しかし、丁寧な言い方を意識しすぎて、かえって二重敬語になってしまっている可能性も。ここでは、「ご覧ください」を使う時に間違ってしまいやすいポイントを紹介します。
「ください」はひらがな表記で
「ご覧ください」と「ご覧下さい」、どちらが正しい表記か知っていますか? 正解は「ご覧ください」です。「〜してください」と動詞の補助として使う場合には、ひらがな表記にします。反対に、「水を下さい」など何かが欲しい場合には、漢字表記が適切です。ビジネスメールや文書などで文字を打ち込む際には、両者の違いに注意して使い分けましょう。
「ご覧になられる」は二重敬語
「ご覧になられる」は、見るの尊敬語「ご覧になる」と、尊敬の助動詞「られる」で成り立っています。尊敬語+尊敬語のように同じ種類の敬語を重ねて使うのは、二重敬語になるので、目上の人に使うことができません。「ご覧になる」「ご覧になった」などが正しい使い方です。
また相手に見たかどうか聞くときの、「ご覧になられましたか?」という言い方も間違い。「ご覧になりましたか?」が正しい言い回しとなりますので、覚えておきましょう。
使い方を例文でチェック
続いて、「ご覧ください」の使い方を3つ紹介します。いずれも、ビジネスシーンではよくあるフレーズなので、参考にしてみてくださいね。
1:それでは、お手元の資料をご覧ください。
会議などで資料を見てもらいたい時にはこのように表現しますよね。「資料を見てください」も丁寧語ではありますが、ビジネスの場面では敬意に欠く表現です。目上の人や取引先の人がいる場合には、尊敬語である「ご覧ください」がふさわしいと言えるでしょう。
2:あちらでは新商品を販売しております。ぜひご覧くださいませ。
「ご覧ください」は丁寧な表現ではありますが、時に相手に命令しているようなニュアンスに感じ取れることも。そんな場合には、語尾に「ませ」をつけることで、より柔らかい印象でお願いすることができますよ。
3:お忙しいとは存じますが、ご覧くださいますようお願いいたします。
「ご覧くださいませ」よりも、さらにかしこまった表現が「ご覧くださいますようお願いいたします」。「どうか見てください」をより丁寧に表現した言葉です。ビジネスでの大事な場面や偉い方へ依頼する時にふさわしい言い回しといえるでしょう。
「ご覧ください」の言い換え表現
「見てください」という意味を持つ表現には、他にどのようなものがあるのでしょうか? いざという時のためにいくつか覚えておきましょう。
1:ご確認ください
「ご確認」は、「確認」に尊敬語である「ご」をつけた言葉。相手に確認を依頼する時に使います。「ご覧ください」は、目を通してくださいというニュアンスですが、「ご確認ください」は、しっかり内容を確かめてください、チェックしてくださいという意味合いがあることを覚えておきましょう。
・契約の内容に誤りがないかどうかご確認ください。
・送付ファイルが開けるかどうかご確認ください。
2:ご参照ください
「参照」とは、「他のものと照らし合わせて、参考にすること」。尊敬語の「ご参照」と、依頼をする時に使われる丁寧語「ください」を組み合わせた敬語表現です。他の資料が手元にある時に「照らし合わせてみてください」という意味で使用します。
・お手元の資料をご参照ください。
・詳細につきましては、下記のWebサイトをご参照ください。
3:ご高覧ください
「ご高覧」も、相手が見ることを敬った尊敬語です。「ご覧ください」より丁寧な表現で、さらにかしこまった場面や偉い人に対して使用します。口頭で使うよりも、ビジネス文書やメールなどで使う機会が多いでしょう。
・案内状をお送りいたしましたので、ぜひご高覧ください。
・先日お話ししていた資料を同封いたしますので、ご高覧ください。
英語表現とは?
英語で何かを見て欲しいと依頼する場合には、「〜してください」という意味の「Please〜?」を使います。また、「見る」の英単語には、「look」「see」「wacth」があるため、シチュエーションによってうまく使い分けてみましょう。
1:Please look this document.(この資料をご覧ください)
「look」には、その方向に注意を向けて見るといったニュアンスがあります。例えば、授業中に先生が「ここは大事なところだから、教科書をよく見て」という場合には、「look」が適切です。特定のものに対して意識を向けて見るという意味が含まれています。
2:Please see the view from the building.(ビルからの景色をご覧ください)
自然の景色など、意識しなくても視界に入ってくるものには「see」を使います。ぼんやりとしていても目に映るようなものや目の前の光景が対象です。「look」や「wacth」に比べると、見ることに対して受動的な姿勢が感じられますね。
3:Please wacth this screen.(こちらのスクリーンをご覧ください)
「look」や「see」よりも高い集中力を持って見るのが「wacth」です。こちらは、テレビやや動画などの動くものを見る時に使います。自分から興味を持って、能動的に見ているニュアンスの強い単語ですね。
最後に
「ご覧ください」は、「見てください」という意味の尊敬語。職場で資料を見てもらうときなどには欠かせないフレーズです。「ご覧ください」には、目を通してくださいという意味合いがありますが、内容を確認してください、参考にしてくださいなどの意味は含まれません。
より具体的な要望を示す「ご確認ください」や「ご参照ください」を覚えておくと、その場に合った言葉選びができますよ。ぜひ、ビジネスシーンの会話に役立ててみましょう。
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